街中での配達などに使われるクルマとして、頻繁に見かけるのがワンボックスバンだ。
なかでも人気車種にトヨタ ハイエースがある。ハイエースの2019年における登録台数は、すでに廃止された姉妹車のレジアスエースを含めて9万300台(月平均で7525台)、2020年はコロナ禍の影響を受けながら7万8410台(6534台)であった。
いずれも乗用車でいえば、ヴォクシー、シエンタ、ルーミーなどと同等の売れ行きだ。
いっぽう、ライバル車となる日産 キャラバンの登録台数は、2019年が約2万5000台(月平均で2083台)、2020年は約2万台(1667台)に留まる。ハイエースの25~28%と低迷している。
キャラバンは2021年10月にマイナーチェンジを実施して、フロントマスクのデザインを変更したり、ガソリンエンジン車のATを従来の5速から7速に変更した。改良後の売れ行きは不明だが、少なくとも従来は、販売面でハイエースに前述のような大差を付けられていた。
なぜキャラバンは、販売面でハイエースを超えられないのか。そこには4つの理由がある。
文/渡辺陽一郎、写真/NISSAN、TOYOTA
■マイナーチェンジした日産 キャラバン
まず最も大きな理由は、1980年に登場した2代目、あるいは1986年に発売された3代目の商品力だ。この時代のキャラバンはボディ剛性が弱く「片輪だけを歩道に乗り上げて駐車すると、スライドドアを開閉できなくなる」などといわれた。
そのためにワンボックスバンをベースにしたキャンピングカーを製造する業者も、大半がハイエースを選んだ。「キャラバンのボディはヤワで、キャンピングカーの架装には適さない」といわれていた。
この後、キャラバンは2001年に発売された4代目、2012年の現行型で改善を加え、今ではスライドドアが作動不良を発生するような問題は聞かれない。開発者も「入念に開発している」というが、商用車では、このような以前の評価が語り継がれてしまう。
なぜなら車両に問題があると、仕事に支障が生じるからだ。万一スライドドアが開閉不能になれば、荷物の積み降ろしに時間がかかり、仕事の進行が滞る。車種をハイエースからキャラバンに変えたことで、何か問題が生じたら困るから、よほどのことがない限りハイエースに乗り続ける。
また、新しく商売を始める時も「ハイエースを選べば安心」と聞けば、キャラバンを購入しない。乗用車であれば、多少の不安が伴っても好みを優先して選ぶが、商用車では仕事を円滑に行える信頼性が何よりも重視される。
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