キャラバンに改良型登場!! 最強の2番手がハイエースを超えられない4つの理由

■好条件で売却できる王者ハイエース

優れた耐久性から現場での絶大な支持を得るトヨタ ハイエース(写真はバン スーパーGL〈標準ボディ・2WD・ディーゼル車〉)
優れた耐久性から現場での絶大な支持を得るトヨタ ハイエース(写真はバン スーパーGL〈標準ボディ・2WD・ディーゼル車〉)

 ハイエースが売れてキャラバンが伸び悩む2つ目の理由は、数年後に売却する時の価値だ。買取店では「ハイエースは購入から10年以上を経過して、思い切り使い倒された車両でも、確実に売却できる。査定額がゼロになることはない」という。

 前述のとおりハイエースは古くから優れた耐久性を備えているから、過酷に使われる海外市場でも人気が高い。「低年式を含めて、さまざまなハイエースが海外へ輸出されるので、国内の流通台数が減り、中古車価格や買い取り価格を高めている」とのことだ。

 そして好条件で売却できることは、仕事で使う商用車では大きな魅力になる。例えば複数の商用車を使う法人の経営が悪化した時など、所有する車両の何台かを高値で売却できれば、運転資金に充当できるからだ。

 個人が使う乗用車でも高値で売却できることは魅力だが、商用車では資産価値がさらに重要になる。ここにもハイエースが好調に売れて、キャラバンが及ばない理由がある。

■法人や一人親方などの商用利用がほとんどを占めるキャラバン

商用のバンはもちろん、ワゴンもあり、ナローボディ、ワイドボディとバリエーション豊富なハイエース。仕事車だけでなく、近年ではキャンパーやカスタマイズ用のクルマとしても人気を集めている
商用のバンはもちろん、ワゴンもあり、ナローボディ、ワイドボディとバリエーション豊富なハイエース。仕事車だけでなく、近年ではキャンパーやカスタマイズ用のクルマとしても人気を集めている

 3つ目は、趣味のための移動手段や空間として活用するパーソナルユーザーの動向だ。キャラバンのユーザー比率は、法人が約50%を占めて、「1人親方」と呼ばれる自営業者が約30%、残りの20%がパーソナルユーザーだ。

 その点でハイエースは、パーソナルユーザーが40%前後に達する。自転車を運んだり、釣りに使う人達の間でもハイエースは人気が高く、外観をドレスアップするパーツも豊富に販売されている。

 つまり「趣味のツールとして、買った後でいかにクルマを楽しむか」を考えた時も、ハイエースはキャラバンに比べて多用途な魅力があるわけだ。

 この点についてキャラバンの開発者は「売れ行きを伸ばすうえで、ドレスアップなどのアフターパーツが豊富にそろうことも重要だ。今後はキャラバンについても、アフターパーツのメーカーに積極的に働きかけていきたい」という。

 ただし、アフターパーツを手掛けるメーカーとしては、キャラバンの登録台数が増えないと、パーツを装着するユーザーの数も限られる。キャラバンの売れ行きが伸びると、パーツも積極的に開発され、それがさらに新たなパーソナルユーザーを呼び込む好循環に繋がる。まずはキャラバンを多く売ることが大切だ。

■トヨタならではの丹念な売り方とキャラバンの改良にみる課題

ディーゼルモデルのNV350キャラバン。今回改良されたのはガソリン車だけで、ディーゼルは従来型が継続販売されている
ディーゼルモデルのNV350キャラバン。今回改良されたのはガソリン車だけで、ディーゼルは従来型が継続販売されている

 4つ目の理由は、かつてハイエースを専門に扱っていたトヨペット店の販売力だ。もともとトヨペット店は、商用車を含めた法人営業が強く、ハイエースを手堅く販売してきた。

 2020年5月以降は、全国に展開するトヨタの全店がハイエースを含めたトヨタの全車を扱うようになったが、定番車種となった背景にはトヨペット店の功績が大きい。

 トヨタ店がクラウンを大切に販売してユーザーから高い信頼を得たように、トヨペット店も、ハイエースを専売車種として大切に扱ってきた。そこが20年も前に全店が全車を扱う体制に移行した日産との違いでもある。ハイエースはキャラバンに比べて、販売会社が真剣に売ってきた。

 以上のようにハイエースは、商品力、信頼性、資産価値、販売力を高い水準でバランスさせて好調に売れている。キャラバンもボディ剛性のような商品力は大幅に進化したが、信頼性、資産価値、販売力では差を付けられている。これらを短期間で達成するのは難しく、地道に実績を積み重ねることが不可欠だ。

 その意味で2021年10月に実施されたマイナーチェンジには、残念なところもあった。マイナーチェンジの対象がガソリンエンジン車に限られ、販売比率が55%と多いクリーンディーゼルターボは先送りになったことだ。

 ディーゼルも2022年の前半にはマイナーチェンジするようだが、ユーザーが待てなかったり、本当に登場するのか不安を感じてハイエースに乗り替える可能性もある。キャラバンの売れ行きを伸ばすには、こういった部分も周到に行わねばならない。

 今後キャラバンを売り込む余地が大きいのは、ハイエースに比べて販売比率の低いパーソナルユーザーだ。今回の改良では、フロントマスクをカッコ良くデザインしており、今後もミニバン感覚の安全&快適装備を増やすと良い。

 特に現時点では、エルグランドの設計が古くなった。発売から11年を経過して売れ行きも大幅に下がっている。キャラバンとエルグランドではクルマの造りは大幅に異なるが、キャラバンの3代目で人気を高めた3列シートのコーチ(ワゴン)を復活させる方法もある。

 今のキャラバンワゴンはマイクロバス的な10人乗りの4列シート仕様だが、3列シートのコーチならミニバンのように使えるからだ。しかもキャラバンはワンボックスワゴンだから、車内の広さ(有効室内長)はエルグランドよりも長い。

 ミニバンのユーザーが「さらに広く、さらに便利に!」という機能の向上を求めた時、充実装備でクリーンディーゼルターボも選べるキャラバンは、魅力的な選択肢になるだろう。

【画像ギャラリー】本文未収録写真あり!! マイナーチェンジを受けた日産 キャラバン(9枚)画像ギャラリー

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