新車から26年経った愛車は家族の一員! R33型スカイラインGT-Rの真実とは? 【Bestcar Classic オーナーズボイスVOL.15】

 一台のクルマには、縁あってオーナーになった人との歴史や思い出があり、物語になるほどのエピソードが生まれることもある。

 そんなクルマと人との関わりを、オーナーさんに直接取材して、リアルな生の声を紹介していきたいと思います。はたして、どんな生の声が聞けるのでしょうか?

 購入した動機から、愛車に対するこだわりのポイント、年間の維持費、故障箇所、愛車の主治医まで、これからそのクルマを購入しようと思っている人にも役に立つ情報満載でお届けします。

文・写真/松村 透

トビラ写真:オーナーの堀田大輔さん。今回は奥さまにも同席していただいた。愛車である1995年式スカイラインGT-R(BCNR33型)とは約26年の付き合い

【画像ギャラリー】R33型スカイラインGT-Rと共に歩んで26年!オーナーさんのこだわりを見てみよう!!(16枚)画像ギャラリー

■R33型スカイラインGT₋Rを新車から26年乗り続ける堀田さんの想いとは

ボディカラー名「ミッドナイトパープル」はこのクルマが原点。美しさと品格を兼ね備えた色であると改めて実感する
ボディカラー名「ミッドナイトパープル」はこのクルマが原点。美しさと品格を兼ね備えた色であると改めて実感する

 多くのユーザーにとって「クルマを買い替える」という行為は一大イベントだと思う。それがスペシャルなクルマであればなおさらだ。

 しかし、納車とともに次第に熱が冷めていき、そのうち新しいクルマが欲しくなる。そして乗り替える行為自体、自然な流れといえるだろう。

 手に入れることよりも乗り続けることの方がはるかにハードルが高いことは、経験者であれば容易に想像ができるはずだ。

 今回、取材させていただいたオーナーはデビュー当時に手に入れたR33型GT-Rを所有する方だ。奥さまにもご同席いただき、お二人からたっぷりとGT-R愛を伺うことができた。

■プロフィール&愛車紹介

・お名前:堀田 大輔さん
・ご年齢:51歳
・ご職業:会社員
・所有しているクルマ(年式、グレード名):1995年式日産スカイラインGT-R標準グレード(BCNR33型)
・購入時期:1995年3月(新車)
・所有年数;約26年
・購入時の走行距離:新車
・現在の走行距離:20万5000km(58431km時点にMine’s製の320km/hメーターに交換)
・購入時の金額:490万円(助手席エアバッグ·寒冷地仕様)

■スカイラインGT-Rを手に入れようと思ったきっかけを教えてください

Mine’s製のフルスケールメーターに交換されている堀田さんのGT-R。
Mine’s製のフルスケールメーターに交換されている堀田さんのGT-R。

 1993年に開催された第30回東京モーターショーの日産ブースに、次期スカイラインGT-R(後のR33型スカイラインGT-R)のプロトタイプモデルが参考出品されていたんですが、この時の印象はあまりよくありませんでした。その後、ニュルブルクリンクサーキットでのスクリーンショットで観たデザインや性能面でも惹かれるものがあり、購入を考えるようになりました。

 それまで乗っていたR32型GT-R(中期モデル)の車検が1995年3月で切れるタイミングで、しかも300万円近い金額で下取ってもらえたんですね。これで乗り替えを決断しました。R32スカイラインGT-Rも素晴らしいクルマでしたが、トラブルに悩まされたんですね。

 手に入れるならボディカラーはミッドナイトパープルを選ぶつもりでしたが・・・実際にはかなり悩みました。1995年当時はパープル系統のボディカラーが少なくて、メーカーに問い合わせて、この色の展示車があるディーラーまで観に行きましたから。現車を観て気に入ったのでこの色に決めましたね。

 当時、予算的に厳しかったので標準グレードを選びましたが、必要に応じて手を加えてきたので、結果的にVスペックはいらなかったかもしれません。

「58431km」まで刻まれたオリジナルのメーターも、宝物のように大切に保管されている
「58431km」まで刻まれたオリジナルのメーターも、宝物のように大切に保管されている

■愛車との濃いエピソードについて聞かせてください

MOMO製のディープコーンステアリングを装着。エアバッグ付きステアリングがGT-R にマッチしていたとは言えず、このステアリングの方がしっくりくる。フロアマットのヒールパッドが特注で左側にオフセットされている点にも注目
MOMO製のディープコーンステアリングを装着。エアバッグ付きステアリングがGT-R にマッチしていたとは言えず、このステアリングの方がしっくりくる。フロアマットのヒールパッドが特注で左側にオフセットされている点にも注目

 出先で故障したりして、セーフティーローダーに何度もお世話になっています。26年間で4〜5回くらいだったと記憶しています。何度壊れても許せてしまいますね。それほど可愛い存在です。それに、もう慣れっこになっていますし(笑)。

■愛車に対するこだわりについて聞かせてください

実はN1用のエンジンに載せ換えているという。ノーマルでは自主規制で280馬力におさえられたRB26DETTエンジンも、レース用となれば一切の束縛から解き放たれ、本領発揮となる
実はN1用のエンジンに載せ換えているという。ノーマルでは自主規制で280馬力におさえられたRB26DETTエンジンも、レース用となれば一切の束縛から解き放たれ、本領発揮となる

 現在のコンディションを維持することです。ドレスアップよりもメンテナンスに比重を置いています。

 「Drivvo」というスマホのアプリを使い、このクルマのメンテナンスや給油したタイミング、燃費など、あらゆる情報を記録しているんです。メンテナンスに関するプランも、予防整備の順番を頭の中で整理してあります。

 ガソリンの銘柄にもこだわっています。最近はSHELLしか入れません。外出先でどこにSHELLのガソリンスタンドがあるのか、事前に把握していますから(笑)。出光との統合により、現在使用しているハイオクガソリンの「V-power」が入手不能になりそうなことが目下の悩みです。

 このクルマを維持するうえでかかる費用も記録しているので、コスト管理もしています。いくらかかったのかを把握することも大切です。エンジンオイルは富士興産FKマッシモシリーズをトランスミッション用のオイルはトヨタ純正のものを使っています。コストパフォーマンスと性能を両立しているものを選ぶようにしていますね。

■大まかな年間維持費(自動車税、オイル関係、ガソリン代などを含めた概算)を教えてください

・ガソリン代:約15万円(年間)
・オイル代:3万円(3千kmごとに交換)
・消耗品:10万円
・車検費用:7万円(2年ごとの車検なので2分の1で計算)
・コーティング費用:3万円
・任意保険14万円(車輌保険、本人配偶者限定、20等級、弁護士特約込み)

パワーチェックで408.5馬力をたたき出したという(上)。かつてはN1エンジン本体が50万円で購入できたのだ・・・今の高値を誰が予想できただろうか?(下)
パワーチェックで408.5馬力をたたき出したという(上)。かつてはN1エンジン本体が50万円で購入できたのだ・・・今の高値を誰が予想できただろうか?(下)

■失礼ながら、これまで大小のトラブルはありましたか?

サスペンションを固定するボディパネル周辺が錆で劣化したため、ショップの尽力で新たにパネルを溶接してあるという。GT-Rに「匠」の技が必要不可欠なのは今も昔も変わらない
サスペンションを固定するボディパネル周辺が錆で劣化したため、ショップの尽力で新たにパネルを溶接してあるという。GT-Rに「匠」の技が必要不可欠なのは今も昔も変わらない

1:エンジンブロー
 ピストン棚落ち、クランクメタル破損に伴い、エンジンを載せかえました。N1エンジンが50万円(assy交換)で購入できました。同時にタービン、インジェクター、燃料ポンプ等も交換しています

2:エンジンルーム内、サスペンション取付部周辺の板金
 構造上の問題なのか、サスペンション取付部周辺が錆びてしまい、該当箇所の鉄板を除去。職人さんがワンオフでパネルを制作。鈑金してもらいました

3:フロントフェンダー内のボディ補強
 ワンオフで補強するアームをボディ左右に装着しています。クラッシャブルゾーンをがっちり固めているので、正面からぶつかったらアウトです・・・

4:トランクの雨漏り修理および足回りのブッシュの打ち替え
 トランク内の再コーキングおよび立て付け修正を行いました

5:外出先でラジエーターホースが抜け、オーバーヒート一歩手前に・・・

錆と水漏れが発生していたトランク部分も匠の技でリフレッシュ済み。年を重ねるにつれ、シール系の劣化による水漏れはつきものとなる。適切な修理なくして長持ちはしない
錆と水漏れが発生していたトランク部分も匠の技でリフレッシュ済み。年を重ねるにつれ、シール系の劣化による水漏れはつきものとなる。適切な修理なくして長持ちはしない

■純正部品の入手に苦労していますか?欠品・製造廃止している部品などご存知でしたら教えてください

 トランクのNISSANエンブレムが製造廃止なんですね。NISMOヘリテージパーツでの復刻を希望しています。

さりげなく後期型のキセノンライトに変更されている(上)。R33GT-Rに今や貴重な33ナンバー。通が見れば、ワンオーナーによって今日まで乗り続けてこられた特別なクルマと伝わるはずだ(下)
さりげなく後期型のキセノンライトに変更されている(上)。R33GT-Rに今や貴重な33ナンバー。通が見れば、ワンオーナーによって今日まで乗り続けてこられた特別なクルマと伝わるはずだ(下)

■愛車の主治医どのようなお店ですか?

 メンテナンスの内容により、その分野において専門的な技術を持つショップさんを、時間をかけて足で探して見つけました。それぞれ信頼できるショップと長年お付き合いしながら、ベストな状況になるよう相談して依頼しています。

 お伝えできる範囲でご紹介すると、ボディーコーティングに関しては有限会社マイスターさん(埼玉県入間市)、ボディ関連は有限会社ボディショップ山中さん(千葉県野田市)にお願いしています。

決して声高にGT-Rであることを主張していないことに改めて気づかされる。しかし、スカイラインの頂点である特別なクルマであることは隠しきれない
決して声高にGT-Rであることを主張していないことに改めて気づかされる。しかし、スカイラインの頂点である特別なクルマであることは隠しきれない

■これからも乗り続けるご予定ですか?

 乗り続けます。少なくともガソリンスタンドがこの世からなくなるまでは。

 今、私は51歳です。あと20年は乗るとして・・・。そのころはまだガソリンの安定供給がかろうじてできていると予測しているんです。

フロントはR34GT-R用のブレンボキャリパーに交換されている。純正サイドバイザー付きのR33GT-Rも珍しい
フロントはR34GT-R用のブレンボキャリパーに交換されている。純正サイドバイザー付きのR33GT-Rも珍しい

■未来のオーナーのために購入時のチェックポイントや愛車のウィークポイントを教えてください

 ボディの錆びに注意してください。それ以外は資金があれば交換可能です。それと出先での故障に備えて、予防整備を心がけ、部品は壊れる前に交換してください。それでも壊れる時があります。

 トラブルが起こってから対処するのではなく、あらかじめ対応できるように、セーフティーローダーの手配や帰宅するまでのルート、移動手段の確保といった事前の備えは必要だと思います。

 それと・・・私はこのクルマ1台でこなしてきましたが、今後、ファミリーカーとしてR33GT-Rだけで何でもこなすことは絶対におすすめしません。

 セカンドカーとしてならありだと思いますが、それでも「壊れるかもしれない・・・」という覚悟は必要だと思います。そこまでの勇気が持てないけれどGT-Rに乗りたいとしたら、中古のR35型GT-Rを購入することをおすすめします。

堀田さんの好みで、さりげなくカーボン製のものに交換されているリアウイング。ハイマウントストップランプとラジオアンテナを取り外し、スムージングしてあるという
堀田さんの好みで、さりげなくカーボン製のものに交換されているリアウイング。ハイマウントストップランプとラジオアンテナを取り外し、スムージングしてあるという

■あなたにとって愛車はどんな存在ですか?


 「家族」です。娘が社会人1年生で今年22歳です。運転免許も取得済みで、AT限定ではなく、MT車も乗れます。GT-Rと一緒に育ってきたようなものですね。ずっとこのGT-Rに乗ってきたから、クルマ大好きですよ。

就職活動の時、面接官の方がフェアレディZに乗っていたらしく「父もスカイラインに乗っています」と答えたそうです。すると面接官の方から「スカイラインの何?」と聞かれ「R33型GT-Rです」と答えたそうです(笑)。

 二十歳の記念に、某専門誌で家族写真を撮って載せてもらいましたし。音でこのクルマだと分かりますし、ちょっとした変調もすぐに気づきますから。

●今回は奥さまにもご同席いただきました

 クルマ関係のイベントは何でも来てみたいので(笑)。

 男の子ってスポーツカーが好きな子多いですよね。娘にとって、小さいころから「自分のお父さんがスカイラインGT-Rに乗っている」ことが自慢だったみたいです。

 主人は娘に運転すらさせていませんが、そのうちこのGT-Rを譲ってもらえると思っているようですよ(笑)。

R32GT-RからR33GT-Rへ乗り替えた時のショット。1995年3月15日とある。R32のナンバー自光式のため一足先に34ナンバーになっていたそうだ(画像提供:堀田大輔さん)
R32GT-RからR33GT-Rへ乗り替えた時のショット。1995年3月15日とある。R32のナンバー自光式のため一足先に34ナンバーになっていたそうだ(画像提供:堀田大輔さん)

■取材後記

 堀田さんご夫妻にとって、このGT-Rはまさに家族そのものだと改めて実感した。ここまでご主人のクルマ趣味に理解がある奥さまもなかなかいらっしゃらないように思う。正直、うらやましい限りだ。

 今回はスケジュールの都合でご同席いただけなかったが、社会人1年目のお嬢さまもすでに運転免許を取得し(もちろんMT車もOKの免許だ!)、虎視眈々(?)と堀田さんのGT-Rを狙っているようだ。

 お嬢さまにとっては、生まれた時から家にあったGT-R。お父さんが乗る自慢のクルマ。まるで兄弟のように一緒に暮らし、育ってきたという感覚があるに違いない。

 父から愛娘へ。近い将来、ミッドナイトパープルのボディーカラーをまとった33ナンバーのR33GT-Rを駆る若い女性オーナーと街中で遭遇する機会があるかもしれない。

雨のなかを走る堀田さんのR33GT-R。普段から手入れや行き届いているのだろう。ミッドナイトブルーパール色のボディにつたう水玉がセクシーだ
雨のなかを走る堀田さんのR33GT-R。普段から手入れや行き届いているのだろう。ミッドナイトブルーパール色のボディにつたう水玉がセクシーだ
RB26エンジン特有のストレートシックス・サウンドを響かせながら走り去る姿も美しい。これからも末永く堀田さんと共に歩んで欲しい
RB26エンジン特有のストレートシックス・サウンドを響かせながら走り去る姿も美しい。これからも末永く堀田さんと共に歩んで欲しい
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