相次いだ不正車検問題を機に、ディーラーで働く整備士の不遇な環境がクローズアップされた。もちろん不正車検については言語道断だ。しかし業界の中では、整備士の待遇の悪さが以前から問題視されていたのに、昭和・平成・令和と時代が変わっても、改善されずにこの問題は残り続けている。
なぜ国家資格を持つ、ディーラー整備士の待遇は改善しないのだろうか。実際の販売現場で、多くの整備士の処遇を見てきた筆者が、整備士の待遇問題を解説しながら、その解決方法を考えていく。
文/佐々木 亘、写真/NISSAN、Adobe Stock(トビラ写真=Milan@Adobe Stock)
■データと実態がそぐわない、整備士の現状
厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(2020年のデータ)によると、自動車整備士業へ月に支給される現金給与は全年齢平均で301,300円(従業員100~999人の事業規模)となっている。
年間賞与は933,100円となり、この数値から整備士の税込年収を計算すると約450万円前後となるのだ。ちなみに、40代の日本人平均年収は全業種平均で510万円程度である。
整備士の税込年収は、平均年齢44.2歳、平均勤続年数15.9年、所定内労働時間167時間/月、超過実労働時間6時間/月という条件で算出されている。この中で「超過実労働時間」に大きな問題があると筆者は考える。
週休2日制と仮定すれば、月の実労働日数は22日だ。月の残業6時間を22日で割ると、一日の平均残業時間は16分強だが、実際に1日の残業が20分以下で終わるディーラー整備士は、ごく一部だろう。
残業時間は毎日平均1時間程度発生していることが多く、中には36協定の上限ギリギリまで働き続ける整備士も少なくない。
所定内労働時間167時間、超過実労働時間が40時間にも及ぶ整備士の給与が、月30万円だとしたら、皆さんはどう思うだろうか。20代後半では平均236,000円、30代前半では平均282,800円の支給であり、控除後の手取り金額はさらに少なくなる。
もちろん、全ての事業所が問題を抱えているわけではないが、悪質なサービス残業が目立つところもある。国家資格を保有する、整備士の現実的な待遇を理解いただけただろうか。
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