■成果物がわかりにくく、正当な評価を受けられないのが最大の問題
国家資格を持ちながらも、薄給に悩む職種は他にもある。保育士、介護福祉士、看護師の待遇問題は、ニュースでも大きく取り上げられ、多くの皆さんも既知の事実であろう。人命に係わる大変な仕事を任されているのにも関わらず、その給与は低い。筆者の身内にも看護師がいるので、状況は痛いほどわかる。
逆に高給取りの国家資格の代表例と言えば、医師、弁護士、公認会計士などだ。自動車ディーラーでみれば、整備士よりも営業マンの方が給与は高い。ここには、仕事の成果のわかりやすさが関係していると筆者は思う。
例えば、医師と看護師で考えよう。医師は病気を治し、患者から感謝される。患者が完治するという仕事の成果がわかりやすく、その評価も受けやすい。対する看護師は、同様に医療行為を行いながらも、患者を治した、治療をしたという評価はされにくい。
ディーラー営業マンは、顧客と密に接し、その評価を受けやすい。さらに実績をカウントできる仕事が多く、販売実績に応じて、インセンティブが発生し、給与もどんどん増えていく仕組みだ。
しかし、整備士にはわかりやすい成果物がない。クルマを直しても「それが当たり前だ」と言われ、10点満点なら5点の評価だ。評価をする上司にとっても、整備士の評価は明確な基準が分かりづらいため、適正な評価につながりにくいだろう。
整備士の評価は横並びになり、派手な昇進や昇格、インセンティブが発生することもなく、低空飛行を続けてしまうのだ。まず、雇う側の評価制度を見直すことが、整備士の処遇改善に大きくつながると思う。
■基本給アップも必要、介護・保育の現場と起きていることは同じだ。
先日、岸田内閣が保育・介護・看護の職に就く人の、基本給を上げると発表したが、同じように自動車整備の現場にも、基本給アップを求めたい。
国家資格でありながら、担い手が少なく、さらに待遇が悪いという状況は、介護の現場で起きている状況に非常に近いからだ。
この状況が続けばどうなるか。整備士の志望者は減り、整備士不足となる。果ては人材不足となり、安全安心な整備が行われず、自動車を安全に利用できなくなる世界がやってくるだろう。整備士がいなくなれば、自動車社会の日本は機能しなくなる。
当たり前のことになるが、働いた時間に対して、しっかりと給与を支払うこと。また、昇給・昇格における評価制度の見直しも早急に行ってほしい。また一部に残る、サービス残業を黙認する自動車ディーラーの悪しき体質は、これを機に全て捨て去るべきだ。
今、本当の意味で「整備」が必要なのは、自動車ディーラーの整備士に対する待遇である。一刻も早く解決へ向けて動き出し、整備士が真っ当に働ける環境づくりを進めていきたい。
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