いつまで安く働かせるんだ!! 令和になっても整備士の待遇が変わらない深い闇

■成果物がわかりにくく、正当な評価を受けられないのが最大の問題

ディーラー内の営業などと比較すると、整備士には分かりやすい成果物がない。車を完璧に整備しても「それが当たり前だ」と思われがちだ(standret@Adobe Stock)
ディーラー内の営業などと比較すると、整備士には分かりやすい成果物がない。車を完璧に整備しても「それが当たり前だ」と思われがちだ(standret@Adobe Stock)

 国家資格を持ちながらも、薄給に悩む職種は他にもある。保育士、介護福祉士、看護師の待遇問題は、ニュースでも大きく取り上げられ、多くの皆さんも既知の事実であろう。人命に係わる大変な仕事を任されているのにも関わらず、その給与は低い。筆者の身内にも看護師がいるので、状況は痛いほどわかる。

 逆に高給取りの国家資格の代表例と言えば、医師、弁護士、公認会計士などだ。自動車ディーラーでみれば、整備士よりも営業マンの方が給与は高い。ここには、仕事の成果のわかりやすさが関係していると筆者は思う。

 例えば、医師と看護師で考えよう。医師は病気を治し、患者から感謝される。患者が完治するという仕事の成果がわかりやすく、その評価も受けやすい。対する看護師は、同様に医療行為を行いながらも、患者を治した、治療をしたという評価はされにくい。

 ディーラー営業マンは、顧客と密に接し、その評価を受けやすい。さらに実績をカウントできる仕事が多く、販売実績に応じて、インセンティブが発生し、給与もどんどん増えていく仕組みだ。

 しかし、整備士にはわかりやすい成果物がない。クルマを直しても「それが当たり前だ」と言われ、10点満点なら5点の評価だ。評価をする上司にとっても、整備士の評価は明確な基準が分かりづらいため、適正な評価につながりにくいだろう。

 整備士の評価は横並びになり、派手な昇進や昇格、インセンティブが発生することもなく、低空飛行を続けてしまうのだ。まず、雇う側の評価制度を見直すことが、整備士の処遇改善に大きくつながると思う。

■基本給アップも必要、介護・保育の現場と起きていることは同じだ。

国家資格でありながら担い手が少なく待遇が悪いという状況は介護の現場で起きている状況に近い。保育・介護・看護職同様、基本給アップを求めたい(tamayura39@Adobe Stock)
国家資格でありながら担い手が少なく待遇が悪いという状況は介護の現場で起きている状況に近い。保育・介護・看護職同様、基本給アップを求めたい(tamayura39@Adobe Stock)

 先日、岸田内閣が保育・介護・看護の職に就く人の、基本給を上げると発表したが、同じように自動車整備の現場にも、基本給アップを求めたい。

 国家資格でありながら、担い手が少なく、さらに待遇が悪いという状況は、介護の現場で起きている状況に非常に近いからだ。

 この状況が続けばどうなるか。整備士の志望者は減り、整備士不足となる。果ては人材不足となり、安全安心な整備が行われず、自動車を安全に利用できなくなる世界がやってくるだろう。整備士がいなくなれば、自動車社会の日本は機能しなくなる。

 当たり前のことになるが、働いた時間に対して、しっかりと給与を支払うこと。また、昇給・昇格における評価制度の見直しも早急に行ってほしい。また一部に残る、サービス残業を黙認する自動車ディーラーの悪しき体質は、これを機に全て捨て去るべきだ。

 今、本当の意味で「整備」が必要なのは、自動車ディーラーの整備士に対する待遇である。一刻も早く解決へ向けて動き出し、整備士が真っ当に働ける環境づくりを進めていきたい。

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