自動運転の車へのサイバー攻撃は防ぐことができるのか

最悪の場合、テロ攻撃に利用される可能性も

 常に情報を受信するために、常にネットワークにつながっている必要がある自動運転車ですが、それはサイバー攻撃などの危険に常にさらされている、ともいえます。

 もし、自動運転中のクルマやドローンがサイバー攻撃によって乗っ取られたり、ハッカーなどによって、送られてくる情報が故意に書き換えられてしまうと、プログラムに忠実に従うクルマは、突如危険な存在へと変貌してしまいます。最悪の場合として、テロ攻撃に利用されることも否定はできません。

 冒頭でふれた映画「アイロボット」のワンシーンのように、「クルマを暴走させて突っ込ませる」ことまでしなくても、高速道路や幹線道路の上で数台のクルマを止めてしまうだけで、簡単に「交通マヒ」状態となり、交通が混乱状態に陥ってしまいます。

 なかでも、もっとも懸念されているのが、運転者が使うスマートフォンを経由したセキュリティ攻撃の可能性です。悪質なコードが埋め込まれたアプリや、スマホ経由の車両データの更新によるハッキングなど、対策箇所は無限にあります。

もし、これらすべてのクルマが、一斉に乗っ取られてしまったら…(AdobeStock_metamorworks)
もし、これらすべてのクルマが、一斉に乗っ取られてしまったら…(AdobeStock_metamorworks)

サイバー攻撃は防ぎきれない

 自動運転車だけではなく、ナビゲーションのアップデートや、不具合のあったプログラムの書き換えなどがオンラインでできるなど、昨今はクルマがネットワークに繋がることが増えてきています。

 最近のクルマでは、約1億行ものコードが動作しており、今後は、自動運転や車-車間通信の機能が増えていくと、コードの行数は数倍にも伸びると言われています。もし、不正アクセスによって、その中のたった1行を書き換えられても、大混乱が起きる可能性は十分にあります。

 このため、経産省は、自動運転車のサイバーセキュリティについて、「情報通信」「金融」「航空」「鉄道」「電力」等と同様の、高度な対策が必要としています。日本自動車工業会とも連携し、サイバーセキュリティに関する情報を共有するための組織「サイバーセキュリティ部会」を設置。アメリカやヨーロッパの業界団体と共に、サイバーセキュリティ対策に取り組んでいます。

 しかしながら、実際のところ、サイバー攻撃を100%防ぐことは不可能な状況。

 当然、防ぐための対処方法は、自動車メーカー、サプライヤ、すべての視点で考慮されており、安全のための「多層防御設計」によって攻撃をうけても危ない存在となることを避ける対策が検討されていますが、減らせてもゼロには出来ない交通事故のように、自動運転においても、自動運転車に想定を超えたイレギュラーなことが起こりうることは、覚悟しておかなければならない、と思われます。

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■以下編集部注
 現時点で自家用車へのサイバー攻撃の具体的な被害として考えられるのは、運転機能を乗っ取られたり、セキュリティを外されて盗難を容易にされたり、(運行記録などの)個人情報を抜き取られるなどのリスクがある。もちろん自動車メーカーは、こうしたリスクへの対応を日々実施しており、攻撃者と防御者の戦いは日々進化を続けている。

 ユーザーとして踏まえておかなければいけないのは、こうしたサイバー攻撃への対策費は車両価格に上乗せせざるをえず、クルマが便利になればなるほど、電子化、自動化が進めば進むほど、加速度的にこうした「コスト」は上乗せされ続けていくということだ。

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