セダンでもミニバンでもない実力派!! ホンダ ジェイドの無念と伝えきれなかったもの

■いまなお惜しむ声も多し ジェイドが去った「根本的な」理由とは

 一部からは高く評価され、後輪にわざわざダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用するなどして、この種の車としては走りも秀逸だったことは間違いないホンダ ジェイドがなぜ、まったく売れず、国内デビューからわずか5年で生産終了となってしまったのでしょうか?

 個別の細かい理由としては、

・3列目が決定的に狭かった。
・2列目がベンチシートではなくキャプテンシートだったため使いづらかった。
・1.5Lクラスの車としては車両価格が高かった。

 などが考えられます。

ジェイドの内装(2015年)。3列目シートは頭上空間も厳しいものがあったが、緊急用と割り切れば居住性や積載性能も充分かつ優れたワゴンだと言えた。とくに1.5Lモデルの走りの評価は高い
ジェイドの内装(2015年)。3列目シートは頭上空間も厳しいものがあったが、緊急用と割り切れば居住性や積載性能も充分かつ優れたワゴンだと言えた。とくに1.5Lモデルの走りの評価は高い

 これらはすべて「確かにそのとおりかも」とは思います。

 ですがもっと根本的な理由を言うのであれば、ホンダが考える「新時代のちょっとラグジュアリーな乗用車」という世界観が、当時の一般的なユーザーに受け入れられなかった――ということなのでしょう。

 前述した3つの問題点のうち、「3列目が狭い」という点についての反証は「ステーションワゴン的3列シート車の3列目なんて、普通はたまにしか使わないんだから、別にいいじゃないか!」ということで割愛します。

 ですが、その他の2点については、ジェイドという車を「大衆実用車」ではなく「ちょっとだけラグジュアリーな実用乗用車」として考えるなら、特に問題にはなり得ません。

「2列目がベンチシートではなくキャプテンシートである」というのは、確かに「3人で座れない」などの難点はあります。

 しかし「ちょっとラグジュアリーな乗用車」と考えるであれば、2列目に3人が座ってぎゅうぎゅう詰めになるのはそもそも似合いませんし、想定もされていないでしょう。

2018年マイナーチェンジ時のモデル。このタイミングで2列シートのステーションワゴンタイプのモデルも投入されたが、国内のステーションワゴンも市場として縮小の一途を辿っており、打開策には至らず。2020年、グレイス、シビックセダンとともに生産終了。表舞台から去った
2018年マイナーチェンジ時のモデル。このタイミングで2列シートのステーションワゴンタイプのモデルも投入されたが、国内のステーションワゴンも市場として縮小の一途を辿っており、打開策には至らず。2020年、グレイス、シビックセダンとともに生産終了。表舞台から去った

「1.5Lクラスの車としては車両価格が高かった」というのもその通りだとは思いますが、それと同時に「作りがいいモノの値段がちょっと高くなるのは当たり前である」という見方もできます。

 街には「格安スーパー」と「ちょっと高級なスーパー」がありますが、ちょっと高級なスーパーで売られている卵や野菜の値段に「高い!」と文句を言う人はいないはず。

 ちょっと高くてもモノさえ良ければ、それは「妥当なプライシング」であり、経済的に若干の余裕がある人をターゲットとした「正しいマーケティング」なのです。

 つまりホンダは「ちょっと大きなシャトル」を作ろうとしたのではなく、「ややラグジュアリーなステーションワゴンの、2015年的な解釈」を、世に問うたわけです。

 ホンダが行った「ステーションワゴンの新解釈」は、筆者は大好きですし、ほかにもお好きな方は多数いらっしゃると思います。

 しかし世の中の大半は、その解釈および製品に対してNOと言うか、もしくは新解釈の意味を理解しないまま「なんか中途半端なミニバンだね。ウチには要らないね」と、切って捨てました。

 残念ですが、仕方ありません。ビジネスにはどうしても「多数決」的な要素もあるため、仕方ないのです。

■ホンダ ジェイド 主要諸元
・全長×全幅×全高:4650mm×1775mm×1530mm
・ホイールベース:2760mm
・車重:1510kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1496cc
・最高出力:150ps/5500rpm
・最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm
・燃費:18.0km/L(JC08モード)
・価格:253万円(2015年式 RS)

【画像ギャラリー】ホンダ_ジェイド_20211203(29枚)画像ギャラリー

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