■いまなお惜しむ声も多し ジェイドが去った「根本的な」理由とは
一部からは高く評価され、後輪にわざわざダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用するなどして、この種の車としては走りも秀逸だったことは間違いないホンダ ジェイドがなぜ、まったく売れず、国内デビューからわずか5年で生産終了となってしまったのでしょうか?
個別の細かい理由としては、
・3列目が決定的に狭かった。
・2列目がベンチシートではなくキャプテンシートだったため使いづらかった。
・1.5Lクラスの車としては車両価格が高かった。
などが考えられます。
これらはすべて「確かにそのとおりかも」とは思います。
ですがもっと根本的な理由を言うのであれば、ホンダが考える「新時代のちょっとラグジュアリーな乗用車」という世界観が、当時の一般的なユーザーに受け入れられなかった――ということなのでしょう。
前述した3つの問題点のうち、「3列目が狭い」という点についての反証は「ステーションワゴン的3列シート車の3列目なんて、普通はたまにしか使わないんだから、別にいいじゃないか!」ということで割愛します。
ですが、その他の2点については、ジェイドという車を「大衆実用車」ではなく「ちょっとだけラグジュアリーな実用乗用車」として考えるなら、特に問題にはなり得ません。
「2列目がベンチシートではなくキャプテンシートである」というのは、確かに「3人で座れない」などの難点はあります。
しかし「ちょっとラグジュアリーな乗用車」と考えるであれば、2列目に3人が座ってぎゅうぎゅう詰めになるのはそもそも似合いませんし、想定もされていないでしょう。
「1.5Lクラスの車としては車両価格が高かった」というのもその通りだとは思いますが、それと同時に「作りがいいモノの値段がちょっと高くなるのは当たり前である」という見方もできます。
街には「格安スーパー」と「ちょっと高級なスーパー」がありますが、ちょっと高級なスーパーで売られている卵や野菜の値段に「高い!」と文句を言う人はいないはず。
ちょっと高くてもモノさえ良ければ、それは「妥当なプライシング」であり、経済的に若干の余裕がある人をターゲットとした「正しいマーケティング」なのです。
つまりホンダは「ちょっと大きなシャトル」を作ろうとしたのではなく、「ややラグジュアリーなステーションワゴンの、2015年的な解釈」を、世に問うたわけです。
ホンダが行った「ステーションワゴンの新解釈」は、筆者は大好きですし、ほかにもお好きな方は多数いらっしゃると思います。
しかし世の中の大半は、その解釈および製品に対してNOと言うか、もしくは新解釈の意味を理解しないまま「なんか中途半端なミニバンだね。ウチには要らないね」と、切って捨てました。
残念ですが、仕方ありません。ビジネスにはどうしても「多数決」的な要素もあるため、仕方ないのです。
■ホンダ ジェイド 主要諸元
・全長×全幅×全高:4650mm×1775mm×1530mm
・ホイールベース:2760mm
・車重:1510kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1496cc
・最高出力:150ps/5500rpm
・最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm
・燃費:18.0km/L(JC08モード)
・価格:253万円(2015年式 RS)
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