セダンでもミニバンでもない実力派!! ホンダ ジェイドの無念と伝えきれなかったもの

目指したのはステーションワゴンの新解釈! 佳作・ホンダ ジェイドが伝えきれなかったもの

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ ジェイド(2015-2020)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/HONDA

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■2代目ストリーム消滅の穴を埋めるべく登場したジェイド

「セダンでもミニバンでもない、新しい乗用車」として開発された、セダンやステーションワゴン並みの低全高と、ミニバンクラスの居住性とユーティリティ性を備え、さらには上質な走りをも実現させた3列シート車。

 しかし、そのコンセプトと成果物は多くのユーザーには響かず、圧倒的なまでの人気薄に。2列5人乗り仕様を追加して失地回復を図るも、やはりほとんど売れず。

 そのため、一部のユーザーやジャーナリストからは高く評価されたものの、2020年にあっけなく生産終了となった意欲作。

 それが、ホンダ ジェイドです。

 ホンダ ジェイドは2012年の北京モーターショーにそのコンセプトカーが初出展された、中国市場を主眼に置いたグローバルカー。日本では2015年2月に発売されました。

前年(2014年)に生産終了となったストリームと、オデッセイのハイブリッド的モデルとして登場したジェイド。もともとは中国市場をメインに開発された世界戦略車だった。全長・全幅・全高は4650mm×1775mm×1530mm

 足回りや床下部品の小型化を徹底し、効率良くレイアウトした「超高密度低床プラットフォーム」を採用。

 当初のボディサイズは全長4650mm×全幅1775mm×全高1530mmで、多くの立体駐車場に対応する低全高なパッケージに3列のシートを備えていました。

 2列目シートはセンター側に固定式の大型アームレストを採用し、左右斜め内側にシートが後退する「2列目Vスライドキャプテンシート」を全車に標準装備。

 2人がけの3列目は緊急シート的に狭いものでしたが、床下に収容できましたので、まさに「緊急用」としては特に問題のないものでした。

 パワーユニットは1.5L直噴DOHC i-VTECエンジンに、高出力モーターを内蔵した7速DCTとリチウムイオンバッテリー内蔵のIPUを組み合わせた「SPORT HYBRID i-DCD」。

 クラストップレベルとなる25.0km/L(JC08モード)の低燃費を実現しながら、「超高密度低床プラットフォーム」ならではの素晴らしく正確で上質なハンドリング性能を披露しました。

 デビューから3カ月後には、最高出力150psの1.5L直4直噴ガソリンターボを搭載する新グレード「RS」を追加。

 RSは足まわりにも専用のチューニングを施され、乗り心地を損なうことなく、安定感のある走りと軽快なステアフィールを実現していました。

 またRSは、ブレーキ制御によってスムーズなコーナリングを実現する「アジャイルハンドリングアシスト」も標準で採用されました。

 まさに「セダンでもミニバンでもない、新しい乗用車」であったホンダ ジェイドは一部で高く評価されたものの、セールスは圧倒的に不振でした。

 月間販売目標台数である3000台には一度も届かず、2017年には月に160台ぐらいしか売れないという体たらくに。

 そのためホンダは2018年5月、マイナーチェンジでRSに2列5人乗り仕様を追加するとともに、新たなグレードを追加するなどの対策を施しましたが、ジェイドのセールス状況が超低空から脱することはありませんでした。

 そのためホンダ ジェイドは2020年7月、小型セダンである「グレイス」とともに販売終了と相成りました。

■いまなお惜しむ声も多し ジェイドが去った「根本的な」理由とは

 一部からは高く評価され、後輪にわざわざダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用するなどして、この種の車としては走りも秀逸だったことは間違いないホンダ ジェイドがなぜ、まったく売れず、国内デビューからわずか5年で生産終了となってしまったのでしょうか?

 個別の細かい理由としては、

・3列目が決定的に狭かった。
・2列目がベンチシートではなくキャプテンシートだったため使いづらかった。
・1.5Lクラスの車としては車両価格が高かった。

 などが考えられます。

ジェイドの内装(2015年)。3列目シートは頭上空間も厳しいものがあったが、緊急用と割り切れば居住性や積載性能も充分かつ優れたワゴンだと言えた。とくに1.5Lモデルの走りの評価は高い

 これらはすべて「確かにそのとおりかも」とは思います。

 ですがもっと根本的な理由を言うのであれば、ホンダが考える「新時代のちょっとラグジュアリーな乗用車」という世界観が、当時の一般的なユーザーに受け入れられなかった――ということなのでしょう。

 前述した3つの問題点のうち、「3列目が狭い」という点についての反証は「ステーションワゴン的3列シート車の3列目なんて、普通はたまにしか使わないんだから、別にいいじゃないか!」ということで割愛します。

 ですが、その他の2点については、ジェイドという車を「大衆実用車」ではなく「ちょっとだけラグジュアリーな実用乗用車」として考えるなら、特に問題にはなり得ません。

「2列目がベンチシートではなくキャプテンシートである」というのは、確かに「3人で座れない」などの難点はあります。

 しかし「ちょっとラグジュアリーな乗用車」と考えるであれば、2列目に3人が座ってぎゅうぎゅう詰めになるのはそもそも似合いませんし、想定もされていないでしょう。

2018年マイナーチェンジ時のモデル。このタイミングで2列シートのステーションワゴンタイプのモデルも投入されたが、国内のステーションワゴンも市場として縮小の一途を辿っており、打開策には至らず。2020年、グレイス、シビックセダンとともに生産終了。表舞台から去った

「1.5Lクラスの車としては車両価格が高かった」というのもその通りだとは思いますが、それと同時に「作りがいいモノの値段がちょっと高くなるのは当たり前である」という見方もできます。

 街には「格安スーパー」と「ちょっと高級なスーパー」がありますが、ちょっと高級なスーパーで売られている卵や野菜の値段に「高い!」と文句を言う人はいないはず。

 ちょっと高くてもモノさえ良ければ、それは「妥当なプライシング」であり、経済的に若干の余裕がある人をターゲットとした「正しいマーケティング」なのです。

 つまりホンダは「ちょっと大きなシャトル」を作ろうとしたのではなく、「ややラグジュアリーなステーションワゴンの、2015年的な解釈」を、世に問うたわけです。

 ホンダが行った「ステーションワゴンの新解釈」は、筆者は大好きですし、ほかにもお好きな方は多数いらっしゃると思います。

 しかし世の中の大半は、その解釈および製品に対してNOと言うか、もしくは新解釈の意味を理解しないまま「なんか中途半端なミニバンだね。ウチには要らないね」と、切って捨てました。

 残念ですが、仕方ありません。ビジネスにはどうしても「多数決」的な要素もあるため、仕方ないのです。

■ホンダ ジェイド 主要諸元
・全長×全幅×全高:4650mm×1775mm×1530mm
・ホイールベース:2760mm
・車重:1510kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1496cc
・最高出力:150ps/5500rpm
・最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm
・燃費:18.0km/L(JC08モード)
・価格:253万円(2015年式 RS)

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