毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ ジェイド(2015-2020)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/HONDA
【画像ギャラリー】ホンダ_ジェイド_20211203(29枚)画像ギャラリー■2代目ストリーム消滅の穴を埋めるべく登場したジェイド
「セダンでもミニバンでもない、新しい乗用車」として開発された、セダンやステーションワゴン並みの低全高と、ミニバンクラスの居住性とユーティリティ性を備え、さらには上質な走りをも実現させた3列シート車。
しかし、そのコンセプトと成果物は多くのユーザーには響かず、圧倒的なまでの人気薄に。2列5人乗り仕様を追加して失地回復を図るも、やはりほとんど売れず。
そのため、一部のユーザーやジャーナリストからは高く評価されたものの、2020年にあっけなく生産終了となった意欲作。
それが、ホンダ ジェイドです。
ホンダ ジェイドは2012年の北京モーターショーにそのコンセプトカーが初出展された、中国市場を主眼に置いたグローバルカー。日本では2015年2月に発売されました。
足回りや床下部品の小型化を徹底し、効率良くレイアウトした「超高密度低床プラットフォーム」を採用。
当初のボディサイズは全長4650mm×全幅1775mm×全高1530mmで、多くの立体駐車場に対応する低全高なパッケージに3列のシートを備えていました。
2列目シートはセンター側に固定式の大型アームレストを採用し、左右斜め内側にシートが後退する「2列目Vスライドキャプテンシート」を全車に標準装備。
2人がけの3列目は緊急シート的に狭いものでしたが、床下に収容できましたので、まさに「緊急用」としては特に問題のないものでした。
パワーユニットは1.5L直噴DOHC i-VTECエンジンに、高出力モーターを内蔵した7速DCTとリチウムイオンバッテリー内蔵のIPUを組み合わせた「SPORT HYBRID i-DCD」。
クラストップレベルとなる25.0km/L(JC08モード)の低燃費を実現しながら、「超高密度低床プラットフォーム」ならではの素晴らしく正確で上質なハンドリング性能を披露しました。
デビューから3カ月後には、最高出力150psの1.5L直4直噴ガソリンターボを搭載する新グレード「RS」を追加。
RSは足まわりにも専用のチューニングを施され、乗り心地を損なうことなく、安定感のある走りと軽快なステアフィールを実現していました。
またRSは、ブレーキ制御によってスムーズなコーナリングを実現する「アジャイルハンドリングアシスト」も標準で採用されました。
まさに「セダンでもミニバンでもない、新しい乗用車」であったホンダ ジェイドは一部で高く評価されたものの、セールスは圧倒的に不振でした。
月間販売目標台数である3000台には一度も届かず、2017年には月に160台ぐらいしか売れないという体たらくに。
そのためホンダは2018年5月、マイナーチェンジでRSに2列5人乗り仕様を追加するとともに、新たなグレードを追加するなどの対策を施しましたが、ジェイドのセールス状況が超低空から脱することはありませんでした。
そのためホンダ ジェイドは2020年7月、小型セダンである「グレイス」とともに販売終了と相成りました。
コメント
コメントの使い方