■「大手コンビニの棚」じゃつまらない
そのようになかなか優秀な4代目スズキエスクードだったが、日本ではあまり売れなかった。というか、そもそも日本市場での目標販売台数自体がかなり少なめであった。
それゆえ、一部のスズキファンからは大いに愛された4代目エスクードも、市場全体から見ると「地味でマイナーな存在」で終わってしまったわけだが、4代目エスクードの功績とは――というかそれはスズキの功績かもしれないが――「それでも約6年間はマーケットの前線に出続けた」ということである。
もしも4代目のエスクードをスズキが輸入せず、日本で売られるSUVのラインナップが「主にはトヨタライズとC-HRとハリアー、ホンダヴェゼルと、あとはベンツのGクラスだけ」みたいな状況になっていたとしたら、世の中はどうなっていただろうか?
それはそれでもちろん悪くはなかったのかもしれないが、筆者としては、そこには「大手コンビニの棚」のようなつまらなさを感じたと思う。
■マイナー車があるからこそ市場全体が豊かになる
ご存じのとおり大手コンビニチェーンは、かぎられた棚スペースのなかで最大の売上を上げるため、「売れ筋商品」以外は棚に置かない。
POSデータの分析で判断された超売れ筋だけが棚に並ぶことを許され、コンビニ本部から見れば微妙な、しかし消費者から見ると「個性的で愉快」かもしれないマイナー系の商品は、基本的にはあらかじめ排除されているのだ。
その結果としてコンビニは、文字どおりコンビニエントな(便利な)スポットとなっているわけだが、いささか多様性に欠けるその棚は、砂漠のようにつまらない――と見ることもできる。実際に買うかどうかは別として、見たことのないようなマイナー系カップ麺も並ぶことで、「棚の豊かさ」は生まれるのだ。
■エスクードの存在価値
それと同じ意味で、4代目スズキエスクードはマイナーだったからこそ、そこにあるだけで、自動的に価値を生んでいた。
実際に買う人は少なかったかもしれないが(かく言う筆者も、これだけホメているエスクードは買わずにスバル XVを買った)、「SUVにおける決して画一的ではない選択肢」という価値を、4代目のエスクードは全国民に与えていたのだ。
そんなエスクードが市場から退場していったのは、ビジネスの必然ではあったのだろう。
だが「多様性がもたらす価値」という観点から言うと、それは、日本国民にとっては意外と大きな痛手なのかもしれない。
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