S660の歴史を振り返る
S660は目立つ改良はそれほどなかったが、登場からの6年間で行われたグレード追加、改良点を解説する。
●2017年5月
αをベースにベルベットマルーンメタリックのボディカラー、ジャズブラウンのインテリアカラーを纏うなどした、期間限定の特別仕様車となるブルーノレザーエディションを設定。
●2017年11月
βをベースに、ヒダマリアイボリーパールのボディカラー、ライトタンのインテリアカラーを纏うなどした、期間限定の特別仕様車となるコモレビエディションを設定。
●2018年5月
ホンダ車の純正オプション(ディーラーオプション)などを担当するホンダアクセスが手掛けたコンプリートカーとなるModuloXを追加。
ModuloXはパワートレーンこそ基準車と同じだが、ほかのModuloXに施されるメニュー同様の効果の高いエアロパーツ、ダンパーには5段階の減衰力調整機能も付く専用サスペンション、スポーツパッドとドリルドローターによるブレーキの強化といった走行性能の向上、ボルドー×ブラックのカラーとなるシートやステアリングといったインテリアのグレードアップなどが施された。
●2018年12月
αをベースにブラウンのロールトップ、ライトタン×ブラックのトラッドレザーインテリアをまとうトラッドレザーエディションを設定。同時に簡易なものながら自動ブレーキが全グレードに標準装備化された。
●2020年1月 マイナーチェンジ
このマイナーチェンジはヘッドライトのサブリフレクターやテールランプのレンズのカラー、グリルのデザイン変更、インテリアではαのステアリングとシフトノブの表皮がアルカンターラになるなど、見た目の変更が中心だった。
●2021年3月
2022年3月をもっての生産終了が発表されると同時に、ファイナルモデルとなる特別仕様車ModuloXバージョンZを設定。ModuloXバージョンZは特別色となるソニックグレーパールを設定するほか、エンブレムや専用リアスポイラーのカラー変更、インテリアにはカーボン調パネルが付くなど、特別な内外装が与えられた。
S660が愛される理由
S660は2人が乗ってオープンにすると荷物はまったく載らず、クローズド状態だと乗降性は最悪に近く、ロールトップ(幌)の開閉も一手間掛かるなど、「バイク以下かも」と感じるくらい実用性は乏しく、極端な表現をすれば「走ることしかできない」というクルマである。
しかし、そのかわり動力性能が限られているゆえに普段乗りでもアクセルを深く踏める点、ミッドシップながら不安感は皆無な楽しいハンドリング、良好な乗り心地、ガッシリとしたブレーキのフィーリング、無駄なシフト操作を繰り返したくなるシフトフィールなど、S660は軽自動車ながらしっかりスポーツカーしている。
それだけにS660が与えてくれるドライビングプレジャーは個人の価値観によるところも大きいにせよ、不便と引き換えに納得できるものなのは事実だ。
また、「S660は維持費の安い軽自動車だからセカンドカーなどとして維持できる」という人もそれなりにいただろう(この点でいえば、S660が軽自動車のみだったこととは矛盾するが、もしS660にジムニーに対するジムニーシエラのような登録車版もあれば、1リッターターボ+ワイドボディなどに発展し、生産台数も増えればS660の運命は変わったのかもしれない)。
そんなクルマだけに大きな数ではないにせよ熱狂的なファンがおり、皮肉かもしれないが、生産終了が後押しとなって注文が殺到したというのも分かるところはある。
なお、650台のうち600台が一部販社への割り当て、残りの50台がWebからのオープンな抽選となる追加生産分についてディーラーに聞くと、「弊社には片手分の割り当てがありましたが、3月の生産終了発表の際に買えなかった方と既存のお客様だけで割り当ての10倍近い購入希望がありました」と、追加生産分も大盛況である。
そのため、敗者復活戦的な追加生産でS660を買えた人はかなりの幸運の持ち主といえる。
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