■「軽ハイトワゴンにもスライドドアが欲しい!」に応えワゴンRスマイル登場
■2021年10月軽自動車新車販売台数
1位:スズキワゴンR(ワゴンRスマイル含む)/8808台(179.7%)
2位:日産ルークス/8696台(123.0%)
3位:ホンダN-BOX/7442台(46.4%)
4位:スズキスペーシア/6319台(51.6%)
5位:スズキハスラー/5416台(82.9%)
※スズキは車種別(ワゴンR、ワゴンRスマイル)の販売台数は未公表
ところが2021年10月の軽自動車の新車販売台数を見ると、異変が生じている。軽自動車の販売ランキングで、ワゴンRが1位になったからだ。2位はルークスで、軽自動車販売NO.1の常連となるN-BOXは3位に下がった。スペーシアは4位だ。
なぜ順位が大幅に入れ替わったのか。スズキの販売店に尋ねると以下のような返答だった。「今は(2021年9月から納車を開始した)スライドドアを装着する新型車のワゴンRスマイルが好調だ。
ワゴンRスマイルは、ワゴンR全体の50%前後を占める。しかもワゴンRスマイルは、納期が1~2ヵ月に収まり、4ヵ月前後を要するソリオなどに比べて短い。各メーカーとも納期を遅延させている中で、迅速に納車できることも、ワゴンRスマイルが人気を高めた理由だ」。
好調に売れているだけに、新型ワゴンRスマイルを含んだワゴンRの届け出台数は、2021年10月には前年の179.7%に達した。その結果、軽自動車の販売1位になっている。
ワゴンRスマイルのユーザーは、どのような車種から乗り替えているのか。この点も販売店に尋ねた。
「ワゴンRのお客様には、もともとスライドドアが欲しいと思っていた方が多い。そのためにワゴンRスマイルの販売でも、ワゴンRの下取り車が豊富に入っている。お客様の年齢層は幅広く、ワゴンRスマイルは女性向けに開発された商品ではあるが、実際には青色(インディゴブルー)のボディカラーを中年の男性が購入されることもある」。
ちなみに開発者は「ワゴンRのお客様をリサーチしたところ、約40%がスライドドアの装着を希望された。スペーシアでは背が高すぎるので、ワゴンRのスライドドア仕様が欲しいというお客様も多かった。そこでワゴンRスマイルを開発した」と説明する。
スライドドアを装着しながら、全高を1700mm以下に抑えた軽自動車のニーズは高く、それに応えたことでワゴンRスマイルも好調に売れている。
そしてワゴンRスマイルに類似した車種として、ダイハツは2016年にムーヴキャンバスを発売している。この車種もヒット作になり、ワゴンRスマイルはその後追い商品として開発されている。
販売店からは「スズキにはムーヴキャンバスみたいなクルマはないのか? と尋ねるお客様も多かった」という話も聞かれた。
軽自動車のスライドドアに対するニーズは、メーカーを問わず根強く、ワゴンRスマイルも「スライドドアのワゴンRが欲しい」「スペーシアでは背が高すぎる」と考えるユーザーを中心に乗り替えが進んだ。
一方、ホンダの販売店でN-BOXについて尋ねると「N-BOXの納期は、12月16日の一部改良を控えて約4ヵ月まで延びている」という。新型コロナウイルスによるパーツ不足に加えて、一部改良まで実施するから、2021年10月のN-BOXの届け出台数は前年同月の46.4%まで落ち込んだ。
タントは36.4%だからさらに少ない。ワゴンRスマイルと同じスズキのスペーシアも対前年比は51.6%で、背の高いスライドドアを備えた人気車種の多くが、納期の遅延で売れ行きを下げた。
その一方でワゴンRスマイルは、スズキのセールスマンが述べた通り「納期も1~2ヵ月」に収まるから、販売面で追い風になった。同様のことが日産ルークスにも当てはまる。2021年10月の新車販売台数は、前年同月の123%だ。
販売店によると「ルークスの納期は約3ヵ月だが、短くなる傾向もある」という。ワゴンRスマイルの1~2ヵ月に比べると長いが、極端ではない。そこで2021年10月の軽自動車販売ランキングも、1位がワゴンR(スマイルを含む)、2位がルークスになった。
しかし今後の動向は分からない。ホンダの販売店によると「N-BOXは改良によって電子制御式パーキングブレーキを装着するなど、運転支援機能を大幅に進化させる。従来以上に人気を高め、現時点でも改良後のN-BOXについては多くの受注を抱えている」という。
N-BOXやタントは、今は新車販売台数が低いが、受注を貯め込んでいるから今後の届け出台数は増える。ワゴンRスマイルの本当の人気度が試されるのもこれからだ。
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