車とロックンロールにのせて描かれる青春の一夜『アメリカン・グラフィティ』を観る!!

■撮影のために集められたヴィンテージカー

映画撮影に協力的なお国柄だからなのか、およそ300台のヴィンテージカーが一般の人々の協力で集められた。以前ご紹介した『タッカー』(88)と同じ手法だ (C) 1973 Universal Studios. All Rights Reserved.
映画撮影に協力的なお国柄だからなのか、およそ300台のヴィンテージカーが一般の人々の協力で集められた。以前ご紹介した『タッカー』(88)と同じ手法だ (C) 1973 Universal Studios. All Rights Reserved.

 そんなルーカスの当時の記憶や思い出が詰め込まれたのが『アメグラ』である。当然、車は62年に存在していたものに限られるわけで、それらを集めるために製作チームは新聞広告を使って現地の人たちの協力を仰ぐという手段を取った。

 そうやって集められた車はおよそ300台。1958年のシボレー・インパラ、1932年のフォード・デュース・クーペ、1955年のシボレー・ベルエア150、1956年型のサンダーバードと言ったメインの車。

 それに加え、1956年型デソート・ファイヤフライト、1955年型シェビー・ノマド、1937年製フォードV8クーペ、1941年型フォード・ウィリス等、ヴィンテージカーがズラリ!

 何でも一晩25ドルで借りて来たらしいのだが、その持ち主たちは愛車がどう使われるのか心配だったのだろう、ずっと撮影現場でロケを見物していたという。

 数多くのヴィンテージカーのなかでもファンの注目を集めたのが、地元のアニキ的存在、ジョン・ミルナー(ポール・ル・マット)の愛車、黄色のフォード・デュース・クーペだろう。

 V8エンジンがむき出しになっているのが特徴的で、これが極めてかっこいい。いつの間にか『アメグラ』を象徴するような存在になってしまった。

 このデュース・クーペとチキンレースをする車が、黒いシボレー・ベルエア。これを運転しているカウボーイハットの威勢のいい青年は、本作をきっかけにして『スター・ウォーズ』(77)に出演、大スターになるハリソン・フォードというのも大きなポイントだ。

 そして、作品のメインキャラクター、優等生のスティーブの愛車、白のインパラは本作のためにカスタマイズされたスペシャルカー。白いボディに赤いラインが入り、車内も赤と白を基調にしていて、すこぶる美しい。

 スティーブを演じているのは当時、TVドラマに出演して人気の高かったロン・ハワード。その後、『アポロ13』(1995)、アカデミー監督賞に輝いた『ビューティフル・マインド』(2001)、以前ご紹介したレース映画『ラッシュ/プライドと友情』(2013)等を手掛け監督として大成功を収めた人物だ。

■ルーカス自身の青春を反映している?

撮影当時、監督のルーカスは二十代。高校時代の記憶も鮮明だろう。もしかしたらルーカス自身の青春を、あるいはルーカスが過ごしたかった理想の青春を描いたのかもしれない (C) 1973 Universal Studios. All Rights Reserved.
撮影当時、監督のルーカスは二十代。高校時代の記憶も鮮明だろう。もしかしたらルーカス自身の青春を、あるいはルーカスが過ごしたかった理想の青春を描いたのかもしれない (C) 1973 Universal Studios. All Rights Reserved.

 もう一台注目したいのが、もうひとりの主人公カートの愛車。乗っているシーンはほとんどないのだが、何とシトロエンの2VCなのだ。

 ほかの車の多くが、アメリカのマッスルカーばかりのなかにあってこのチョイス(フォルクスワーゲンのビートルは登場する)。しかも舞台はカリフォルニアの片田舎にもかかわらず、だ。

 そこで少し考えてみると、もしかしたらルーカスはこのカートのキャラクターに自分自身を投影したのかもしれない。

 同じような小さな車に乗り、同じようにルーカスのトレードマークとも言えるチェックのシャツを着ているからだ。ウワサによると、彼の衣装だけはルーカス自らのチョイスだったというから、ますますそう思えてしまう。

 このカートを演じているのはリチャード・ドレイファス。彼もこの後、大ブレイクして『ジョーズ』(1975)や『未知との遭遇』(1977)に出演。『グッバイガール』(1977)でアカデミー主演男優賞を獲得している。

 ということはこの『アメグラ』、ロックンロールと車だけでなく、のちにブレイクする役者たちの共演も大きな見どころということだ。

次ページは : ■『車と音楽』という青春映画の雛形を作った名作

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