レガシィツーリングワゴンはなぜ天下を獲り、なぜ日本から去って行ったのか?

レガシィツーリングワゴンはなぜ天下を獲り、なぜ日本から去って行ったのか?

 初代レガシィツーリングワゴン&セダンが発売された1989年、その2年後となる1991年から4代目レガシィを販売していた2006年くらいまでの15年間、クルマ好きの話題の中心となっていたのは「レガシィ」だったと思う。そんなレガシィながら、5代目モデル(2009年)の登場後、急速にマーケットからフェイドアウトしてしまう。レガシィが売れた理由&売れなくなった理由をジックリ考察してみたい。

文/国沢光宏写真/茂呂幸正、小林邦寿

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■伝説の初代レガシィ誕生前夜

 まずレガシィの登場前夜、スバルは息も絶え絶えの状態だった。日産が後輪駆動車のハンドリング世界一を目指し猛進中。トヨタもバブル景気に乗っかりクラウンやマークII3兄弟売れまくり。スバルといえば、旧態依然としたレオーネの1.8Lにターボを加えたりしたものの、わずか135ps。バブル景気に取り残され、存続の危機を迎えてしまう。

 明るい兆しがなかったワケじゃない。折しも映画『私をスキーに連れてって』でリフト待ち1時間以上というスキー人気到来。スパイクタイヤ禁止措置などが始まり、4WDステーションワゴンの存在感が急速に高まる。そんなタイミングで全日本スキーチームの公式使用車がレオーネツーリングワゴンの4WDだったものだから、ミニブーム到来です。

 スキー好きを中心にレオーネ人気高まる。その裏側で、歴代最高のレガシィと表された4代目を仕込んだ荒澤紘一さん、後にミスターレガシィとも言われた桂田勝さん、EJエンジンの開発を行った五味秀茂さん、当時若手だった辰己英治さんなど「劣勢のスバルを救うことになるメンバー」が、レオーネの劣勢を吹き飛ばすべく後継車の開発に取り組んでいた。

1989年にデビューした初代BF型レガシィツーリングワゴン。2020年に惜しまれつつ生産終了となったEJ20型エンジンを最初に搭載したのがこの初代レガシィになる
1989年にデビューした初代BF型レガシィツーリングワゴン。2020年に惜しまれつつ生産終了となったEJ20型エンジンを最初に搭載したのがこの初代レガシィになる

 プラットフォームはもちろん、エンジンも駆動系も走りの方向性まですべて変えようとしたのだから凄い! かくしてデビューした初代レガシィは、スキーファンを中心に好調なスタートを切った。面白いことに尻上がりに販売台数を伸ばし、4年7カ月の平均販売台数は4900台と大躍進! レオーネ後期の2倍以上の販売台数です。

■売れまくった2代目、3代目

1993年に登場した2代目BG型レガシィツーリングワゴン。このモデルからシーケンシャルツインターボの「2ステージターボ」を搭載しモデル末期には280psを達成している
1993年に登場した2代目BG型レガシィツーリングワゴン。このモデルからシーケンシャルツインターボの「2ステージターボ」を搭載しモデル末期には280psを達成している

 初代レガシィの評価、時間の経過とともに高くなっていった。そんなことから2代目レガシィのデビュー時は文字どおり、鳴り物入りとなる。販売台数絶好調! マイナーチェンジで280psエンジン+ビルシュタインのGT-Bを追加し、2段ロケットのように売れましたね! 2代目のモデル平均月販台数は、8800台! 70%以上が最上級グレードだった。

1998年に登場した3代目BH型レガシィツーリングワゴン。「Mr.レガシィ」ことSTI元社長の桂田勝氏が開発を担当し5ナンバーレガシィの熟成を極めたモデル
1998年に登場した3代目BH型レガシィツーリングワゴン。「Mr.レガシィ」ことSTI元社長の桂田勝氏が開発を担当し5ナンバーレガシィの熟成を極めたモデル

 3代目になると「スバルにだけおいしい思いをさせない!」とばかり、ほぼすべてのメーカーがステーションワゴンを出してくる。カルディナ、アベニール、レグナム、カペラワゴン、ホンダはアメリカからアコードワゴンを持ってきた。さすがのレガシィもシェアを奪われたが、人気ナンバーワンをキープ。生涯平均月販販売台数4400台。

レガシィの最高傑作と評される4代目

 2003年5月にレガシィの最高傑作と評価される4代目がデビューした時、すでにステーションワゴン人気は去っていた。ファミリーカーの主役といえばミニバンです。それでもスバルの開発チームがレガシィに注ぐ熱意ときたらハンパじゃないレベル。アルミを多用するなど徹底的に軽量化。塗装が美しく見えるよう、平滑な鉄板まで採用している。

2003年に登場した4代目BP型レガシィツーリングワゴン。ボディの3ナンバー化による運動性能の向上、ツインスクロールターボの採用で低速トルクのアップなどレガシィの最高傑作と評される
2003年に登場した4代目BP型レガシィツーリングワゴン。ボディの3ナンバー化による運動性能の向上、ツインスクロールターボの採用で低速トルクのアップなどレガシィの最高傑作と評される

 4代目レガシィは多くの同業者も「こりゃ凄い!」となり、プリウスという手強いライバルをうっちゃり日本COTYを取る。私も「このまま改良していくと5代目はドイツ車に追いつくんじゃないか」と真剣に思ったほど。参考までに書いておくと、初代レガシィから4代目レガシィまで大いに気に入り、すべて購入したほど。

 そして迎えた5代目。このクルマに乗っているユーザーは大満足しているようだけれど(買ったのだから当然か)、レガシィファンの大半が「こらダメだ」と見放した。アメリカ市場を意識し、「儲かるクルマ」路線に切り換える。確かに悪いクルマじゃないけれど、もはや人気がなくなってきたワゴンをあえて選ぶほどの魅力はなかった。

■路線変更した5代目からレヴォーグへ

 私も4代乗り継いできたため、買う気満々で5代目に乗った瞬間、欲しくないと思った。新しい技術だってなし。理屈じゃない魅力をなくしたように思う。私以外の人も同じだったんだろう。月販平均2100台。やがてユーザーのリクエストに応えようと初代レヴォーグを出したものの、やはり新技術なく、往年のレガシィに台数は届かず。

2009年に登場した5代目BR型レガシィツーリングワゴン。北米市場に忖度する形でボディの肥大化とエンジンの排気量をアップ。日本では扱いにくいと人気をおとした
2009年に登場した5代目BR型レガシィツーリングワゴン。北米市場に忖度する形でボディの肥大化とエンジンの排気量をアップ。日本では扱いにくいと人気をおとした
2014年にデビューした初代VM型レヴォーグ。実質北米向けとなった5代目レガシィツーリングワゴンの代わりに全長を100mm短縮し日本向けステーションワゴンとして販売された
2014年にデビューした初代VM型レヴォーグ。実質北米向けとなった5代目レガシィツーリングワゴンの代わりに全長を100mm短縮し日本向けステーションワゴンとして販売された

 月販平均台数1800台と、売れなかった5代目レガシィにすら届かない。私もレヴォーグの購入を検討したが、4代目レガシィよりラゲッジスペースが狭い時点でステーションワゴンの魅力を大きく失ったように思う。新型レヴォーグはいいクルマながら、今やステーションワゴンの市場が減少した。クロスオーバーだったら面白かったかもしれない。

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