■ライバルを脅かす売れゆきを誇る、「スペーシア」と「ソリオ」
このなかで注目に値するのはスペーシアとソリオだ。まずはスペーシア。スズキはもともと軽スーパーハイトワゴンでは弱く、ダイハツタント、ホンダN-BOXの後塵を拝していた。
が、スズキは諦めることなく、驚異的な粘りをもってユーザー心理を研究し、ついに現行モデルになってかつての王者タントを抜き、圧倒的ナンバーワンだったN-BOXの背後を狙うくらいの人気モデルになった。
もう一台のソリオはフルモデルチェンジによってクルマとしての出来が驚異的に上がった。日産ノートやホンダフィットにとっての最大の脅威は、クラストップのトヨタ「ヤリス」ではなくソリオだと、両社の販売会社のセールスマンは口を揃える。
■コンパクトー本で勝負すると宣言して以降、すべてのモデルの完成度が高まった
筆者は昨年、ソリオで東京と大阪の間を1200kmほどドライブしてみたが、ハッキリ言って完成度は素晴らしいものがあった。新東名の120km/h区間でも直進性はみごとなもので、山岳路でも速くはないものの操縦性が素直で不安感がきわめて小さい。
車内は静かで乗り心地は快適。そして燃費も新東名をはじめ流れの速い高速主体で18km/L台、一般道のバイパス主体で22km/L台と申し分ない数値だった。
スズキのクルマ作りが近年、非常に手堅くなってきたのには理由がある。きっかけは2015年、これからはサブコンパクト以下だけで勝負をすると宣言したことだった。
今年一線を退いた名物経営者、鈴木修氏は「われわれは大手さんが旨味がないからやらないようなことをコツコツやるのが本分。安いクルマのノウハウでは絶対に負けないことを目指す」と語っていた。
■バジェッドブランドながら、着実に利益も確保! 電動化時代でも強みを活かせるか?
決して派手な大ヒットを飛ばそうとしたり、クラスナンバーワンを狙ったりしない――こういう自制心を持つことはクルマ作りにおいては案外難しいことなのだが、スズキは自らのポジションをみだりに高く置かず、バジェット(お買い得)ブランドで行くとハッキリ宣言することによってその自制心を作り出した。それがいいクルマづくりにひと役買っていることは間違いないだろう。
ちなみにそのポリシーはスポーティカー、スイフトスポーツなどにもしっかり生かされている。1トンを切る車重に最高出力140psの1.4Lターボエンジン。例えばトヨタGRヤリスのように先鋭的ではないが、腕次第ではわりといい勝負になるくらいの速さを持ち、お値段はおおむね半額。クルマ好きの若者へのファンサービスとしてはこのうえないモデルになっている。
もちろんスズキの将来が安泰というわけではない。電動化への対応は必須であるし、その時代に今までと同様、お買い得車戦略で強みを発揮できるかどうかも確定していない。
が、現状のビジネスでしっかり利益を出せていることは生き残りを賭けた新たな戦いに挑むには有利だ。インドはじめ新興国ビジネスが従前の高収益体質に戻れば、利益水準は跳ね上がるだろうし、研究開発にかけられる資金も潤沢になる。
スズキがこれからの激動の時代をどう渡っていくか、またその過程でターゲット層である庶民ユーザーにどんな新しい提案を見せてくれるか、楽しみなところである。
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コメント
コメントの使い方スズキの魅力は、ライフスタイルに合わせ選べるラインナップの充実とお財布への優しさもありますよね。