名門首位奪還の原動力! 新型カローラクロス 絶好調の秘訣と気になる短所

トヨタミドルSUVラインナップを救った「カローラクロス」

2021年9月に発売されたカローラクロス。ボディサイズは全長4490×全幅1825×全高1620mm
2021年9月に発売されたカローラクロス。ボディサイズは全長4490×全幅1825×全高1620mm

 そこで「救世主」としてカローラクロスが投入された。カローラクロスのプラットフォームは、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値まで含めてC-HRと共通だ。全長は4490mm、全幅は1825mmだから、C-HRに比べると105mm長く30mmワイドだが、同程と考えて良い。

 しかしボディスタイルは大きく異なり、カローラクロスはSUVの典型だ。リアゲートを立てて、背の高い荷物も積みやすい。全長も少し長いから、積載性が優れている。

 その代わり外観は保守的だが、これは欠点にならない。例えばミニバンではアルファードやヴォクシーが売れ筋だが、この2車種の基本的な外観は、約20年前に初代モデルを投入した時からほとんど変化していない。ミニバンの場合、今も昔も存在感が強く、車内の広そうに見えるデザインが好まれるからだ。

 セダンも同様で、メルセデスベンツCクラス、BMW 3シリーズのような典型的なデザインが人気を得ている。逆にクラウンは、ボディ側面のウインドーを3分割してリアウインドーを寝かせ、先進性を表現したが、売れ行きは下降している。

 つまり好調に売るには「セダンらしさ」や「SUVらしさ」が大切で、C-HRはこの点で失敗した。逆にカローラクロスは、国内市場に最適なサイズでSUVの典型的なデザインを採用したから成功している。

 さらにC-HRは全車に4輪独立懸架を採用したが、カローラクロスでは、2WD(前輪駆動)のリアサスペンションをトーションビームの車軸式に簡素化した。トーションビームは構造がシンプルだから空間効率が優れ、コスト低減も可能になり、価格を割安に抑えられる。同様の手法をカローラのセダンとツーリングも採用している。このようにカローラクロスには、好調に売るための仕掛けが多い。

カローラクロスの長所と購入時にチェックしておく注意点とは

ダッシュボード全体が水平基調で構成されたカローラクロスのインパネ
ダッシュボード全体が水平基調で構成されたカローラクロスのインパネ

 カローラクロスでは室内空間にも特徴がある。インパネなどの質感は特に高くないが、不満も感じさせない。価格を考えれば納得できる。

 居住性も同様だ。4名が不満なく乗車できる広さを備える。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ弱だ。ヴェゼルの2つ半に比べると狭いが、大人4名の乗車に支障はない。

 そして荷室長(荷室の奥行寸法)は、後席を使った状態で849mmとされ、全長が4500mm以下のSUVでは最長レベルだ。前述のとおりリアゲートの角度を立てたので、荷室容量も大きく、4名で乗車して荷物を積む用途に適する。SUVの典型的な外観から想像されるとおりの実用性を備える。

 エンジンは直列4気筒1.8Lのノーマルタイプとハイブリッドを搭載する。ノーマルエンジンは実用回転域の駆動力が高く運転しやすい。ノイズは小さく、登坂路などを除くと気にならない。

 ハイブリッドはプリウスなどに幅広く使われるタイプで、不満のない動力性能を発揮する。特に街中の走りは、モーター駆動の効果もあって滑らかだ。ノイズも小さく、快適で運転しやすい。

 操舵感は特に機敏に曲がるタイプではないが、操舵に対する反応は比較的正確で、後輪の接地性も優れているから安心できる。上質とかスポーティという印象はないが、誰にでも運転しやすく、カローラブランドの本質を突いている。車両重量はノーマルエンジンがハイブリッドよりも50~60kg軽く、峠道などを軽快に運転できる。

 乗り心地は駆動方式とグレードによって異なる。駆動方式については、足まわりが4輪独立式になる4WDが快適だ。後輪が車軸式の2WDは、やや上下に揺すられる印象になる。グレードについては、18インチタイヤを装着する最上級のZよりも、17インチタイヤのSとGが柔軟だ。

 つまり乗り心地が最も快適なのは、SとGの4WDになる。足まわりとタイヤの両方が柔軟に動き、引き締まり感は乏しいものの、乗り心地を柔らかく仕上げた。逆にZの2WDは、粗さはなくヤリスクロスに比べると快適だが、カローラクロスのなかでは時速40km以下の低速域を中心に硬く感じる。

 以上のようにカローラクロスは、さまざまな機能をバランス良く仕上げた。特に適度なサイズのSUVで、荷室の広さと使い勝手を重視するユーザーにとって、カローラクロスは選ぶ価値が高い。

カローラクロスの後部座席。後席の膝先空間は、身長170cmの大人4名が乗車して握りコブシ2つ弱
カローラクロスの後部座席。後席の膝先空間は、身長170cmの大人4名が乗車して握りコブシ2つ弱

 逆に注意点としては、4名で乗車するときは後席の足元空間を確認したい。前述のとおり、ヴェゼルよりは少し狭く、長身の同乗者が座ると窮屈に感じる場合がある。

 荷室は広くて使いやすいが、後席の背もたれを前側に倒すと、広げた荷室の床に大きな段差ができる。ディーラーオプションのラゲージアクティブボックス(2万8050円)を装着すると、荷室の床が高まって段差が埋められ、床下には収納スペースができる。

 動力性能はノーマルエンジン、ハイブリッドともに充分だが、前者は設計が古く燃費性能は良くない。アイドリングストップが非装着なこともあり、WLTCモード燃費は14.4km/Lに留まる。駆動方式も、ハイブリッドでは後輪をモーターで駆動する4WD(E-Four)を選べるが、ノーマルエンジンは2WDのみだ。そのためにカローラクロスでは、国内販売総数の90%近くをハイブリッドが占める。

 装備では安全面に注意したい。衝突被害軽減ブレーキは、自車が右左折するときに、直進車や横断歩道上の歩行者を検知してブレーキを作動させる機能がない。これらを備えたヤリスやヤリスクロスの衝突被害軽減ブレーキに比べると、カローラクロスは新型車でありながら、設計の古さが見られる。

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