■FF車の台頭で注目を集める
V6エンジンが一躍脚光を浴びることになったのは、FF車の台頭によってでした。中型、大型のFFセダンが作られるようになり、直4とV8の間を埋めるエンジンが必要になってきたからです。
また、安全性を高めるためのクラッシャブルゾーンも全長の長い直6ではスペースをとることができないので、全長の短いV6のメリットが生きてくるのです。
世の中はバブル真っ盛り。そんな中でFFコンパクトカーの高級化の話が持ち上がります。4気筒を6気筒に置き換えて無駄とは考えず、6気筒のほうが偉い気がするという発想はまさにバブルならではの発想だったかもしれません。
もちろん発想だけでなく造る技術もあるわけです。そして登場したのがマツダのユーノス・プレッソ、ユーノス500の1.8Lであり三菱のミラージュ/ランサーの1.6LV6エンジンでした。
じつは1990年前後、「コンパクトなプレミアムカー」という新たなカテゴリーを作り出そうという動きがあったのです。品質の高さ、質感の高さ、6気筒の高級感を武器にニーズを掘り起こそうとしていたのだと思います。
当時試乗しているのですが、実はあまり記憶が明瞭ではありません。なけなしの記憶をたどると、やはりいずれも素晴らしくスムーズに、そして精密機械のように回るエンジンだという印象があります。
ミラージュV6 VIEサルーンの1.6L V6エンジンは6A10型で最高出力140ps/7000rpm、最大トルク15.0kgm/4000rpmというスペックでした。
高級路線を目指すだけあってサスの味付けはソフト目。V6エンジンもスムーズで荒っぽい振動を感じさせずに7000回転まであっさり回ります。さすがにトルク感は薄めでしたがエンジンが軽々回るのが印象的でした。
マツダのV6はプレッソよりもユーノス500のほうが印象に残っています。1.8LのK8-ZE型もスムーズな吹き上がりを持っていました。吹き上がりはシャープでもダルでもなくスムーズに回る印象です。
それでいてレブリミットの始まる7000回転まできっちり回り苦しげな様子がありません。スポーツ性を期待すると物足りないと感じますが、上質なセダン用のエンジンと考えれば、滑らかスムーズなエンジンフィールはよく合っていると思います。
ただ全体にトルクは細目で高回転まで回してもエンジンは回るけれど力強い加速感はそれほど得られませんでした。
なかなか興味深いチャレンジだったと思うのですが、いかんせん発売したタイミングが悪すぎました。1.6Lでは96年にインテグラが160馬力のVTECエンジンを搭載して登場。それ以前に1998年にフェアレディZとスカイラインGT-Rが280馬力で登場し、その後GTO、スープラ、NSXが後を追うように発売になります。
また1992年にはランエボとインプレッサWRX STIが発売になり、その後25年にわたってしのぎを削る競争が繰り広げられることになります。
小排気量V6エンジンは、エンジンとして興味深いのですが、バブルに沸き立ち、スポーツカー百花繚乱のごとく華やかな時代でした。メカニズムだけがウリで突出した性能が見当たらず、実用性は4気筒エンジン並みでは、やはり生き残るのは難しかったのだろうと思います。
そんなことが、小排気量V6エンジンが短命に終わってしまっら理由なのだろうと思います。
【画像ギャラリー】バブルと共に始まったV型エンジン神話!! スポーティで軽快に回る小排気量V6エンジン搭載車を見る(10枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方インテグラの登場の年が誤記だと思います。1996→1989年では?