■軽自動車で低全高スタイルを実現
全高は1315mmと非常に低い。現在の軽自動車の主流たるトールワゴンの全高は、1800mm前後。最も背の低いアルトやN-ONEでも1500mm以上ある。当時ライバルだった2代目アルトで1400mm。トゥデイの低さは圧倒的だった。
全高だけでなく、ボンネットも非常に低かった。まるでスポーツカーのような低いボンネットは、2気筒エンジンをほとんど90度前傾させることで実現していた。ホンダは1981年、当時の「クルマは背が低いほどカッコいい」という常識を覆し、トールボーイスタイルの初代シティをリリースしている。が、そのいっぽうでは、背の低いクルマの本家&元祖デートカーの2代目プレリュード(1982年)や、砲弾型フォルムの白眉たる3代目シビック(ワンダーシビック)を発売した(1983年)。
当時の軽自動車は、主に地方のミニマムな移動手段の色彩が強く、流行とかカッコよさはあまり求められてもいなかったが、ホンダは、登録車の常識をそのまま軽自動車の世界に持ち込み、ワンダーシビックをさらに一歩進めた超スタイリッシュなデザインを、トゥデイに与えたのである。このフォルムは、のちにルノーの初代トゥインゴが、ほとんどパクリ的に踏襲したが、それくらいシンプルで美しく、スポーティで居住性も高かった。
ただ、市場の反応はそれほど芳しくなかった。当初トゥデイは商用車のみの設定。安さが命ゆえ、ライバルより価格の高いトゥデイは、苦戦して当然だった。I氏が購入したのは、この前期型の丸目トゥデイである。
■中古車相場の値上がり理由を考察
先日、I氏に連絡を取ったところ、トゥデイはすでに手放したという。
I氏「80万円でヤフオクに出品したら、即決で売れちゃったんですよー」
なんと、買った値段の4倍で! いったい誰が?
I氏「ほかに2台トゥデイを持ってる方です。そのうち1台は、『逮捕しちゃうぞ』の実写版TVドラマで使われた、ミニパト仕様のトゥデイ(実物)だそうです」
まさか、トゥデイのマニアが存在していたとは! と言っても、2年前は20万円で買えたのだから、マニア人気はまだ顕在化していなかったはず。近年は国産旧車の値上がりが激しいが、その波が初代トゥデイにまで及んだということか!?
が、トゥデイの中古車相場を検索すると、人気は初代前期型だけではなかった。それを上回る価格の、別グレードが存在するのである。その代表は、以下の2つだ。
①【初代後期型(楕円目)の電子燃料噴射(PMG-FI)仕様】
②【2代目トゥデイのMトレック仕様】
初代後期型は、マイナーチェンジでヘッドライトが丸目から楕円に変わると同時に、軽規格の変更で、エンジンが2気筒の550ccから3気筒の660ccに変更されたが、①のPMG-FI仕様は、ノーマルの36馬力に対して、42馬力/8000rpm(5速MT)という高性能を誇る。
そして2代目トゥデイには、あのビートに搭載されたMトレック(ツインマップ燃料噴射制御/各気筒独立スロットル機構)エンジンを搭載したグレード(前期「Xi」、後期「Rs」)が存在するのだ。最高出力は58馬力。高回転高出力エンジンゆえに、回さないとパワーが出ず、日常領域ではぜんぜん速くなかったが、回せばホンダのスポーツエンジンらしく、高回転まで突き抜けた。こちらも100万円近い値付けの個体がある。
これら人気グレードの存在ゆえか、ごく普通のグレードでも、走行距離が少ないなど状態がよければ、やっぱり100万円近い値段になっていたりするのだから、門外漢にはワケがわからない。
とにかくトゥデイは、いかにもホンダらしい、マニアックなクルマだった。そのマニアックさゆえ、今になって人気に火がついたらしい。まったくもって、何がどうなるかわからない世の中だ。
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