■2022年に注目すべきEVのターニングポイント
●青天の霹靂を超える巨大爆弾が炸裂
世の中先のことはわからない。実は、このページの原稿を書こうとした矢先、トヨタの「バッテリーEV戦略に関する説明会」という巨大爆弾が炸裂したのだ。
それまで「2022年は日産からアリアも出るし、トヨタからもbZ4Xが発売されるし、EVで日本車の反撃が始まる年だ」という原稿を書いていたのだが、そんな構想はコナゴナに吹き飛びました。
で、気を取り直して考えたのだが、この『トヨタEV爆弾』の爆風をまともに食らったのがどこかといえば、そりゃやっぱり日産だよね。
日産は11月29日に「日産アンビション2030」と題した発表会を実施。電動化に向け今後5年間で約2兆円を投資し、2030年度までに15車種のBEVを市場に導入することを表明、あわせて新しいコンセプトカーを3車種披露した。
これはこれで充分に意欲的な構想なのだが、わずか2週間後にこんな発表があるとは……。電動化に関する話題、トヨタに全部美味しいところ持っていかれちゃった。
●2022年はEVにとってのターニングポイント
新車販売の現場としても寝耳に水。東京モーターショー2019での発表以来、2021年6月には予約注文を開始するなど、日産はアリアの発売に向けた準備を整えてきた。
ところが、上海ショーで伏兵bZ4Xが発表されたと思ったら、そのバックにはさらに15車種ものコンセプトカーが控えていたとは!
ここまで強烈なEV戦略を目にしたら、普通の人は「とりあえずトヨタのEVを見てから考えよう」ってなる。
日産期待の新世代EVのローンチは、思わぬ逆風にさらされたと言わざるを得ない。
ただ、この「トヨタのEVを見てから考えよう」は長期的に見れば悪いことではなく、日本のEV市場全体にとって重要な分岐点になると思う。
政府がカーボンニュートラルの旗を振り、大手メディアが「EVに移行しないとガラパゴスになる」と煽っても、これまで実際にEVを買ったのは新しい物好きの『アーリーアダプター』と言われる顧客層まで。多くの「普通の人」はまだまだ様子見だった。
そんな「普通の人」にすんなりEVを買ってもらうには、トヨタのディーラー網やサービス体制への信頼感が不可欠。トヨタが本気になったことで、やっとEVが『アーリーマジョリティ』層まで拡大する。2022年はそのターニングポイントの年になるわけだ。
本当はマツダの直6FRのことも書きたかったのだが、『トヨタEV爆弾』に吹っ飛ばされちゃった。
来年のことを言うと鬼が笑うというが、まさにその諺どおりの出来事でしたね。
(TEXT:鈴木直也)
■国産8メーカー この先の「戦略ロードマップ」をよむ
国内各メーカーの今後5〜10年を見据えた中長期戦略を見ていくと、やはり「電動化」へ向けたロードマップが各社中心となっている。
これは2050年を目指すカーボンニュートラルに向けた動きが背景となっている。
CO2排出量の削減には、ライフサイクルアセスメント(LCA=製造時から廃車時まで、トータルでのCO2排出量を考慮する)の視点が重要ながら、やはり内燃機関一辺倒では実現はかなわず、ハイブリッドパワーユニット(HEV)、PHEVも含めた『電動車』が必須となってくるということだ。
●電動化への流れはますます加速する
トヨタが2021年12月14日に発表したEV戦略はあまりにもインパクトが大きく、それまで「トヨタはEVで後れを取っている」など頓珍漢な見解を示していた方面に一矢報いたものとなった。
トヨタはそれでもEV一辺倒ではなく、HEVやFCEV、さらには内燃機関まで含めた最適な手段で目標=カーボンニュートラルを目指すことを示したのは凄いことだ。
電動化といった観点ではホンダが急進的で、今後6年間で6兆円の開発費を投じ、2040年にはグローバルで販売する新車すべてをEV及びFCVにシフトするとのロードマップを示している。ここにはハイブリッドは含まれないので、ホンダから内燃機関が消滅するという近未来像だ。
さらには、比較的電動化に消極的に見えたマツダや三菱も、2025〜2030年にかけてEVを相次いで投入することを示している。
●今後の展望は電動化だけではない
ホンダは一方で「2050年にはホンダ車がかかわる交通死亡事故をゼロにする」目標を掲げ、センシング技術のみならず、人間の脳の認知メカニズムにまで踏み込んで予防安全技術を推進することを掲げる。
いわゆる「レベル3」以上の自動運転ではなく、既存の交通環境のなかで、各車両が自律的に予防安全を実現できるソフトウエアの開発である。この知見が来たるべき「レベル4」以上の自動運転時代へ大きく寄与することは間違いない。
安全技術に関しては、当然ほかのメーカーも積極的に取り組んでおり、2022年以降、さらなる新技術が市販車に搭載されることになる!!
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