■三菱K-EV concept X Styleの気になるスペックとは?
パワーユニットからプラットフォームまで電気自動車としての専用設計だから、eKクロスやデイズとは共通性がほとんどない。それでもK-EV concept X Styleのフロントマスクは、三菱車に共通するダイナミックシールドのデザインで仕上げた。
今の三菱は、同社の伝統とされるSUVを中心に開発しており、K-EVコンセプトXスタイルのフロントマスクにもブランドの統一性を表現したわけだ。日産もV字型グリルを採用する。
日産は2021年8月に「軽自動車クラスの電気自動車を2022年度初頭(2022年4~5月頃)に発売」すると発表した。駆動用電池の総電力量は20kWhとされ、補助金を差し引いた実質購入価格は200万円以上としている。三菱が公表したK-EV concept X Styleの市販版も、この規格に基づいて開発されている。
日産では軽自動車サイズの電気自動車について、ボディサイズも公表した。全長:3395mm、全幅:1475mm、全高:1655mmだから、デイズやeKワゴン&eKクロスよりも若干高い程度だ。軽自動車のカテゴリーとしては、ワゴンR、ムーヴ、N-WGNといった全高が1600~1700mmのハイトワゴンに属する。
ボディの下側に駆動用電池を搭載するから、床の位置が若干高くなって室内高が減ることは考えられるが、大人4名が快適に乗車できる居住性が備わる。
かつてのi-MiEVでは、駆動用電池が16kWhの場合、1回の充電によってJC08モードで164kmを走行できた。リーフもJC08モードなら、40kWhで400km、62kWhでは570kmを走行できる。大雑把にいって1kWh当たりの航続可能距離は10kmだ。
そうなるとK-EV concept X Styleの市販版と、その姉妹車として日産から発売される軽自動車サイズの電気自動車は、20kWhの駆動用電池を搭載して200kmを走行できると考えられる。
ただし今はWLTCモードで計測されるから、80%の160kmという見方も成り立ち、いかに200kmの水準まで伸ばせられるかが見どころだ。
■売れるために求められる2つの条件! 軽EV販売成功のポイントとは
エコロジーを重視する電気自動車の世界観では、クルマは日常的な買い物など、短距離の移動に使う。そのために電気自動車は、本来的に軽自動車サイズと親和性が高い。
そして長距離の移動は、パーク&ライド(クルマを使って駅まで出かけて電車に乗り替える移動方法)とする考え方だから、「1回の充電で何kmを走れるか」は優先順位の高い性能ではない。
それでも現実的には、移動の途中で電気を使い切る不安を払拭できない。安心して使うには、1回の充電で走行できる航続可能距離をWLTCモードで200kmの大台に乗せることが大切だ。200kmを走れるか否かは、売れ行きを左右する大切な要素になる。
好調に売るために大切な2つ目の条件は価格だ。前述のとおり日産は、補助金を差し引いた実質購入価格を200万円以上と発表したが、そのグレードの内容が重要になる。
200万円で手に入るのが、快適装備の大半を省いた法人用の最廉価仕様なると、売れ筋グレードは220~230万円に高まる。上級グレードは250万円前後に達する。
リーフで価格が最も安いSは、40kWhの駆動用電池を搭載して332万6400円だ。補助金の交付額を差し引くと約294万円だから、20kWhの軽自動車が250万円だと、割高感が生じてしまう。
逆に補助金を差し引いた200万円で、相応に満足できる内容が得られると、リーフに比べて90~160万円は安くなる。軽自動車サイズの経済的なメリットも際立つ。
また今の軽自動車では、ルークス、eKクロススペース、N-BOXといった全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた車種が人気だ。これらのスーパーハイトワゴンは、軽乗用車の新車販売総数の半分以上を占める。
このスーパーハイトワゴンに、エアロパーツ、ターボ、4WDを装着した最上級グレードが約200万円だから、電気自動車が補助金を差し引いた200万円の実質購入価格で実用的に不満のない仕様となれば、購入の対象に入るだろう。
装備を満載した最上級のスーパーハイトワゴンか、電気自動車か、という選択になるからだ。
そしてもうひとつ、数年後の売却額を高く保つことも不可欠だ。日産の残価設定ローンで、5年後の残価率(新車価格に占める残存価値の割合)を計算すると、セレナは47%、ノートは33%だが、リーフは23%まで下がる。
電気自動車は使用期間が伸びると駆動用電池が劣化するから、中古車を買うユーザーは少なく、価格を下げねばならない。そのために数年後の売却価格も下がってしまう。電気自動車は、いわゆるリセールバリューが悪い。
電気自動車の売れ行きを増やすには、「売却時に買い叩かれる」という不安を取り除いて、安心して使えるようにすることも大切だ。そのためにはリチウムイオン電池の劣化を抑え、なおかつ認定中古車の整備など、中古車需要を盛り上げる工夫も求められる。技術と販売面の連携が不可欠だ。
以上のように軽自動車サイズの電気自動車を成功させるには、WLTCモード燃費で200kmの航続可能距離、実質購入価格が200万円で満足できる内容を得られること、リセールバリューの改善が求められる。
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