今更ニッケル水素電池!? トヨタがアクアに込めた超絶技術「バイポーラ型バッテリー」の今後

今更ニッケル水素電池!? トヨタがアクアに込めた超絶技術「バイポーラ型バッテリー」の今後

 2030年代の電動化を目指して、トヨタは2021年12月にバッテリーEV戦略に関する発表を行い、今後発表する製品も公開した。とはいえ、インフラも含めて急激に電気自動車へ置き換えることはあまり現実的ではない。

 その転換期に大きなキーとなるのがハイブリット車だ。その一翼を担うのはトヨタアクアとなるはずだが、その動力用バッテリーに「バイポーラ型ニッケル水素電池」を採用している。この耳慣れない新型バッテリーはトヨタのハイブリッド製品の救世主となるのか?

文/鈴木直也、写真/TOYOTA、ベストカー編集部

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■お家芸のHVにくわえてトヨタが手にする新たな武器

トヨタが2021年12月に行なった「バッテリーEV(BEV)戦略に関する説明会」で公開されたEVコンセプトモデル
トヨタが2021年12月に行なった「バッテリーEV(BEV)戦略に関する説明会」で公開されたEVコンセプトモデル

 「2050年カーボンニュートラル」宣言以来、クルマ業界では電動化の流れが急加速している。それを象徴するのが、トヨタが2021年12月に行なった「バッテリーEV(BEV)戦略に関する説明会」だ。

 2030年までにBEVを350万台という数字自体に、さほど驚きはなかったが、2022年5月にデビューしたbZ4Xを先頭に、イッキに16台のEVコンセプトモデルを並べた発表会は圧巻。

 EVにやたら前のめりな欧米からガラパゴス扱いされてきた日本だが、この発表会のニュースで「いよいよ日本にも本格的なEV時代が来た!」と感じた人も多かったと思う。

 しかし、トヨタバッテリーEV戦略というのは「将来の飯のタネ」であって、いまトヨタがなんで稼いでいるかといえば、もちろんお家芸のハイブリッド車(HEV)だ。

 トヨタは2030年までに電動車世界販売を800万台にするといっているから、BEVの350万台を引くと残りの450万台がHEV。ここも電動化戦略の中できわめて重要なプレーヤーであることを忘れてもらっちゃ困る。

■いまさらニッケル水素電池!? に隠された秘密

2021年7月に登場した2代目トヨタ アクア
2021年7月に登場した2代目トヨタ アクア

 で、そういう面からぼくが重要だと思っているのが、2021年7月に発表された新型アクアのバイポーラ型ニッケル水素電池だ。

 このニュースを聞いたときには、ちょっとわが耳を疑った。だって、世界中こぞってリチウムイオン電池に熱狂しているこのご時世に、いまさらニッケル水素電池ですよ。

 エネルギー密度が低いとか、メモリー効果があるとか散々けなされて、だからリチウムイオン電池に置き換わったんじゃないんですか? 正直びっくりですわ。

 で、技術的なバックグラウンドを詳しく聞いてみると、カギとなるのは「バイポーラ」という技術だ。

 これは電池の内部構造に関する技術用語なのだが、思いっきり簡単に要約しちゃうと「いままで正極と負極に分かれていた電池内部の集電体を、片側に正極物質、反対側に負極物質をコーティングすることで一体化する技術」こんな説明でわかってもらえるでしょうか?

アクアに搭載されるバイポーラ型ニッケル水素電池
アクアに搭載されるバイポーラ型ニッケル水素電池

 もうちょっと乱暴に表現すると、電池パックの外装をバリっと剥いて、ナマの電池をどんどん積層してゆくイメージ(ちょっと違うけど)。要するに、従来の構造より大幅にコンパクトになり、電気的には内部抵抗がぐっと減る素晴らしい技術なのであります。

 カンのいい読者はお気づきでしょうが、この技術はニッケル水素電池固有のものではなく、お馴染み鉛バッテリーでも、リチウムイオン電池でも、バイポーラ構造にすることは可能。

 バイボーラ構造という概念自体は、電池技術者には古くから知られていた技術だが、コストと信頼性の確保が難しいことで、なかなか実用化に至らなかったものらしい。

 具体的な課題は、金属集電体の膨張収縮による電極活物質の劣化と、薄い集電体を挟んでセルが密集する電解質のシーリングの難しさが代表例だが、トヨタが量産車用としてバイポーラ電池を実用化したことに関しては、電池業界では驚きの声が上がっているようだ。

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