■バッテリーの新たな調達先が意味するものは?
かくして完成したバイポーラ型ニッケル水素電池だが、なにが嬉しいかといえば以下の2点。セルを省略して集積度を上げたこと(1.4倍)と、内部抵抗を減らしたことによる出力の向上(1.5倍)で、バッテリーの出力(おそらく容積あたり出力という意味)はトータル2倍に達しているという。
ただ、具体的なスペックの数字で見ると、旧型アクアに対して、セル数120→168。電圧144V→201.6V。容量0.936kWh→1.008kWhというところで、10年前のニッケル水素電池を比較対象とするわりには、少なくとも電池容量はさほど向上していないようにも感じられる。これはなぜだろう?
答えは、HEVにおける電池の使われ方にヒントがある。実は、同じバッテリーでもBEVとHEVでは使われ方がまったく異なる。BEVは充電器でコンスタントにチャージし、回生チャージはあるものの使うときは一方通行。でかいペットボトルに水を汲んで、飲みおわったらまた水を汲みに行くという使用パターンだ。
一方、HEVは小刻みにチャージしては使い、またチャージしては使いの繰り返し。小さなコップで注いじゃ飲み注いじゃ飲みを繰り返すような感じで、けっこうあわただしい。
こういうHEV的な使い方をするバッテリーには、短時間でエネルギーを蓄え、それを短時間で放出する瞬発力が重要な性能要件となる。
コップのサイズが小さいのだから、ガバッと注いで一気飲みしたいのがHEVの要求する電池特性。バイポーラ構造を採用するメリットのひとつは内部抵抗の低減だが、そういう使い方にはまさにうってつけで、ここにトヨタは魅力を感じているのではないかと思われる。
さらに、電池に関してはどこからでも調達できるというものではなく、サプライチェーンの維持構築も重要課題だ。
トヨタハイブリッドはかなり最近までパナソニック製のニッケル水素電池を使い続けてきたが、今度の新しいバイポーラ型ニッケル水素電池は、グループ企業の豊田自動織機との共同開発によるもの。
カーボンニュートラルに向けて需要が逼迫する一方のリチウムイオン電池は、エネルギー密度の高さを活かしてなるべくならBEVに使いたい。そんな思惑から新たな調達先を開発したものといえる。
これはぼくの大胆な予想なんだけれど、トヨタは今後BEVとHEVで電池を使い分ける可能性が高い。バイポーラ型ニッケル水素電池はHEV用のエースとして、トヨタの電池戦略においてかなり重要なプレーヤーになると思うな。
【画像ギャラリー】バッテリーの変更で旧型より出力アップ!? バイポーラ型ニッケル水素電池を採用するトヨタ アクア(12枚)画像ギャラリー
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