■そのほかのエンジンはどうか?
VR30DETTには、304馬力仕様もあるが、そちらは405馬力仕様に比べると大幅におとなしく、「残して欲しい!」とまでは思わなかった。また、フーガやエルグランドなどに搭載されているVQ系V6エンジン(ノンターボ)も、悪くないとは思うが、心に刺さった部分は特にない。
4気筒系では、唯一マーチNISMO Sがマニアの心に刺さるクルマだが、それはハンドリングに関する部分で、1.5Lエンジン(HR15DE)は最高出力116馬力に過ぎず、フィーリングもぜんぜんまったくたいしたことはない。
現在の日産にとって、主力のパワーユニットはe-POWER。つまりモーターになっている。e-POWERのエンジンは発電用の黒子で、黒子の存在をいかに消すかが最大の課題だ。我々ユーザーとしても、e-POWERのエンジンは、「かかるとうるさいからできれば消えて欲しい」と願っている。
デイズ/ルークスに積まれた軽自動車用3気筒660㏄は、トルクフルでスムーズでなかなか気持ちいい。ただこれも、「ぜひ残して欲しい」とまでは思わない。
こうして見てみると、すでに日産のラインナップで、ぜひ残して欲しいガソリンエンジンは、VR30DETTだけになっている。そして、「これ以上にマニアックなヨロコビのあるガソリンエンジンを新規開発しろ!」というのが無理難題であることも理解している。
■平凡なエンジンならモーターのほうが上!
私を含めたカーマニアは、内燃エンジンが消え、EVオンリーになることを憂いている。欧州がEVオンリー政策を全世界に押し付けようとしていることへの反感も抱いている。
しかし現実として、長く残して欲しいとまで願う内燃エンジンは、すでにそれほど残っていない。日産ではVR30DETT(405馬力仕様)だけ! 国産他社を見回しても、ほんのわずかを残すのみだ。第二世代スカイラインGT-Rを始めとして、かつての名エンジンを積んだ中古車が高騰するのも無理はない。
一部の名エンジンを除けば、現在残っているエンジンの大部分は、ある意味「ごく普通に走るだけ」の実用機械にすぎない。それでも我々が内燃エンジンにこだわるのは、まだEVの充電が面倒くさく、その分、自由の翼を奪われるからである。
EVだって、充電の煩わしさやバッテリーの耐久性などが解決すれば、なんの問題もない。ロードスターのような軽量スポーツはまた別だが、一般的な実用車に関しては、モーターのほうが静かで快適で、メリットのほうが大きい。EVがあらゆる面で進歩すれば、一部のマニアックなモデルを除いて、ガソリン車に取って代わるのは自然なこと。それが何年後かはわからないが、時間の問題だろう。
つまり、日産グプタCOOの「(電動化は)お客様が望むかたちで、自然にシフトしてゆくものだと考えている。決めるのはあくまでお客様だ」という発言は真理を突いている。決めるのは我々なのだ。
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