こんなクルマがこの世に出ちゃっていいのでしょうか?「これでいいのカー? これでいいのだカー!」

こんなクルマがこの世に出ちゃっていいのでしょうか?「これでいいのカー? これでいいのだカー!」

 世の中には、これでいいのか!? いや、間違ってるよ! と言いたくなる事柄と、これでいいのだ、だってそれ別に望まれているわけではないから! という事柄がありますね。これで世に出したのは間違ってる! と激しく指摘したくなる「これでいいのカー」がある一方、あれこれ言いたくなるけど、そんなに突き詰めずに「これでいいのかも……」な、「これでいいのだカー」がある。わずか1文字の違いだが、両車の間には深くて広い川がある。

 そのわずかな違いは、実際のところどんなモンなのか? それぞれ3台づつ、実例を挙げてみましょう。

文/清水草一
写真/ベストカー編集部


■これでいいのカー?3選

■驚くほど乗り心地のよくないレクサスLS

 日本の最高級セダンなのに、驚くほど乗り心地が悪い! 特にスポーティな20インチタイヤ装着モデルの後席は、「これでホントにエライ人(主に老人)を乗せるつもりですカー!?」と心配になるほど、路面からの突き上げがダイレクトにクル。

 原因ははっきりしている。世界の趨勢がスポーティな走りを志向してるということで、「LSも変わらなきゃ」とばかりに、走りを思いきりスポーティに降り、その上初めてランフラットタイヤを採用したからだ。

 ランフラットタイヤを履きこすのは、なかなかの難事業らしく、BMWもメルセデスも、当初は大いに苦労した。最初に標準装備化したBMW(2003年から)は、元がスポーティなだけに、後席に座ってると、路面の凹凸でケツが浮いて天井に頭をぶつけそうになったほどだ。今やしっとりシナヤカ〜だけど。

 レクサスLSは、BMWに遅れること15年。ついにランフラットを採用したわけだが、LSへの採用は、もう少し他のモデルで経験を積んでからにすべきだったのではないか!? なにしろレクサスLSといえば、カイテキであることが最大のウリのはず。ランフラット化を激しく望んでいたLSユーザーなんかいるのカー! これでいいのカー! 

バタバタしていてあまりの乗り心地の悪さに驚いたというレクサスLS。マイチェンで変えてくるのだろうか?

■アクセルを踏み込んでも1〜2秒反応しない先代パッソ/ブーン

 現行モデルも安っぽいという声は多いが、私に言わせれば、先代に比べたらずいぶんよくなっている。先代パッソ/ブーンはもっとダメだった。デザインも内装もとても安っぽく、「これなら軽のほうがイイヨ!」って感じだったが、一番問題があったのは、アクセルレスポンスの悪さだった。

 なにしろ2014年のマイナーチェンジ後の1Lモデルは、アクセルを床まで踏み込んでも、とっても遅い加速が始まるまで、1〜2秒ほとんど反応しなかったのだ。

 その理由は、現行モデルへのフルチェンジ時、開発陣に話を聞いてようやく判明した。
「先代パッソ/ブーンは、運転に不慣れな方が間違ってアクセルを深く踏み込んでしまっても、すぐにはガソリンが送られないようにすることで、燃費の向上を実現していました」(要旨)

 マジすか!? そういうの、アリなんスか!?

 まぁ実際、運転に不慣れな方が乗ってる確率は高いと思いますが、そういう方ほど、これじゃ高速道路で追越車線に出られないんじゃないかと心配になる。これでいいのカー!

アクセルを踏んでから1〜2秒たってやっと遅い加速をしていく、先代パッソ/ブーン

■なぜこれを日本で売ったのでしょうか? 日産ラティオ

 すでに2016年末をもって、国内ではご臨終となったモデルでして、いまさら生産終了モデルに鞭打つのもどうかと思いますが、あえて書かせていただきまする。
 先代パッソ/ブーンは「これなら軽のほうが……」だったけど、ラティオは「なぜこれをニッポンで……」でした。

 ワタクシどものような仕事をしておれば、このクルマが中国やインドで、栄えある「サニー」を名乗っており、世界150か国で販売されているグローバルカーである、と知る機会もありましたが、フツーの日本人には、プロポーションが崩壊したアジアンカー(実際、タイ製ではありますが)に見えてしまい、まるで売れなかったわりに、国内における日産のブランドイメージだけを引き下げてくれたのではないか、と危惧するものであります。

 実際に乗ると、1.2L、3気筒エンジンは意外とトルクフル。気取らないアジアのレンタカーという風情で、ひょうひょうと走ってくれましたが、豊かさというものを知ってしまった日本人には、このチープさや、実用一本鎗のセンスのなさはキツかった。

 コンパクトセダン以外受け付けないご高齢の方や、どうしてもセダンじゃないとダメな営業車向けに、細々と販売されたモデルですが、いまだに「なぜこれをニッポンで……」と、首を左右に振ってしまうのであります。

ラティオは世界150ヵ国で販売され、中国やインドで名車、サニーを名乗っている

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