デジタルサイドミラーの普及には、まだ時間が必要
2016年の道路運送車両の保安基準が改定によって、日本でも解禁となったデジタルサイドミラー。冒頭でふれたように、最初に採用したのは、2018年10月に登場した7代目レクサスES。量産車では世界初でした。その後、電気自動車のアウデイ「e-tron」や、ホンダ「ホンダe」でも採用されました。
デジタルサイドミラーの機構は、バックモニターやデジタルルームミラーと同じ。広角CMOSカメラによって後側方を撮影し、ECUで映像を画像処理して室内のモニターに映し出します。大きなドアミラーを小さなカメラに代えることによって、空気抵抗が改善し、デザインの自由度も向上するほか、次のようなメリットもあります。
・ドアミラーより、視野範囲が2倍程度拡大、画像が明るいので夜間の視認性も向上
・カメラユニットがコンパクトになるため、死角と風切り音が低減
・モニターが室内にあるので、左右の目線の移動量が小さい
・水滴が付着しにくい構造で、またヒーターが装備されているので雨などの気候変動に強い
・高速走行時や左折・右折時、後退時など運転条件に連動して、視野範囲やズーム機能など自動制御が可能
一方で、システムコストが現行ドアミラーの約10倍と高いことからまだ普及に至るレベルではなく、他にも次のような課題もあります。
・小さな部分まで鮮明に映るため、通常の光学ミラーに比べて距離感やスピード感が把握しづらい
・条件によっては、LEDフリッカーと呼ばれる映像のちらつきが発生
・モニターを設置する場所の確保。レクサスESは、Aピラー下部に設置したため、後付け感が強く不評
基本的には優れた映像機能を持つデジタルサイドミラーですが、コストパーフォーマンスの観点からはまだ不十分、高級車では使えても、一般的に普及するにはもう少し時間がかかりそうです。
運転支援や自動運転との連携次第では、急速に普及も
デジタルサイドミラーは、優れた映像機能の他、クルマの後側方の情報をデジタル化できることが大きなメリット。高度な運転支援技術や自動運転のための有効な環境センサーとして活用することができます。例えば、周辺車両や歩行者、白線の検知による衝突回避機能や車線維持機能との連携したり、360°サラウンドビューカメラと組み合わせることで、自動運転に必要な周辺状況の認識にも使えます。
しかし、運転支援や自動運転にとって、デジタルサイドミラーが必須デバイスであるかどうかは不透明。現行の自動運転レベル2クラスでは、複数のカメラやレーダーが搭載されており、デジタルサイドミラーの代用は可能なので、不要となる恐れがあります。
また、最近日産などが採用しているスマート・ルームミラーでは、リアガラス内部にカメラを装着して、ルームミラーにその映像を映し出します。後席の乗員や荷物に遮られることなく、画像とそのデジタル情報が得られるので、視覚範囲と精度が十分であれば、デジタルサイドミラーの代用が可能となってしまいます。
このように、デジタルサイドミラーが将来的に生き残れるかは不透明ですが、普及のためには、まずは低コスト化が最優先課題でしょう。
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運転支援や自動運転の開発によって、カメラやレーダーなどのセンシング技術が急速に進化しています。場合によっては、デジタルサイドミラーを含めたサイドミラーそのものが、クルマには不要となることも考えられます。便利さを追求して、少しずつクルマの形態が変わっていくことには、寂しさも感じますが、この先どうクルマが変わっていくのかも楽しみ。さらなる技術の進化を期待しています。
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