■中嶋一貴が見据えるクリーンエネルギーレーシングカー
2025年からル・マンで始まる水素クラスについてトヨタがどう見ているか? そのあたりはご想像にお任せします。まぁ世の中に出ている情報を見ていただければ、というところかな(笑)。
それはさておき、昨年からハイパーカーになって、LMP1時代に比べればハイブリッドの活用の幅はルール的に少し狭まった部分はあります。でも現実的に世の中の自動車の選択肢として、やはりハイブリッドはまだまだ活用されていくと思います。
トヨタはパワートレインやエネルギー源をひとつに絞るのではなく、できる限りたくさんの選択肢を提供し、それを試し、幅広いニーズに対応しようとしている。
レーシングカーの開発を通してハイブリッド技術を鍛えるチャンスはまだまだあるし、それを市販車にフィードバックして良いクルマを作っていかなければいけない。トヨタがWECでハイパーカーを選んでいる理由は、そこに強い意義がありますし、その窓口でもあるTGR-Eの役割はとても大きいと思います。
もちろん利害関係も絡んできて、人間関係だけでは対処できない場面も多々あるでしょう。それでもオープンな気持ちで話をできるような環境を築いていくことが、僕の仕事の最初のステップだと思っています。
チーム代表の(小林)可夢偉との役割分担について、チームの強化は可夢偉の領域です。彼はドライバーとして走ることも多いので僕がフォローする場面もあるかもしれませんが、基本的に裏からいろいろ見て気になった点を拾い上げつなげていくのが僕の役割ですね。
レースは結果を出すことが第一で、そのために何が必要かをチーム全体で共有することが重要です。今季のプジョーだけでなく、来季からはライバルがドサっと来る。来季にむけて最大限準備をしていくこともミッションの一つです。
勝つためのハードルは何段も上がりますが、ある意味それは僕らが求めていたものでもある。ライバル達と一緒にレースを盛り上げていければと思っています。
■引退後の新しいチャレンジは大歓迎
現役で走っている頃から乗れるだけ乗って辞めた後どうするか、ハッキリしたイメージは持っていませんでしたが、この選択肢をいただいて考えました。自分は育成ドライバーとして世界を目指せる環境で育ててもらって、自分が持っている以上のものを引き出してもらい、それで現在がある。
いま日本の若者が海外で経験を積む機会はあまり多いとは言えない情況で、その機会があるとないとでは若者にとっても業界にとっても大きな違いがある。それなら自分にできることをやりたい、WECのチームには愛着があるし、WECというレース自体がもっと良い形で続けていけるような手助けもしたい。
湧き上がってきたそんな思いとコロナによる情況を考えあわせ最終的に自分で決めた選択肢だったので、完全引退してとてもスッキリしました。
以来、仕事のことや会社のこと、知るべきことで頭がパンパン。それを消化するのにけっこう時間がかかって日々いっぱいいっぱいという感じです。大変なことは会社の人に助けてもらいながらで、一人では無理だろうなと思う部分もたくさんありますが、お陰様で充実した毎日を過ごしています。
新しいチャレンジはウェルカム。経済だけでなく世の中の情勢についてもできる限り勉強し吸収していこうと思いますが、ちょっと脳ミソが……(笑)。まぁ人生はまだまだ長い。身体だけでなく頭も頑張って動かしたいと思います(笑)。
【画像ギャラリー】現在TOYOTA GAZOO RACING EUROPEの副会長を務める中嶋一貴の現役ラストラン(12枚)画像ギャラリー
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