世界的に深刻化している半導体不足の問題。各社の新車発表スケジュールにも遅れが出るなど、深刻化している。そんな問題の直撃を受けているのがホンダで、好調な販売を見せている新型ヴェゼルだそうだ。
ハイブリッドで半年以上の待ちで、ガラスルーフ仕様の「プレイ」に至ってはさらに延び1年待ちとなっているようだ。
なぜプレイだけそれほど影響を受けているのか? 現場も苦慮しているであろう納期が悪化している最新事情をレポートしていきたい。
文/遠藤徹
写真/HONDA
■プレイは一時生産中止! 人気のハイブリッドモデルは2月時点で9カ月待ちに
ホンダが2021年4月22日に発売した2代目の新型ヴェゼルが、2022年2月初め、納期が最長9カ月の状況になっていた。
最新の情報では、ハイブリッドの納期が1年待ち、ガソリン車は4カ月待ちと延びている。ディーラー取材によると、ガラスルーフ仕様の「PLaY(プレイ)」は、納期が読めないので”一次生産中止”として受注をストップさせているという。
首都圏を中心にホンダカーズ店を回って見ると、店頭にはヴェゼルのカタログ(車両&アクセサリー)は置いてあり、そこには「プレイ」はラインアップのひとつとして掲載されているが、別刷りの価格表には削除されており、注文ができないようになっている。販売の再開は明らかになっていない。
ヴェゼル自体の納期が遅れているのはサプライヤーからの半導体を中心とした部品の供給が遅れ、生産が滞りがちになっているためだ。
プレイについては専用ガラスなどの関連部品の供給がさらに遅れ、生産ができない状態になっているためと思われるが、ホンダカーズ店には詳細が説明されておらず、オーダー中止だけが伝えられている。したがって再開のめども立っていない状況にある。
ハイブリッドとガソリン車の納期の差はハイブリッドのほうが引き合いが多く、バックオーダーが余計に集中しており、半導体の関連部品が多いためと思われる。
ヴェゼルの登録台数は2022年1月実績で4294台と前年同月に比べて、88.5%もの大幅な増加となっている。台数そのものはホンダ車だとフリードに次いで2位番目で登録車の銘柄別ランキングは10位だから、まずまずのポジションといえる。
SUVクラスの納期はトヨタのヤリスクロス&カローラクロスが5カ月、ハリアー&RAV4が6カ月、ランドクルーザー300が4年、マツダCX-5とCX-30が4カ月、スズキ ジムニー&ジムニーシエラが2年などとなっているので、現存のSUV全体では3番手、クロスオーバー系SUVでは最も納期の長いモデルとなっている。
ヴェゼルの納期の長期化は商品性の高さも大きな要因のひとつとして上げられる。今回の2代目は主力の1.5Lハイブリッドを従来の1モーター&2クラッチ方式から、2モーターに切り替え、FF車のほか4WD車も設定、トランスミッションも7速DCTからCVTに切り替えたことで、燃費&走行性を大幅に向上させた。
エクステリアデザインは、オーソドックスなSUVシェルからスタイリッシュなボディシェル仕立てで、フロントマスクも個性的な大型横線グリルでまとめている。この横線グリルデザインは当初、あまりにも個性が強すぎる印象もあり好き嫌いが明確になり、全体の売れ行きにマイナスの影響が出る可能性も予想されたので、オプションで選べるほかのSUV車に近いグリルデザインの加飾用ユニットも用意したほどだった。
ところが最近ではこの個性の強いフロントマスクがライバル他車とのコンセプト分けが明確になり、このことでかえって人気が高まる要因にもなっている。したがって最近はこのオプション用グリルユニットの装着希望者は減少傾向にある。
今後、コロナ禍が収束し、ヴェゼル人気が需要一巡期に入れば、納期は次第に短縮し、1カ月以内程度で納まるようになれば納期遅れ問題は解消するものと予想される。ただ2022年後半になっても半年待ち以上が続くようだとホンダにとっては別の対応が必要になる。
2022年秋には新型クロスオーバーSUVの投入予定があり、こちらのスケジュール調整が必要になってくるからである。この新型SUVはヴェゼルとCR-Vの中間に位置する小型SUVといわれているが、同時に国内向けのCR-Vは生産中止となるので、事実上は従来CR-Vの後継モデルともいえる。
パワーユニットは1.5Lターボと2LハイブリッドでCR-Vと同じである。この時点で引き続きヴェゼルが好調で増産対応が必要となれば、新型SUVの投入と重なり、ヴェゼルの販売にもマイナスの影響が出る可能性が生じてくる。
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