■Part2 現代アート部門
イタリアは芸術の国。フィアット・ムルティプラやランボルギーニ・カウンタックをはじめとして、「なんだこれは!」と叫びたくなる、芸術的で難解なデザインのクルマは数多い。
一方で国産車にも、現代アート的なクルマはしっかり存在する。たとえば初代ジューク。ムルティプラ同様、ヘッドライトが上下4個あるように見える。国内ではその「なんだこれは!」なデザインが嫌われて不振だったが、海外では絶賛され、多くのフォロワーを生んだ。
三菱のダイナミックシールドも、その流れだ。eKクロスのインパクトある顔つきは、まさに現代アートそのもの。違和感の先に、無限のフロンティアが広がっている!
ヤリスの毒虫顔も、違和感タップリで現代アート的だ。毒虫が世界で絶好調なのだから、挑戦の勝利である。
超小型車のiQやツインも、ある意味「なんだこれは!」な芸術だ。その超寸詰まりフォルムは、スマートとは別種のチョロQ系。ここまで全長を短くすればアッパレだ。
そして日本は、カウンタックのように、ドアが上に開くクルマもちゃんと作っている。しかもサイズがメッチャ小さい! セラは登場時、世界最小のバタフライドア車だったが、AZ-1のガウルィングがそれを塗り替えた! こんなクルマ、日本以外、冗談でも作らないっしょ?
●現代アート機能美部門(初代パンダ系)
自動車デザイン界の巨匠・ジウジアーロ氏の傑作の系譜に、「折り紙細工デザイン」がある。初代ゴルフ(1974年)や、初代パンダ(1980年)がその代表。どちらも極限の合理性や機能性を追求した作品だった。
が、それから遅れること約20年。日本で、それを超える機能美デザインが誕生した。初代ワゴンRである。居住空間の上下方向への拡大を突き詰めたこのクルマは、軽トールワゴン隆盛時代を切り開いた、ジウジアーロもビックリの大傑作だ。
そのほか、初代パンダ系の機能美は、初代デミオ、2代目キューブ、ホンダe、あるいはイグニスなどにしっかり生きている。どれもフォルムはシンプルな箱型だが、よく見ればただの箱ではなく、移動する機械であることを主張している。かつ、小さいサイズでできるだけ広い居住空間を取ろうとしているのだ!
これらの傑作たちは、機能を突き詰めた先に美と実用性の両立があると教えてくれる。ジウジアーロ先生ありがとう。
●現代アート失敗(?)部門
現代アート的な驚きのあるデザインなら、なんでもいいというわけではない。挑戦には失敗が付き物だ。
スズキのX-90は、クロカン4WDとオープン2シータースポーツカーを融合した、野心的なクロスオーバーSUVだったが、あまりにも野心的すぎた。ヴェロッサは日本車の殻を破り、ダイレクトにアルファロメオ的な造形に挑戦したが、見事に散った。
そしてミラージュディンゴのフロントフェイスは、見た瞬間「えっ!!」とビックリさせる違和感にあふれている。当時あまりにも違和感が強すぎて、克服できる人が少なすぎた。いま見るとそんなに悪くないのですが!
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