ガソリンエンジン開発終了は本当か? 日本における電動車の時代を予測する!!

■EV化への世界の動き

 最近日産自動車がエンジン開発を終了するというニュースが流れたが、それは欧州向けに限ったことであるとしている。どのような経緯で全面開発終了というニュアンスの報道になったかは定かではないし、少々雲行きは怪しくも見える。

 2035年に内燃機関車の販売を全面禁止するEUのエリアは限定的にも見えるが、現状世界一の自動車市場である、世界で最もBEVが普及している中国も2035年に内燃機関車の全廃を打ち出している。

 しかし、世界第二位の市場となるアメリカのバイデン政権は2030年に新車販売総台数のうち半分をゼロエミッション車にするとしている。

 世界第三位の自動車市場となる日本は、2030年代半ばまでに、HEVやPHEV(つまり内燃機関を搭載している)も含み、電動車以外の販売を禁止するとしている(いまのところ)。

 日本を追い抜く日も近いとされているインドでは、2030年に完全車両電動化すると打ち出したあと、完全電動化ではなく全体の40%にするなどと勢いを失っている。ほかの諸外国でも「●●年までに」と車両電動化に関するアピールも聞かれるが、「言うだけタダ」的な雰囲気が漂うケースも目立っている。

 車両電動化では欧州に勢いがあるので、2035年に地球上から内燃機関車がなくなってしまうようなイメージも伝わってしまうが、いままでの話は新車販売についてであり、「2035年になったら乗ってはいけない」としているわけではない。

 欧州ではクルマを長く乗り続けることが多く、少し前に某大都市を訪れた時には町じゅうにディーゼル車の排気ガスの臭いが漂っていて驚いたことがある。

 どちらにしろ、地球レベルで見れば内燃機関車の新車販売を全面禁止するまででも、時間を要することになるので、とくに後進国へ向けてのより燃費及び環境性能の高い内燃機関の開発はさらに重要性が増すように感じてならない。

 新興国や後進国でも“地球環境保護”との名のもとに、気候変動対策やSDGs(持続可能で多様性のある社会の実現へ向けた17の目標)への取り組みへの積極的参加が国際社会から求められている。

 しかし、それらの国々の一部からは先進国からの押し付けが強いとし、「新たな植民地政策のようだ」と感じるとの声も出始めている。そのような国々でも車両電動化へ向け活発に動く勢力があるというのだが、「環境性能に優れる内燃機関を開発及び製造できる日本勢へのけん制」と見る向きもある。

■日本のお家芸『HV系』はどうなる?

三菱 アウトランダーPHEV。小林氏いわく「PHEVでは十分勝機がある」とのこと。そのうち欧州で「PHEVも継続販売OK」となれば……?
三菱 アウトランダーPHEV。小林氏いわく「PHEVでは十分勝機がある」とのこと。そのうち欧州で「PHEVも継続販売OK」となれば……?

 最新の日系PHEVに複数試乗すると、その優秀性に舌を巻いた。BEVでは出遅れムードが目立っているものの、PHEVでは十分勝機があるなと感じた。それも、HEVを数多くラインナップし、さらに効率の良い内燃機関を開発できるからといっていいだろう。

 だからこそ、欧州や中国はBEVにこだわっているのかもしれない。LNG発電の例ではないが、そのうち欧州で「PHEVも継続販売OK」となれば、見えてくる風景はかなり変わってくることになるだろうが果たして……。

 環境だけでなく人体に有害ともされた“有鉛ガソリン”の販売が地球上で全面的に廃止となったのは2021年、つまり“つい最近のこと”なのである。この例を見れば地球レベルで車両電動化を進めるためには、相当腰を据えなければならないだろう。

 日本国内での車両電動化の動きは、“風任せ”といった雰囲気が強いのだが、政府では“はたらくクルマ”の車両電動化へも購入補助をするなど、スローペースながら進んできている。しかし、日系モデルのPHEVやとくにBEVのラインナップ不足はまだまだ目立っている。

 トヨタやスバルから登録車規格のSUVタイプBEVが、日産や三菱から軽規格のBEVがすでに年内に発表予定となっており、2022年を“日本における電動車普及元年”と称する動きもある。しかし、ラインナップが充実し、購入補助金などが充実してもそれだけでは普及はなかなか進まないだろう。

 夏に記録的な猛暑となった時の冷房多用や、冬の大寒波襲来での暖房に(トルツメ)多用などへの電気使用量の増大で、電力供給がひっ迫し余力のある電力会社から融通してもらうというのはよくある話。巷ではこの話を持ち出して、「このような状況で電動車を増やして大丈夫なのか?」といった話はよく聞く。

 車両電動化への動きは、自動車産業の100年に一度の大変革のひとつともいわれている。長らく化石燃料に頼っていたのを、ここまで車両が普及した段階で、電動車へ変換していくのだから、ことは自動車産業だけでなく、各国のエネルギー供給体制にもかかわってくる。

 さらにいままでの化石燃料由来の発電では、出口が違うだけで、CO2は排出され続けることになる。

 では原発を増やしてとなりそうだが、日本だけを見れば、原発を増やすどころか休止している原発の再稼働することすら難しい。車両電動化よりも、化石燃料による発電をゼロエミッションの発電へ転換するほうが、かなり大変に思える。

次ページは : ■国内でのEVへの興味は深いが……

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