EV時代でむしろ復権!? 日本と世界で開発進む「モンスター級」スポーツEVたち

■800Vと多段ギアこそがスポーツEVでのキーとなる

ポルシェ ミッションR。900Vシステムを使うポルシェミッションR。バッテリーは82kWhでモーター出力はフロント:320kW、リア:480kWでトータル800kW(1088ps)
ポルシェ ミッションR。900Vシステムを使うポルシェミッションR。バッテリーは82kWhでモーター出力はフロント:320kW、リア:480kWでトータル800kW(1088ps)

 ここで注目したいのが、「動作電圧800V」という点だ。

 現在国内販売されるEVはバッテリー電圧350V前後。以前、EVの動作電圧は400V以下に規制されていたが、現在では1000Vに拡大している。ポルシェタイカンは800Vを採用する。

 本誌でもおなじみの水野和敏氏はこう解説する。

「ポルシェの800Vシステムは日立のインバーター技術がベースになっている。400V以下であれば弱電メーカーでも取り扱えるが、800〜1000V級になると重電メーカーでないと扱いきれない。日立などは2万〜2万5000Vで動かす鉄道車両の制御技術も扱っているので、1000V程度はお手のものなのです」と。

 さらに水野氏は「高電圧の800Vシステムを採用することで電流が小さくなる。これによりモーターの巻き線を細くすることができ、小型軽量化しながら高出力化が可能。

車体側の配線を細くすることができるので、スペース効率もよく、また軽量化にもなる。電流が小さいので発熱も小さく、冷却システムも小型化できるのです」と800Vシステムのメリットを説く。

 さらに多段ギアの組み合わせもスポーツEVには不可欠となる。STI E-RAが搭載するヤマハのモーターユニットにもギアが組み合わされているし、ポルシェタイカンも2段ギアが組み合わされる。

「モーターの効率は6000〜7000rpmが頭打ちで、それ以上回しすぎると、モーターの回転力そのものが抵抗になって効率は大きく落ちます。

今の国産EVは多段ギアの組み合わせはなく、高速道路を走ると1万回転以上でモーターが回ります。これではトルクは出ないし、電力消費量も大きくなってしまいます」と水野氏は指摘する。

 現在、航続距離を延ばすためには大容量バッテリーを搭載することが早道だが、これはコストアップになるだけではなく、重量増加にもなる。

 さらに、バッテリー製造時のCO2排出を考慮すれば環境負荷も大きい。

 さらに、大容量350Vバッテリーだと、充電時の時間も長くなる。多段ギアを組み合わせて巡航時のモーター回転を抑えれば、バッテリー容量を大きくすることなく航続距離を延ばすことが可能。

 重量的にもバッテリー増量抑止分とギア搭載分でのプラマイはほぼ変わることはないし、コスト的にも吸収可能と水野氏は言う。

 それに、なにより多段ギアが組み合わされることでドライブ感覚が俄然スポーティになる効果も大きい。ポルシェタイカンを走らせると、加速途中にギアが切り替わった瞬間、モーター回転に変化が生じ、エンジン車で加速していくあの感覚を呼び起こす。

 3年ほど前、水野さんも開発に関わったという、浜松の駆動系ユニットメーカー、ユニバンスが開発中の、ハイ/ローギアを組み合わせた駆動ユニットを前後に搭載した試作モデルに試乗したことがある。

 走行状況に応じて複雑にモーターとギア段を組み合わせた制御により、小気味よく走れる気持ちよさを実感した。

 このシステムは1ユニットわずか30kWで、前後に2基搭載してもトータル60kWにすぎないが、エンジン車で言えばマツダロードスターのような、小排気量ライトウエイトのような感覚を楽しめた。これはギアによるモーター回転の「オイシイところ」を活かしたメリットだ。

 EV時代へシフトしていくなか、特に欧州ではイメージリーダー的にスポーツモデルが華々しく存在をアピールしているという部分もあるが、800Vシステム、さらに有段ギアの組み合わせによるスポーティなドライブフィールもEVスポーツカーを後押しする重要な技術となっているのだ。

 国産EVも、この先、スポーツモデルを投入するのであれば800V化&有段ギア搭載に期待したい!!

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