■成功と失敗から導き出される「ホンダの方程式」
一方、トヨタは「良いクルマ造り」ではなく「売れるクルマ造り」を優先させる。この典型がアルファードだ。
現行型はホイールベース(前輪と後輪の間隔)の拡大を含めて、プラットフォームに手を加えた。床を大幅に下げて乗降性を向上させ、低重心化することも可能だったが、それは行っていない。厚みのあるフロントマスクを備えた立派な外観、周囲の見晴らし感覚を重視したからだ。
表現を変えると、ホンダは「良いクルマ造り=売れるクルマ造り」の成り立つ商品では成功する。この代表は往年のスポーツモデルだ。重心の低い高剛性ボディやハイパワーエンジンの搭載は、良いクルマ造りであり、なおかつ売れるクルマ造りでもあったから成功した。
そこではホンダが得意とする提案型の商品も喜ばれた。例えば高回転域までビュンビュン回るVTECなど、ユーザーの予想を超える提案型の機能だった。
提案型を含めて、このような分かりすい商品開発で人気を得られた時代良いが、今は難しい。ミニバンのように「良いクルマ造り」と「売れるクルマ造り」が異なるカテゴリーもあるからだ。ホンダは判断を間違えやすい。
その意味で唯一の、そして最大の例外として成功したのが、軽自動車のN-BOXだ。初代N-BOXは、4代目ステップワゴンが売られていた2011年に登場して、売れ行きを急増させた。
今では国内で新車として売られるホンダ車の30%以上がN-BOXで占められ、N-WGNなどを加えた軽自動車全体では50%を軽く超える。そこにコンパクトなフィット、フリード、ヴェゼルも含めると、ホンダ車全体の85%前後に達するのだ。
N-BOXが従来のホンダ車とは対称的に市場指向を突き詰めて、大ヒットしたことで、ホンダ車の流れも変わった。
ホンダのブランドイメージが影響を受けてダウンサイジングしており、軽自動車とコンパクトな車種だけで国内販売の85%を占める。ステップワゴンやシビックは、すべて「残りの15%」に入るから、売れ行きを伸ばすのは難しい。
このままではステップワゴンは先代型と同様に売れ行きを低迷させ、オデッセイに続いてCR-Vやインサイトも終了すると、いよいよホンダは小さなクルマだけのメーカーになってしまう。
「日本の市場はそれでイイ」と諦めるのか。それもひとつの行き方だが、ホンダは根本的にコストを抑えたスズキやダイハツとは違う。国内市場は採算性のきわめて悪い市場になってしまう。この結末はユーザー、販売会社、メーカーにとって不幸だろう。
そこで現状を打破するなら、まずはステップワゴン・エアの装備を充実させることから始めたい。「残りの15%」の中で、最も売れる見込みのあるステップワゴンを伸ばすべく、SUV風のステップワゴンクロスター、スポーティなモデューロXなどを加える。
シビックには、タイプRとEXの間に位置するRSを設定する。高回転指向の1.5Lターボエンジンにクロスレシオの6速MTを組み合わせて、電動化時代の直前だからこそ、シビックで最後の花を咲かせる。
このような情緒的な心意気を持たないと、ホンダが今のダウンサイジングに抗するのは難しい。ホンダは、良くも悪くも、トヨタにはなれないからだ。
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