「E-TECH」は日本に適さないシステム。いっぽう欧州では?
この「E-TECH」の日本導入の可能性は、残念ながら低い。このパワートレインが、非常にぜいたくな内容になっているためだ。
日本と欧州では走行環境や速度レンジが大きく異なる。欧州では、ひとたび市街地を脱出すれば、140km/h以上で巡行する高速道路や、郊外路でも100km/h近い速度で巡行する環境が続く。日産のe-POWERのようなシリーズハイブリッドは、欧州のような環境で高速走行をすると、エンジンがかかりっぱなしの状態となってしまい、燃費が伸ばせない。市街地での燃費を伸ばし、なおかつ高速走行時での燃費を伸ばすためには、ルノーが開発したギアボックスのようなハイブリッドが重要な意味をもつようになる。
日産は日本市場の特徴を考え、「エンジン=発電機」と割り切ったe-POWERとしたことで、リーズナブルに顧客へと提供できる道を選んだ。トヨタのTHS-IIや、ホンダのe:HEVのようなシリーズ・パラレルハイブリッドも、高速走行時にはガソリンエンジン走行モードとなるのだが、それもギア比固定で採用している。超高速域での燃費改善は必要としないためだ。
日産はBセグから撤退するのでは!?
だがいっぽうでは、欧州日産はCMF-C/Dプラットフォームの新型キャシュカイや新型エクストレイルに、発電用エンジンにVCターボを採用した「e-POWERターボ」を採用すると公表している。つまりe-POWERでも、セッティング次第ではやれないわけではないということだ。
では、なぜジュークにe-POWERを採用しなかったのか。その理由は、超激戦区であるBセグメントで、日産が結果を残せていないことにあると筆者は考える。2021年のジュークの販売台数は約6.2万台、マイクラは約3.5万台だ。同じくBセグメントのルノークリオは約19万台、BセグSUVのキャプチャーは約16万台と、ルノーの3分の1程度となっている。
※参考:2021年 欧州年間販売台数
BセグSUV ニッサンジューク 6万2535台
Bセグコンパクト ニッサンマイクラ 3万6340台
Bセグコンパクト ルノークリオ(ルーテシア) 19万9889台
BセグSUV ルノーキャプチャー 16万2138台
CセグSUV ニッサンキャシュカイ 11万3276台
欧州日産は、Aセグメントに近いサイズのBセグコンパクトカーとして、バッテリーEVの新型マイクラを予告している。おそらく日産は、超激戦区のBセグメント市場からは撤退し、Aセグメントのマイクラ、そして初代キャシュカイが切り開いてくれた欧州Cセグメントで生き残ろうとしているのではないだろうか。
ジュークとしては、まさに生き残りをかけたといえる、今回のハイブリッドモデル。はたして起死回生となるか、今後の展開が楽しみだ。
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