ルノーが独自に開発したハイブリッドシステムである「E-TECHハイブリッド」。ルノーは、今春登場するクーペクロスオーバー、新型アルカナを皮切りに、この「E-TECHハイブリッド」を搭載したモデルを、順次日本市場に導入することを発表しました。
この「E-TECHハイブリッド」は、ルノーが得意とするF1のハイブリッド技術をベースにしたシリーズ・パラレル式ハイブリッドであり、ルノーとアライアンス関係にある日産のe-POWERとはまったくの別物。E-TECHハイブリッドとはどのようなシステムなのか、その構成と特徴について考察します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:ルノー、イラスト:著者作成
電動化技術とF1技術との融合
ルノーは、欧州メーカーの中では最もバッテリーEV(BEV)に積極的に取り組み、一方でF1についても輝かしい実績を残しているメーカーです。すでに欧州市場では、2020年より「E-TECH」を搭載した「クリオ」や「キャプチャー」が投入されており、冒頭で触れたように、日本にも今春のアルカナを皮切りに、順次導入するとしています。
E-TECHハイブリッドは、発電用モーターと駆動用モーターの2つのモーターと、F1で採用されているユニークなドグトランスミッション、大容量のリチウムイオン電池で構成されるシステムで、トヨタのTHS-IIやホンダのe:HEVと同じ、シリーズ・パラレル(以降、シリパラ)方式です。
シリーズ方式とパラレル方式を融合させたシリパラ方式は、エンジンの出力を発電用と駆動用に使い分け、エンジンとモーターの駆動力を合成して走行します。効率は高いですが、システムが複雑で高コストなのが課題です。ちなみに日産のe-POWERは、エンジンを発電専用として、充電したバッテリーの電力でモーター走行するシリーズ方式です。
F1のハイブリッド技術を活用して、エネルギーの回生と分配を最適化
このE-TECHハイブリッドの特徴は、F1で採用されている「MGU-K(運動エネルギー回生)」とドグトランスミッションです。
MGU-Kは、トヨタTHS-IIやホンダe:HEVといったハイブリッドでも採用している、減速エネルギー回生システムと同じ働きをするもの。エンジンと連動するM/G(モーター/発電機)を搭載して、ブレーキ時や減速時に発電し、その電力をつかって加速時などにモーターアシストするシステムです。
他メーカーのハイブリッドシステムと同じように、E-TECHも、エンジンを極力起動せずにスタートします。走行後は、減速時にエンジンで発電しながらバッテリーを充電しつつ、その電力を使って広い運転領域でモーター走行しますので、走行感覚はバッテリーEVに近いフィーリングだと考えられます。
一方、強い加速では、エンジンは発電でなく駆動力として使用してモーターでパワーアシスト、高速運転では基本的にエンジンが力強い走りを実現します。通常の市街地走行の80%程度はバッテリーの電力のみでモーター走行するように制御され、WLTP市街地サイクルではガソリン車に比べて燃費が40%も向上するとされています。
もうひとつの特徴であるドラッグトランスミッションの詳細については後述しますが、同じシリパラ方式のハイブリッドであるトヨタTHS-IIとホンダe:HEVは、トランスミッションを搭載していません。このトランスミッション搭載の有無が、ルノーとトヨタ、ホンダのハイブリッドコンセプトの大きな違いとなっています。
コメント
コメントの使い方ホンダ e:HEVは,シリーズ型であり,シリーズ・パラレル切り換え型では,ありません。シリーズ型は,エンジン→発電機→(蓄電池)→駆動モーター と経由するため,電気的な損失が5~10%あります。スプリット型と比較すると,街乗りでは,回生量が大きいので,あまり差が出ません。しかし高速走行では,回生頻度が低く,車両重量が重いため,燃費としては,20%くらい悪化します。