2020年6月の登場から、9か月が経過した日産 キックス。発売当初は、コロナ禍の影響やタイ生産という特有の事情などにより納期が大幅に遅れたため、登録台数が伸びなかったものの、その後解消。直近の登録台数は、2021年1月が4667台、2月が5059台と、まずまずの売れ行きとなっている。
キックスといえば、思い起こされるのが、2019年に惜しまれつつ生産終了となった、コンパクトSUVの「ジューク」だ。
ジュークの国内販売終了のニュースが流れた際、「(国内のラインナップから)ジュークと同クラスのSUVがなくなることはない」との日産関係者のコメントが報じられたが、この「ジュークと同クラスのSUV」として登場したのが、キックスだった。
しかし、当のジュークは、ご存じのとおり欧州では2019年9月より2代目へとモデルチェンジを果たしており、欧州市場での2020年の販売台数は5万8402台と、なかなかの売れ行きだ。
本稿では改めて、日本では“幻の新型”となった2代目ジュークについて振り返りつつ、初代からの進化、日本に導入されたキックスとの違いについて、考えていく。
文/吉川賢一、写真/NISSAN
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■「走り」の性能は飛躍的に向上

「ブサカワ」というか「キワモノ感」が強かった初代ジューク。2代目ジュークでは、そのキワモノ感は影を潜め、シャープなクロスオーバーSUVへと進化した。
初代譲りの丸型ライトなど、基本的には初代ジュークのキープコンセプトではあるが、ボディサイドのキャラクターデザインや大きなVモーショングリル、シャープなテールランプなど、ずいぶんと洗練された印象を受ける。
どのSUVにも似ていないデザインは魅力で、「普通にカッコ良い」というのが、筆者の印象だ。
ボディサイズは、全長4210(+75)mm×全幅1800(+30)mm×全高1570(+25)mm、ホイールベースは2636(+106)mmと、全体的にひと回りほど大きくなった(※カッコ内は初代ジュークに対する差)。
C-HRに対しては5mm広い程度ではあるが、現行ヴェゼルと比較すると40mmも幅広く、全幅1800mmという大台にのっているため、日本のコンパクトSUVたちよりも幅がちょっと大きめだ。
■基本骨格もルーテシアと同じ新型に刷新

この2代目ジュークに使われているCMF-Bプラットフォームは、欧州でVWゴルフに次いで人気のあるコンパクトカー「ルノー クリオ(日本名:ルーテシア)」にも使われているプラットフォーム。
日本よりも常用スピードレンジが高い欧州向けに開発された、ルノー日産の次世代上級小型車向けプラットフォームであり、車体剛性の向上や高剛性サスペンションなどにより、走行安全性と快適性、質の高い走りを狙って開発されたものだ。
初代ジュークはVプラットフォームであった。2010年の現行マーチ(K13型)から使用が始まった、ちょっと古めのプラットフォームであり、2代目ノート(E12)、2代目ラティオ(N17)など、「小型のFF車で安めのクルマ」が対象だ。
これを考えると、ジュークは2代目で、走りの性能が飛躍的に向上しているはずだ。
パワートレインは、初代ジュークにあった排気量1.6L直4ターボがなくなり、2代目は排気量1.0L直3ターボへとダウンサイジングされている。トランスミッションは7速DCTもしくは6速MTだ。
なお現時点では、e-POWERはラインナップになく、欧州市場で初のe-POWER搭載車となるのは、3代目キャシュカイになる模様だ。
さらには、空気圧モニタリングシステムや6つのエアバッグも備え、ボリュームのあるフロントシートには、ヘッドレストの左右にBOSE製スピーカーが装備されており、ドライバーを包み込むような極上のサウンドを提供するなど、インテリアも凝っている。