■グリルレスのワンダーシビックの美しさが光る
シビック3代目(ワンダーシビック)、4代目(グランドシビック)、5代目(スポーツシビック)と、インテグラ2代目、3代目。すべて非常に低いボンネット先端部を持ち、ラジエターの空気取り入れ口をバンパー下に集約したグリルレス車だが、どれもシンプルかつスタイリッシュで、ホンダらしく権威を捨てたチャレンジスピリットを表現することに成功していた。特にワンダーシビックの美しさは、今見てもホレボレする。
が、1990年代後半に入ると、同じデザイン手法は通用しなくなり、ホンダからもグリルレス車が消えていった。それをある意味復活させたのが現行フィットだ。バンパーより上の空気取り入れ口はかなり小さく、かつてのワンダーシビックを髣髴とさせたが、予想外の販売不振に喘いでいる。やっぱりグリルがないとダメなのか?
■デザインは決して悪くはなかったマツダランティス
マツダ系のスタイリッシュなデザインで、狙いは「脱権威」「スポーティ」「カジュアル」といったあたりにあったが、販売的には失敗に終わった。デザインは決して悪くなかったが、アピールできなかった。
■トヨタは意外に少ない。3代目ソアラと4代目、5代目のスープラ
トヨタは3代目ソアラ、スープラ4代目(A80型)、現行5代目。主に北米向けのスポーツカーで、全体を北米好みの濃厚味に仕立ててある。どれも北米では成功したが、3代目ソアラは日本では大不評に終わった。一方、スープラはまずまずだった。
こうして見ると、グリルレスで成功したのは、レトロデザインのBe-1を除くと、すべてスポーティカーあるいはスポーツカーであることがわかる。ボンネットのフロントエンドを低くすることで、空気の下に潜り込むようなイメージのスポーティなグリルレス車ならば、成功する可能性はあるが、そうでなければほぼ失敗に終わっている。
ただ、範囲をリアエンジン車に広げると、スバル360やマツダR360クーペのような傑作が現れる。エンジンが後ろにあるのだから、フロントグリルはないのは当然で、フロント形状は自動的に先端が低くなる。つまり、そうでなければグリルレスは不自然な形状に見えてしまうということだ。
輸入車でも、RRの元祖ビートルやポルシェ911が大成功だったのは言うまでもない。フィアットのヌオーバ500も成功した。
元祖ビートルをモチーフにしたニュービートルや、現行フィアット500はともにFFだが、元祖をモチーフにしているため、どちらもグリルレスで成功した。しかしこれらはレトロカーであり、純粋な「グリルレスの成功例」とは言えない。
■奇跡的にグリルレスに成功したテスラモデル3
こうして考えていくと、テスラモデル3が成功しているのは、ある意味奇跡的な出来事のようにも思える。テスラでも、モデルSとモデルXは薄いグリル風の装飾を持っているが、モデル3は、いかにもグリルがハマりそうなフロント部に一切なんの装飾も付けず、そのまま一続きのボディにすることで、絶妙な違和感を演出している。
それはまるで、ピッタリしたボディスーツを着ているかのようで、逆に人の視線を引き付け、EVであることをアピールしているのだ。モデルY、サイバートラックも同様である(新型ロードスターはスーパーカー系なので、デザイン条件が異なる)。
テスラだけがグリルレスの呪い(?)を無視し、成功を手にしていると言えるのではないか。逆に既存の自動車メーカーは、EVでもグリルの呪縛から逃れられていない。
ただトヨタは、2021年12月のEV大お披露目会見で、レクサスの新型EVのコンセプトモデルを4台見せた。それらはすべて、スピンドルグリル風のフロントフェイスを持ちながら、あるべきところにグリルのない「スピンドルボディ」を採用しており、レクサスらしさとグリルレスの斬新さを併せ持っていた。
デザインでEVの未来を占うことはできないが、今後、レクサスがEV業界でテスラに挑戦状を叩きつける一番手になるのかも……という、ぼんやりとした期待は抱かせてくれた。
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