■新型ステップワゴンの売れ筋グレードは?
ホンダの販売店に売れ筋グレードを尋ねてみると、「1位はスパーダ、2位は最上級のプレミアムライン、3位はエア」との返答だった。
この販売順序には、各グレードの装備内容も影響を与えている。
「エア」は装備がシンプルで、後方の並走車両を検知して知らせる安全装備のブラインドスポットインフォメーション、合成皮革を使った上級シート表皮、2列目シートのオットマン(7人乗りに装着される足を支える機能)、電動開閉式リアゲートなどをオプションでも装着できない。
販売店も「エアは装備が簡素だから、大半のお客様がスパーダにグレードアップする」という。
これは新型ステップワゴンが抱える重大な矛盾点だ。
新型ステップワゴンは「ミニバンを購入するお客様の70%は、存在感の強いオラオラ系の外観を好む」としながら、残りの30%をねらってフロントマスクなどをシンプルに仕上げた。
その目的は、ライバル車となるヴォクシー&ノアとの真っ向勝負を避けることだ。ヴォクシー&ノアの外観は、存在感の強いオラオラ系だから、新型ステップワゴンはシンプルな路線を選んだ。
このコンセプトに基づけば、新型ステップワゴンでは、外観が馴染みやすいエアこそが主力グレードになる。そこに共感を得たユーザーが購入を考えた時、肝心のエアで必要な安全装備を装着できなかったら、購入を諦めることも考えられる。
また「装備を充実させるために、中途半端なステップワゴンのスパーダを買うなら、精悍なカッコ良さを突き詰めたノアやヴォクシーのエアロ仕様を選ぶ」という判断も成り立つだろう。
■新型ステップワゴンの装備 ※販売店調べ
●エア
・ホンダセンシング
・後方誤発進抑制機能
・近距離衝突軽減ブレーキ
・トラフィックジャムアシスト
・フルLEDヘッドランプ
・オートハイビーム
・両側スライドドアの電動機能
・16インチアルミホイール
など
●スパーダ ※エアの装備に加えて
・ブラインドスポットインフォメーション
・パワー(電動開閉式)テールゲート
・2列目シートのオットマン(7人乗りのみ)
・運転席&助手席シートヒーター
・トリプルゾーンエアコン
・コンビシート
・パドルシフト(1.5Lターボ)
など
●スパーダ・プレミアムライン ※スパーダの装備に加えて
・アダプティブドライビングビーム
・2列目シートヒーター
・17インチアルミホイール
・プレミアム専用シート&インテリア
・マルチビューカメラシステム
など
●オプション
・マルチビューカメラシステム:8万8000円
など
■「ターボ」か「e:HEV」どちらを選択すべき?
ちなみにノアの標準ボディには、X/G/Zという3グレードが用意され、最上級のZを選べば、価格が最も高いエアロ仕様のS-Zと同等の装備を得られる。
オラオラ系とされるノアでも、標準ボディを充実させたのだから、ステップワゴンが「エア」に力を入れる必要があるのは当然だ。
この矛盾点を踏まえたうえで、ステップワゴンのグレード選びを考えたい。
最初に行うべきは、ターボとe:HEVの選択だ。e:HEVのWLTCモード燃費は、売れ筋のスパーダで見ると19.6km/Lだ。先代型は20km/Lだったから、数値が若干悪化した。それでも実用燃費は向上している可能性がある。
1.5Lターボを搭載するスパーダ2WDのWLTCモード燃費は13.7km/Lだ。先代型は13.6km/Lだから、ターボの数値は少し良くなった。
そしてスパーダ(7人乗り/2WD)の価格は、ターボが325万7100円、e:HEVは364万1000円だから後者が38万3900円高い。ただしe:HEVは購入時に納める環境性能割と自動車重量税が非課税だから、税額は約13万円安い。
この金額を価格差の38万3900円から差し引いた約25万円が実質価格差だ。
そこでレギュラーガソリン価格が1L当たり160円とすれば(今の170円を上まわる価格は高すぎる)、ターボの1km当たりのガソリン代は11.7円、e:HEVは8.2円になる。e:HEVは1km当たり3.5円安い。
そうなると7万km少々を走れば、ガソリン代の節約により、約25万円の実質価格差を取り戻せる。
ヴォクシー&ノアハイブリッドの6万kmに比べると少し長いが、同様の計算を行って、実質価格差を取り戻せる距離が10万kmを軽く超えるハイブリッド車も多い。
新型ステップワゴンは短い部類に入り、e:HEVが割安と判断される。
そしてe:HEVでは、エンジンは主に発電機を作動させ、発電された電気を使ってモーターがホイールを駆動する。そのために電気自動車と同じく加速が滑らかだ。
モーターは瞬発力が強く、動力性能にも余裕が生まれる。燃費に加えて加速力や走りの質も向上するので、e:HEVを推奨したい。
注意したいのは4WDを選ぶ時だ。
e:HEVの駆動方式は2WDのみだから、4WDが欲しいユーザーは、必然的にターボを選ぶ。今のホンダはe:HEVの4WDに力を入れているから、今後ステップワゴンe:HEVにも追加される可能性がある。
e:HEVの選択が決まったら、次はグレードを決める。
前述の通りエアはリラックスできる雰囲気が魅力で、新型ステップワゴンを象徴するグレードだが、ブラインドスポットインフォメーション、2列目シートのオットマン(7人乗り)、電動開閉式リアゲートなどをオプションでも装着できない。
特にブラインドスポットインフォメーションは、車線変更時の事故防止に有効だから、なるべく装着したい。
e:HEVエアの価格は338万2500円(7人乗り)と割安だが、必要な安全装備を装着できないため、推奨グレードになり得ない。
ブラインドスポットインフォメーションは、なるべく早くメーカーオプションとして、エアにも設定すべきだ。
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