コロナ禍で一部グレード受注停止も、ヴェゼルが好調を持続する作り込みの秘密

■上質な内装と割安な価格も後押し

 内装も上質だ。インパネには横長のパネルが備わり、エアコンのダイヤルスイッチも含めて、ていねいに作り込んだ。

 特にe:HEV・Zとe:HEV・PLaYでは、内装の装飾類も豊富に採用した。ヴェゼルe:HEV・Zとe:HEV・PLaYの質感は、CR-Vを上回り、クラスを超えた印象を受ける。

 冒頭で「SUVはカッコよくて実用的なことから人気を高めた」と述べたが、同じことがヴェゼルという商品自体にも当てはまる。

 運転しやすいサイズなのに、車内は広く上質で、大げさにいえば「小さな高級車」風のプレミアム感覚も味わえる。居住性や走行性能も含めて、魅力を多彩に備えることで人気を得た。

 割安な価格も大切な特徴だ。車内が広く内装も上質で、1.5Lノーマルエンジンを搭載するGの価格は227万9200円に収まる(価格はすべて2WDで表記)。

 ハイブリッドのe:HEVを搭載したベーシックなXは265万8700円だから、ノーマルエンジンとの価格差を37万9500円に抑えた。

 ハイブリッドとノーマルエンジンの価格差が40万円以上の車種も多いから、ヴェゼルのe:HEVには割安感が伴う。

 しかもe:HEV・Xを買う時に納める税金は、ノーマルエンジンのGよりも約9万円安い。実質差額は約29万円に縮まる。

 このようにヴェゼルの価格は全般的に割安で、e:HEV・Xは、ノーマルエンジンのGよりもさらに買い得だ。

 そして中級のe:HEV・Zは、ベーシックなe:HEV・Xに、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーション、進行方向を照らすLEDアクティブコーナリングライト、ハンズフリーアクセスパワーテールゲート、フルオートエアコンの左右独立温度調節機能などを加えた。

 アルミホイールは18インチに拡大され、内外装の装飾も上級化している。

 これらのe:HEV・Zでプラスされた装備を価格に換算すると、約29万円に相当するが、価格の上乗せは23万9800円だ。

 e:HEV・Zは、ニーズの高い実用的な装備を豊富にそろえて、価格は289万8500円と割安だ。

■ホンダにはヴェゼルと同様「これで充分」と感じさせる人気車が多い

コンパクトなわりに居住性が広く、内装も上質、そして割安感ある価格と、ユーザーに「これで充分」と思わせる魅力を備えたのがヴェゼルの勝因と言える。そしてそれは、現在のホンダにユーザーが抱くであろうブランドイメージとも符号する
コンパクトなわりに居住性が広く、内装も上質、そして割安感ある価格と、ユーザーに「これで充分」と思わせる魅力を備えたのがヴェゼルの勝因と言える。そしてそれは、現在のホンダにユーザーが抱くであろうブランドイメージとも符号する

 以上のようにヴェゼルのグレード/装備/価格を見ると、ノーマルエンジンのGよりも、同程度の装備にハイブリッドを組み合わせたe:HEV・Xが割安だ。e:HEV・Zに上級化すると、買い得度は一層強まる。そのためにe:HEV・Zは販売比率も高く、ヴェゼル全体の76%を占める。

 総じてヴェゼルは、内装の質から価格の割安感までさまざまな要素を高水準に仕上げ、ユーザーは「これで充分」と実感できるから人気車になった。

 そしてホンダには、ヴェゼルと同様、「これで充分」と感じさせる人気車が多い。

 超絶的に売られている軽のN-BOXはその代表だ。軽自動車なのに車内は広く、内装も上質で、乗り心地や静粛性も満足できる。

 フィットも同様だ。全高は立体駐車場を使いやすい高さに抑えられ、視界の優れたボディで街中でも運転しやすく、後席の足元空間はヴェゼル並みに広い。シートアレンジも充実させて、価格は割安だから人気を得た。フリードも然り。

 これらのホンダ車は、「幅広い機能を両立させた買い得車」という点で共通する。

 そのために2021年におけるホンダの販売状況を見ると、国内で売られた新車の33%がN-BOXだった。N-WGNなども加えた軽自動車全体では53%に増えて、ヴェゼル、フィット、フリードも加えると84%に達する。

 今のホンダの国内販売は、排気量が1.5L以下の車種で完結しているのだ。

 その結果、ホンダのブランドイメージもコンパクトになった。

 かつてはシビックやスポーティなプレリュード、その後はオデッセイやCR-Vに移り、今は軽自動車とコンパクトな車種が支える。

 ヴェゼルが堅調に売られる背景には、ボディが小さなSUVだから、ホンダのブランドイメージに適している事情もある。

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