■いま、日本市場で売れているホンダ車は軽自動車やコンパクト車ばかり
ホンダが新型インテグラの国内販売に消極的な背景には、今の国内状況もある。今日のホンダのブランドイメージは「小さなクルマのメーカー」になり、新型インテグラのような車種を売りにくくなったことだ。
2021年(1~12月)に国内で新車として売られたホンダ車の内訳を見ると、全体の33%をN-BOXが占めた。2022年1月(単月)には、N-BOX比率が40%の大台に乗った。N-WGNなども含めると、2021年に国内で新車販売されたホンダ車の53%が軽自動車だ。2022年1月は57%に達した。
このような具合だから、軽自動車の届け出台数に、小型車のフィット/フリード/ヴェゼルの3車種を加えると、2021年に国内で売られたホンダ車の85%に達する。ほかの車種は、すべて残りの15%に片付けられてしまう。
この販売格差が、今の国内で売られるホンダ車に、大きな影響を与えている。
■ミドルサイズ車は他社と真っ向勝負を避けたいという思惑
例えば2022年2月に販売店で受注を開始した新型ステップワゴンは、フロントマスクのデザインがおとなしい。開発者は「ミニバンを買うお客様の70%は、存在感の強い通称オラオラ顔を好む。そこでステップワゴンは、シンプルでなじみやすい顔立ちの好きな30%のお客様に合わせた」という。
これはつまり、新型ヴォクシー&ノアとのガチでの競争を避けたわけだ。先代型のヴォクシー&ノアは、運転感覚から安全装備まで、すべてが遅れていた。プラットフォームの基本設計が古く、エンジン、ハイブリッド、各種の安全装備などを進化させられなかった。
そこで新型ヴォクシー&ノアは、多額の開発費用を投入してプラットフォームを改め、ハイブリッドは5世代目を新搭載して、2Lエンジンもハリアーなどと同じタイプに刷新した。
そうなると大量に売らねばならず、ノアのフロントマスクは、売れ筋路線のオラオラ顔で進化させた。ヴォクシーは個性化をさらに進めて、従来のミニバンに興味を持たなかった新たなユーザー層の獲得に乗り出した。
これだけでは弱いので、スマホを使って車庫入れの操作ができたり、渋滞時に手離しでも運転支援機能が作動したりする最新機能も盛り込んだ。従来型のヴォクシー&ノアは膨大に売れたから保有台数も多く、これらの先進装備を効果的に訴求すれば、新型への乗り替えも促しやすい。
新型ヴォクシー&ノアがここまで周到な開発を行うと、ステップワゴンとしては真っ向勝負を避けたい。そこで30%のユーザーを獲得する顔立ちに仕上げた。
■販売店も納得できない「オデッセイはなぜ消えた」
このほかのホンダでは、オデッセイが狭山工場の閉鎖に伴い、生産を終えてしまった。工場は商品を生産する設備だから、商品の終了に伴って工場を閉めるなら理解できるが、オデッセイは逆だ。
しかもオデッセイは、2020年11月にフロントマスクを大幅に刷新するマイナーチェンジを行い、2021年1~12月の対前年比は、218%の大幅な増加になった。1カ月の平均登録台数は1762台だから、クラウンやCX-5と同等に売られている。売れ筋価格帯が350万~450万円の高価格車としては、立派な売れゆきで、オデッセイを乗り継ぐユーザーの期待にも応えた。
それをマイナーチェンジの約1年後には生産を終えている。これについて、ホンダの販売店からは次のようなコメントが聞かれた。
「オデッセイは知名度が高く、愛着を持って使うお客様も多い。価格が高いのに販売は堅調だから、販売店の売り上げにも貢献している。従ってオデッセイをやめる理由がわからない。ステップワゴンのように、(寄居工場などに)生産拠点を移せばいいだろう」。
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