■「ハチロク」魅力のスペック
1970年代はトヨタの名エンジンといわれた2T-G型が人気の的だったが、この「ハチロク」の時代にはついに新開発のエンジンが搭載された。パワーの点だけでなく、いろいろな規制に対応せねばならず、やはり新開発エンジンが求められたのだ、という。
4A-GEU型と呼ばれる新エンジンは、愛称「レーザーα4Aツウィンカム16」と名付けられ、燃料噴射などの対策も施された新時代のエンジン、という印象であった。従来の2T-GEU型の115PSから10%以上アップの130PSにパワーアップしていた。
面白いのはシャシーで、実は四代目のシャシーを軽重化するなど改良の上、継続使用することで後輪駆動を実現していた。したがってフロントがマクファーソンストラット+コイル・スプリング、リアが4リンク+コイルという足周りは変わりない。
足周りをハードにチューニングしたレビンGTV/トレノGTVというモデルもあったが、基本的にパワーの方が足周りより勝っており、ドライヴィング・テクニックひとつで愉しく走れた印象がある。
2ドアと3ドアの大きく分けて2種のボディがあることは書いたけれど、これがまたレビンとトレノでそれぞれに趣向が凝らされていて面白かった。角形ヘッドランプ付のレビンには、温度で開閉する「エアロダイナミック・グリル」が、トレノはリトラクタブル・ヘッドランプで話題を呼んだ。
ブラック&ホワイトの2トーン塗装の3ドア・トレノが、例の漫画とともに特別人気になったのが記憶される。こうして「ハチロク」は忘れられない一台になったのだった。
【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)