■タイ市場で受け入れられつつある中韓メーカー
ほかに量販ブランドでは韓国系と中国系があるのだが、韓国系では起亜はほぼ大型ミニバンの“カーニバル”に絞り込んでいる。ヒョンデブランドも状況は同じで、スターリアという大型ミニバンをメインにしている。
“クレタ”という新興国向けクロスオーバーSUVもラインナップしているが、こちらはサイズが小さく、しかもFFのみとなっているのでカローラクロスやHR-Vのライバルとはならないだろう。
ただ、いままではミニバン一辺倒だったヒョンデが日本メーカーとの真っ向勝負を避けることになるが、クロスオーバーSUVをタイ市場に投入してきた意味は大きいように見える。グローバル市場では多彩なSUVをヒョンデはラインナップしているので、今後タイ市場にもカローラクロスと同クラスのSUVを投入してくる可能性は高い。
気になるのはやはり中国系の動きである。2014年にタイ市場に中国ブランドとして初めて参入した上海汽車のMGブランドでは、ZSというクロスオーバーSUVがカローラクロスクラスのモデルとされている。
1.5L直4エンジンを搭載しているのだが、このZSにはBEV(バッテリー電気自動車)となる派生モデル“ZS EV”が2019年よりタイでも発売され、バンコク市内でも多数見かけることができる。
またZSの上級でカローラクロスよりやや大きい“HS”というモデルもMGはラインナップしているが、こちらは1.5LエンジンベースのPHEV(プラグインハイブリッド車)をラインナップしている。
前出の事情通に話を聞くと、「日本のみなさんは中国車と聞くと、価格は安いが品質に問題があると思いがちですが、実際に運転してみると日本車とは遜色ない走行性能や品質を持っており、数カ月間乗っていましたが、とくに不満に思う点はありません」としている。
また「カローラ クロス、HR-VそしてZSとも、一定期間内の値落ちスピードは同じとなってます。そのため、新車価格がカローラ クロスやHR-VよりリーズナブルなZSは、ある年式までは中古車価格が買い得となるので、中古車人気も高くなっています。
かつてMG車なんかは相手にもされていませんでしたが、いまでは新車でも人気モデルとなっています」と説明してくれた。
さらに気になるのが2021年に、タイ市場を撤退したGMの生産設備などを買収する形でタイ市場に参入した、GWM(長城汽車)の存在である。ブランド自体2021年から参入したばかりの割には、MGほどではないもののバンコク市内及びその周辺でパラパラと見かけることができた。
「プロモーションもかねてGWMが街なかを走らせているのかもしれないが、それでもよく見かける」と前出事情通は話すが、街なかでよく見かけることには間違いない。
GWMも当然BEVをラインナップしているのだが、現状でタイ市場ではコンパクトハッチバックスタイルの“グッドキャット”のみ。それ以外に“ジョリオン”と“ハーバルH6”というクロスオーバーSUVをラインナップしているのだが、いずれも中国車としては珍しいHEVとなっている。
調べた範囲ではH6はマイルドハイブリッドユニットを搭載しており、GWMではやや世代の古いモデルなのだが、ジョリオンは内燃機関、BEV、FCEV(燃料電池車)などマルチに対応できる、“L.E.M.O.N”と名付けた新世代プラットフォームを採用し、ハイブリッドユニットを搭載している。
しかも、カローラクロスの最上級グレードが約455万円なのに対し、ジョリオンの最上級グレードの価格は約377万円と80万円ほど安くなっているのである。
ちなみにMG ZS EVの上級グレードの価格は補助金を差し引くと約386万円になるので、カローラクロスのHEV並みの価格(廉価グレード)でBEVを購入することが可能となっている。
ジョリオンに話を戻すと計器盤は全面液晶の大型ディスプレイを採用したフルデジタルタイプとなる、シフトは電子制御タイプを採用するなど、見た目ではカローラクロスをしのぐ先進的なものとなっており、質感もひけをとらないものとなっている。
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