スバルのシンボル「シンメトリカルAWD」抱える長所と大きな課題

優れた制御とクルマの特性に応じた様々なAWDシステム

 シンメトリカルAWDでは、クルマの特徴や特性に応じて様々なシステムが採用されています。以下に、最新の制御技術と3つのAWDシステムを紹介します。

・X-MODE
 雪道やぬかるんだ悪路でタイヤが空転した時に、4輪の駆動力やブレーキ力、エンジン&トランスミッションを総合的に制御して、タイヤの空転を抑えながらスムーズな走行ができます

・アクティブトルクスプリットAWD
 アクティブトルクスプリットAWDは、燃費と安定性を重視した基本的な電子制御AWDです。前60:後40のトルク配分を基本とし、走行状況に応じてリアルタイムに前後輪のトルク配分を制御。あらゆる走行状況において、AWDのメリットを最大限に引き出すシステムです

・VDD-AWD
 VDD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)は、センターデフによってトルクを前45:後55に不等配分して、旋回性能を高めた電子制御AWDです。適切なトルク配分によって、旋回時のスムーズなハンドリングを実現。また、走行状況に応じてトルク配分を連続可変するので、直進時にも安定した走行ができます

・DCCD方式AWD
 DCCD(ドライバーズ・コントロール・センターデフ)方式AWDは、WRX STI(MT車)といったスポーツ走行向きのスバル車へ採用されています。前41:後59を基本にトルクを不等配分した本格的モータースポーツ向け電子制御AWDです。レスポンスに優れたトルク感応機械式LSDと、電子制御LSDを組み合わせることによって、より大きな駆動力を発揮しながら、高い安定性を確保します

ただ、電動化が進む中では方向転換が必要

 優れた運動性能を誇るシンメトリカルAWDですが、前述したように、水平対向エンジンが全幅の制約から燃費に優れるロングストローク化が難しく、また、機構が特異なため、VVT(可変バルブタイミング)など、燃費向上技術が採用しづらいため、燃費の面ではハンディを負っています。

 スバルは2018年にハイブリッド「e-BOXER」をフォレスターに搭載しましたが、e-BOXERはマイルドハイブリッドであるため燃費向上は十分ではありません。十分な燃費向上を得るためには、フルハイブリッド化が必要となりますが、シンメトリカルAWDと水平対向エンジンの組み合わせは、レイアウト上、フルハイブリッド化が難しいことから、現在ラインアップにはありません。

 スバルは北米で、トヨタのプラグインハイブリッドを搭載した「クロストレックハイブリッド(2019~)」を登場させています(スバルXVのフルハイブリッド、国内未導入)。THS-IIを水平対向エンジンと共存させるため、THS-IIの向きを90度変えて組み合わせるという手法を取りました。やってできないことはないのですが、窮屈なエンコンレイアウトは、この先もスバルを苦しめることになるはずです。

 スバルは今年5月、トヨタと共同開発したバッテリーEV「ソルテラ」の受注を始めます。ただ、走りに特化したシンメトリカルAWDとそれによってブランドを構築したスバルが、バッテリーEVでも今後これまでのようなスバルらしさを発揮できるか、岐路に立っているといえます。

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 シンメトリカルAWDで4輪駆動を熟知しているスバルなら、自由度の高いモーターを制御してスバルらしいバッテリーEVをつくれると十分期待ができますが、近年の燃費低減や電動化の要求によって、ブランド構築の最大の立役者であったシンメトリカルAWDと走りのスバルの存在感は薄れつつあります。今後の電動化時代でどのようにスバルらしさを発揮するのか、スバルの今後に注目です。

【画像ギャラリー】電動化でどう変わる!?? 走りに特化したシンメトリカルAWDでブランド構築したスバルの国内ラインアップ(38枚)画像ギャラリー

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