■日本車は激しい価格競争が存在 反面、誰かが「降りれば」一斉値上げの可能性も
このコメントにある通り、売れ筋カテゴリーは価格競争も激しい。
例えば軽自動車では、N-BOX・Lの価格が157万9600円で、ライバル車のスペーシアハイブリッドXは153万3400円だ。ほぼ同じ価格で激しく競い合っている。
コンパクトカーならヤリスハイブリッドGが213万円、ノートe-POWER・Xは218万6800円、フィットe:HEVホームは211万7500円だから、全車のハイブリッドを搭載する買い得グレードが210~220万円に集中している。
趣味性の強い上級SUVも、新型のCX-60・25S・Sパッケージが299万2000円、ライバル車のハリアーSは299万円だ。
CX-60に直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボを搭載するXD・Lパッケージは400万4000円で、ハリアーに直列4気筒2.5Lハイブリッドを搭載するハイブリッドGは400万円になる。
2021年に国内で販売されたクルマは445万台に留まったが、販売規模の割に、売られている車種の数は多い。
そのために車種構成も過密になり、同じカテゴリーに属するライバル車同士が、限られたユーザーを巡って争奪戦を展開している。
そうなると値上げをすれば、即座に売れ行きを下げて競争関係から脱落してしまう。いわば我慢大会をしているようなものだ。
従って販売台数の多い有力車種が値上げすれば、ライバル車も「助かった~」とばかり、一斉に値上げする可能性がある。
■国内メーカーで値上げのきっかけを作れるのはトヨタだけ
それなら有力車種をそろえるのは、どこのメーカーかといえば、トヨタになる。
トヨタは一部のOEM車を除くと軽自動車を扱わないから、2021年に国内で登録された小型/普通車の52%をトヨタ車が占めた(レクサスを含む)。
小型/普通車の登録台数ランキングを見ても、上位にはヤリスシリーズ、ルーミー、カローラシリーズ、アクア、ライズ、アルファードなどのトヨタ車が並ぶ。
この点について、他社の商品開発者は以下のように述べた。
「値上げの切っ掛けを作れるのはトヨタだけ。他社が値上げすれば、それがニュースになり、価格を据え置くトヨタの引き立て役になってしまう。
価格に限らず、例えば燃費競争なども、まずトヨタが降りなければ、他社は引き下がれない」。
■一方で装飾や装備の簡素化による「見えない値上げ」も
以上のように日本車が値上げをするのは困難だが、過去を振り返ると、コッソリと分からないように実質的な値上げをすることはあった。一部改良やマイナーチェンジの時に実施されるコスト低減だ。
例えばステアリングホイールやインパネに装着されたメッキ装飾を廃止する、スピーカーの数を6個から4個に減らす、標準装着されていたバックモニターをメーカーオプションに変更するといったコストダウンが行われた。
これらの変更で節約できるコストは少額だが、逆にいえばクルマは薄利多売の商品で、メーカーや販売会社もそこまでコスト低減を迫られているわけだ。
販売店によると「これらのコスト低減は、同じ車種のクルマに乗り替えるお客様には、スグに分かってしまう。購入後にスピーカーの数が減っていることに気付かれると、叱られることもある」とのことで、有効なコスト低減対策ではないようだ。
それでも欲しい車種の一部改良やマイナーチェンジが予定されている時は、販売店に改良や変更点、価格について尋ねておきたい。
その内容に応じて、改良前の車両を買う方法もある。今まで使ってきた愛車がマイナーチェンジを行い、同じグレードに乗り替えて、もし装飾や装備が簡素化されていたら、ガッカリするのは当然だ。
コメント
コメントの使い方