大量生産で自動車の普及に大きく貢献「フォード T型」
一部の少数生産モデルを除き、自動車の組み立てが流れ作業で行われているのは広く知られている。効率良く製造を行えるこの方法を世界で初めてクルマの組み立てに取り入れて販売価格を抑え、なおかつ大量供給を可能したモデルがアメリカ・フォードのT型だ。
1908年、新興自動車メーカーのフォードモーターは、新型のモデルT(T型)を発表する。このT型は、当時としては高い部品精度を確保し、組み立て時の調整を省力化すると同時に新素材の積極的な活用などによって高性能を実現していた。さらに競合他社のモデルに比べて安価なことから、驚くほどの速さで販売実績を伸ばしていった。
この状況を見たフォードは、自社のモデルをT型のみに絞り、大量の発注に応えるためにベルトコンベアを使った流れ作業による組み立てを導入することを決定。自社の工場を流れ作業に対応できるよう増改築して、ついには月産2万台強を達成するのである。
T型フォードは1927年までに1500万台以上の売り上げを計上したが、これは後にフォルクスワーゲン・ビートルに破られるまで世界最高記録であった。なお、現在でも単一車種としては世界歴代2位の販売記録を誇っている。今日の自動車生産方式はフォード T型にルーツがあるのは間違いなく、その意味ではこのT型もまた、自動車業界への貢献度大と言える。
シフトチェンジ不要の楽々ドライブ「オールズモビル 1940年型」
現在の日本国内におけるAT(オートマチックトランスミッション)車の新車販売率はなんと99%! それほどまでに普及しているATだが、その歴史は意外に古い。
先に紹介したフォード T型も実はクラッチペダルのない2速セミオートマチック車ではあったが、変速操作は必要だった。その後も運転を容易にするオートマチックトランスミッションの開発は各社で続けられ、ついに決定版とも言うべきシステムが登場する。
最初にフルオートマチックトランスミッションを市販車に搭載したのはアメリカのゼネラルモーターズ(GM)だ。1940年、当時GMのブランドのひとつ、オールズモビル1940年型のオプションとして発売された「ハイドラマチック」は、現代のATにもつながるフルード式で、やがてトルクコンバーターを採用したATも登場する。その初採用車もやはりGMであり、1948年にビュイックのモデルに搭載された。
ヨーロッパをはじめ、現在でもMT車の使用率が高い地域はあるものの、日本は今やアメリカを押しのけてのAT天国になっている。こうした状況の源流は1940年型オールズモビルにあるのだ。
ディーゼルエンジン車の歴史は長かった? 「メルセデスベンツ D260」
燃費が良くて高トルク、さらに安価な軽油を使用するため燃料代も節約できるディーゼルエンジン。近年は排ガス不正問題もあって旗色が悪いが、優れた点の多いエンジン形式であることに変わりはない。
そんなディーゼルエンジンが市販乗用車に採用されたのが1936年。ダイムラー・ベンツの新型メルセデスベンツ260Dには2.6リッターディーゼルエンジンが搭載されていた。低燃費で耐久性もあるディーゼルエンジンを積んだ260Dは、主にタクシーに使用されてその能力を発揮した。
かつての“ディーゼル天国”ヨーロッパではEV化路線に戦略を切り替えているが、日本国内では環境性能の高いクリーンディーゼル車の人気がまだまだ高い。メルセデスベンツ260Dでの初採用から80余年、ディーゼルの進化はこれからも続いていくだろう。
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