電池性能の向上以外にもメリットは多い
全固体電池は、リチウムイオン電池と比べて、電池性能の向上以外にも次のような優位性があります。
・安全性が高い
リチウムイオン電池が登場した2010年頃には、発火の問題がクローズアップされました。しかし全固体電池は無機系の固体電解質を使用するため安定性が高く、発火のリスクは大きく低下します
・作動温度が広い
リチウムイオン電池は、低温と高温が苦手で、性能が低下します。低温では電解液の流動性悪化によってリチウムイオンの移動抵抗が大きくなり、高温ではセパレータが溶融するからです。全固体電池では、それらの問題が軽減するので、有効な作動温度が広くなります
・劣化が抑制される
リチウムイオン電池は、電極と電解液の反応や内部抵抗の上昇によって劣化が進みますが、電解液のない全固体電池では、それらの影響を受けづらいため、劣化が抑えられます
実用化されても、当面、採用は限定的に
以上のように、大きなメリットを持つ将来有望な全固体電池ですが、ほんとに期待通り実用化されるのか、それはいつ頃になるのか。主要メーカーが公開している固体電池の実用化計画は、次の通りです。
・トヨタ
全固体電池の開発に早くから取り組み、2020年代後半の実用化を公にしています。バッテリーEVではなく、最初はハイブリッドで採用するという内容から、電池の大型化と劣化抑制が課題であることが、うかがわれます
・日産
2022年4月に全固体電池の試作設備を公開している日産。長期ビジョンで2028年までに全固体電池の大量生産を目指すとしています
・ホンダ
2030年頃にラミネート型全個体電池を実用化する計画のホンダ。全固体電池搭載バッテリーEVの価格と航続距離を、ハイブリッドと同等にすることを目指すとしています
・メルセデス・ベンツ
2026年頃までに、Aクラス、Bクラスといった小さなシリーズの限られた台数に採用することを表明しています
・ステランティス
2026年までに最初の全固体電池を導入すると発表していますが、大量生産ではなさそうです
・ニーオ(NIO、中国バッテリーEVメーカー)
「中国のテスラ」と呼ばれるニーオは、今年の後半に航続距離1,000kmを超える全固体電池搭載のFT7次期車を市場投入する計画です。実現すれば、世界で最も早い全固体電池搭載のバッテリーEVということになります
以上のメーカーの動向を見る限り、多くのメーカーが実用化を目指しているのは、2020年代後半。しかし、全面展開できるレベルになく、限定的な採用からスタートすることが予想されます。
全個体電池が厳しい中、リチウム電池の進化も進む
全固体電池の実用化に向けた課題は、コストです。特に、材料生産と量産技術に関わるコストの低減が最大の課題だと考えられます。「将来は明るいが、現実は厳しい」というところでしょうか。一方で、現行のリチウムイオン電池も日々進化しています。2030年頃には、進化版のリチウム電池と次世代の全固体電池が競合しながら、二極化が進むと予想されます。
【画像ギャラリー】全個体電池で、航続距離は2倍にも!?? 現時点国内で購入できるバッテリーEVたち(32枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方