■スタイリングと価格に課題があった?
クラリティPHEVが短命に終わった理由は2つだ。1つ目は日本人にはクセの強いスタイル、2つ目が最大の理由となった価格の高さだ。クラリティPHEVのアメリカでの価格は登場時で3万7495ドル(当時のレートで約412万円)だったのに対し、日本ではほぼ同じ仕様で588万600円とアメリカより176万円も高かった。
クラリティPHEVが日本でもアメリカに近い価格であればそれなりに売れた可能性もあるが、この価格では絶対値、アメリカとの価格差とも日本で売れなかったのも当然で、プラグインハイブリッドが欲しいユーザーならアウトランダーやRAV4といったSUVのプラグインハイブリッドを買うのが普通だろう。
つまり、クラリティPHEVは価格の高さで魅力がブチ壊しになってしまったわけである。
それでも、クラリティが絶版になってもホンダのプラグインハイブリッドや燃料電池車が展開されればクラリティの存在意義もあった。しかし、ホンダのプラグインハイブリッドというのは聞かず、燃料電池もGMとの共同開発に移行と、発展があまり感じられないのは非常に残念だ。
■クラリティから感じるホンダの弱点とは?
ここまで読んでもらうとピンと来る人もいると思うが、ホンダの昔からの弱点が「後継モデルが続かない」ということである。最近の例を挙げてみる。
●インサイト
インサイトはホンダのハイブリッド専用車に与えられる車名である。1999年登場の初代モデルはモーターを加速の際のアシストに使うホンダIMAを搭載し、軽量化のためのアルミボディの採用や2人乗りの3ドアクーペボディによる空気抵抗の低減といった車体側でも燃費を追求したモデルだった。
初代インサイトは技術的には面白く、価格も登場時のMT車で210万円と、内容を考えればバーゲンプライスだった。しかし、2人乗りという点など普遍性は薄く、販売は低調に終わり、2006年に絶版となった。
2009年に復活した2代目インサイトは、ホンダIMAを搭載する5ナンバーサイズの5ドアセダンで、価格は189万円からというリーズナブルなハイブリッドカーだった。
2代目インサイトはリーズナブルな価格もあり当初爆発的に売れ、月間販売台数1位になったこともあった。
しかし、2代目インサイトから3ヶ月後に登場した3代目プリウスが2代目インサイトの影響もあり、2代目インサイトの性能をほとんどの面で上回りながら2代目インサイトより実質的に安い205万円からという価格を付けたこともあり、2代目インサイトの販売は急降下。
2代目インサイトは2011年に1.5リッターハイブリッドを追加するなど、販売が低迷したホンダ車としては珍しく改良を重ねたものの、再浮上することはなく2014年に絶版となった。
そして、インサイトが2回目の復活を遂げたのは2018年だった。復活した3代目インサイトはシビックベースのハイブリッド専用車として1.5リッターエンジン直結モード付シリーズハイブリッドを搭載。
3代目インサイトは乗れば申し分ないクルマながら、クラリティPHEVほどではないにせよ、如何せん価格がカーナビまでフル装備なのを考慮するとしても登場時で326万1600円からと高く、販売低迷が続いている。
3代目インサイトは7月にシビックに追加されるハイブリッドを後継車に三度絶版となることが有力視されている。シビックハイブリッドを後継車にインサイトが絶版になるのは順当な動きではある。
しかし、シビックハイブリッドにはさらに厳しくなる排ガス規制も見据えた新開発となるエンジンの搭載や、インサイトの役割なども考えると、シビックハイブリッドをインサイトとして継続する手もあったように感じる。
●スポーツカー事業
大前提として大きな販売台数は期待しにくいスポーツカーの継続は困難な事業である。それでもホンダにも初代NSX/15年、S2000/10年とそれなりに続いたものもあり、ファンはどうしても「ホンダならやってくれる」と期待してしまう。
しかしS660は7年、2代目NSXも6年と短命だ。S660の方は自動ブレーキや側面衝突といった法対応と価格を含めた収益の折り合いでやむを得ないのが分かるところもある。
だが、2代目NSXに関しては収益の問題は大きいにせよ、ホンダのブラッグシップカーだけに初代NSXのように改良を重ねながら限界まで継続し、「2022年4月12日に発表があった電動車のフラッグシップカーにバトンタッチする」というストーリーを見たかった人も少なくなったのではないだろうか。
ただ、ホンダのスポーツモデルにおいてシビックタイプRは空白期間や「手が届きにくいクルマになった」という面はあるにしても、継続され近々次期型が登場するというのは立派なことである。
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