■ITARDAのデータから見えるペダル踏み間違い事故の実態
ITARDA(公益財団法人 交通事故総合分析センター)が先頃、ペダル踏み間違い事故の分析レポートを発行した。それによると、ペダル踏み間違いによる事故を死亡重傷事故件数で見ていくと、75歳以上の高齢ドライバーがやはり多くを占めている。
そもそも10歳刻みで区切っている下の年齢層に対して、75歳以上は84歳以上も含まれるから、年齢層がほかよりも広いこともあるが、64歳以下の各10歳区切りと比べると65歳~74歳と75歳以上が圧倒的に多く、75歳以上は65歳~74歳と比べても倍くらいの件数となっている。
しかもクルマ同士や歩行者を巻き込んだ事故ではなく、車両単独での事故が多い。これは65歳~74歳でも多いのだが、75歳以上になると倍近く増える。これは他車の動きや環境が原因というよりドライバー自身が原因であることの証とみることもできる。
また別のデータ分析では55歳以上のドライバーでは多重衝突が多いという傾向があるようだ。これも前述のように行動を抑制できないため、パニックになるとアクセルを踏み続けてしまうことに影響があると考えていいだろう。
単独事故でも1カ所の衝突では止まらず、ガードレールから電柱、建物と次々とぶつかってしまうことで、エアバッグが作動しても乗員が重傷化してしまうケースも多いようだ。
■ペダル踏み間違いを防ぐには、どうする?
ペダルを踏み間違える根本的な問題として、運転姿勢に原因があることも多い。その対策としては、適切なドライビングポジションを取ることだ。
ドライビングポジションと言うと、クルマに詳しい読者の中ではシートの調整位置や角度のことだと想像する人も多いのではないだろうか。しかし実際にはドライビングポジションは、ステアリングを握る位置、ペダルを踏む足を置く位置まで考えなくてはいけないのである。
もちろんシートが遠いことで、しっかりとペダルを踏むことが難しいため急ブレーキでの制動不足による衝突、というケースも少なくないと思われる。
それだけでなく、アクセルの前に右足の踵を置き、ブレーキ操作時には足を内側に捻る、もしくは踵を内側に置き換えて踏み込むという操作をしている場合、足を捻る量や踵を移動させる量が足りないと、再びアクセルペダルを踏んでしまうことになる。
そもそも「長年運転してきた」、「これまで大きな事故はしていない」など、実績が自信となって運転を過信したり、油断につながっていることも問題点だろう。加齢だけでなく自らの習慣を振り返ることが大事なのだが、日常に溶け込んでいる習慣は、自分では危険性になかなか気付かない。
2ペダルのATが主流になっているのもかかわらず、アクセルとブレーキペダルの位置関係はそのままで、踏み間違いを起こしやすい構造になっていることも、原因の1つではある。しかしMTの比率がまだ意外と高い欧州との保安基準や運転操作の統一性を考えると、アクセルを別の操作方法に切り替えるのは難しい。
例外として超小型モビリティのFOMM ONEは、ステアリングのパドルでアクセル操作を行なうが、これが主流になる前に自動運転が普及するのではないだろうか。
サポカー限定免許はできたが、まだ本人が希望する場合の対応であり、サポカー自体も完全に操作ミスを防いでくれるものではない。衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制装置の普及も進んでいるが、あくまでドライバーが操作することが前提となっているだけに、アクセルを踏み続ければ加速してしまうケースもある。
完全自動運転が実現する(それがベストな選択かはまた別の話だ)まで、高齢ドライバー問題は当面の間は深刻な状況が続きそうだ。
自らは高齢ドライバーではないからと他人事に思わないことだ。対向車や後続車など周辺には高齢ドライバーのクルマはたくさん走っている。また家族が高齢ドライバーであったり、歩行中の家族が事故に巻き込まれる可能性だってある。そして自分自身もいつかは高齢ドライバーになるのだから。
【画像ギャラリー】最新データから見る踏み間違い事故の現状と高齢者の踏み間違い事故の要因(7枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方