新車を購入しようと、ディーラーへいくと、(試乗車があれば)試乗をさせてくれます。ただ、ディーラーでの試乗は営業マンが同乗し、あらかじめ決められた道を、15分程度走るのみ。あっという間に終わってしまい「よくわからなかった」という感想になってしまいがちのようです。
しかし、ポイントを押さえて確認すれば、15分の試乗でクルマの実力の7割はつかむことができます。15分試乗で絶対にやっておいたほうがよいチェックポイントをご紹介しましょう。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ DragonImages
写真:Adobe Stock、写真AC
15分で全て味わおうと欲張ってはダメ
ありがたいことに、仕事柄、さまざまな試乗会に参加させていただく機会がありますが、試乗会によっては、タイトなスケジュールで、一台の試乗時間が30分ほどしかない、という場合も。その間にカメラマンさんによる写真撮影等もこなさないとならない場合もあり、そうなると試乗時間はさらに短くなってしまいます。
短い時間でそのクルマの特徴を掴むには、チェックポイントを決めておくことと、自身の中で「基準」を持っていることが求められます。「基準」に関しては、(我々評価者はそうはいきませんが)いまのご自身のクルマとの比較で大丈夫。以下で、筆者が試乗する際に確認しているチェックポイントをご紹介しましょう。
走り出す前のチェックも重要
運転席に座りドラポジを合わせたら、最初に周囲の景色を確認します。左右のミラー周りの死角は大きいか小さいか、後ろを振り返って(右ハンドルの場合)左後方の景色は見えやすいか、クルマの幅方向の見切りは良いか悪いか、などです。いま乗っているクルマと比べた「良し悪し」は直ぐに分かると思います。
続いて、インテリアの使い勝手も確認します。エアコン操作、オーディオ操作、ナビ操作が、運転席から背中を浮かせずにできるか。各種操作はタッチ式かダイヤル式か、それらは運転中でも目線を移動させることなく操作できるか、などです。
タッチディスプレイは、一見オシャレで未来的に感じますが、目線を移動させずに操作するブラインド操作がやりにくいです。エアコン操作などは、運転中に操作したいことも多々あるため、よく確認しておいてください。ちなみに、エアコン操作に関しては、タッチディスプレイ操作だったクルマが、マイチェンで通常のダイヤル式に変更した、というケースもあります。やはり「使いにくい」という声が多かったのでしょう。
公道へ出る際には小回り性能と足回りの硬さを確認
そして、いよいよ走り出す、という段階になったら、わざと据え切り操作をして、その時のハンドルの重たさを体感してください。据え切り操作は、最もパワーアシストが必要なタイミングで、クルマにとっては最も辛い状況です。重すぎないか、軽すぎないか、手のひらで感じ取りましょう。ちなみに手のひらは、人間の身体のセンサーの中で、最も敏感な部分。軽いか重いかは知っておいた方がいいです。
いよいよ走り出して、最初に確認するのが小回り性能です。カタログには「最小回転半径」が記載されていますが、オーバーハング長さや、視界の高さによっては、実際に小回りした感覚とずれることがあります。駐車場から公道に90度転回して出る、というシーンで、期待した通りに小回りが効くのか、よく見ておきましょう。このとき、低速での段差乗り越えショックも確認します。ディーラー担当者が選ぶ試乗コースは、比較的良い路面の道であることが多いようですので、公道へ出る際に、あえて段差を乗り越えて、足回りの硬さを確認しておきます。
しばしば、「クルマの良さは30メートルも走ればだいたい分かる」といわれますが、これはそれほど大げさな表現ではなく、走りはじめて公道へ出るまでで、そのクルマの性能の半分くらいは分かっています。
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