知れば知るほど謎だらけ!? EV界の「黒船」 テスラ大研究

■テスラの時価総額が驚異的なのはなぜ?

 株式の時価総額は、その時点での株価×発行株数で算出。この数字を「その会社を買う時に必要な金額」と説明する人がいるが、それは間違い。

 現在のテスラの時価総額は約100兆円だが、あくまでもそれは机上の数字。

 イーロン・マスクがテスラの株を売りに出せば、株価が下がって時価総額も減少するし、逆に買いたい人が増えれば株価が上がって時価総額も上がる。

 株価は期待値で決まると言われているけど、時価総額は期待値の合計と見るべき。

■テスラが短期間に認知された理由は?

テスラ初の市販車はロードスターで2008年から販売開始
テスラ初の市販車はロードスターで2008年から販売開始

 2000年代、バッテリーのコストが高かったこともあって、「EVはシティコミュータから普及が始まる」という予想が多かった。

 実際、初の量産EVの三菱 i-MiEVをはじめ、トヨタはiQ、ベンツはスマートをEV化。その延長に日産のリーフがあったわけだ。

 ところが、イーロン・マスクは、最初にEVをビジネスとして軌道に乗せるには富裕層向けのプレミアムカーのほうが有望と見た。それがつまりモデルSだったわけだ。

 クルマとして先進的で出来がよかったのはもちろん、マーケティングセンスも抜群だったということじゃないかな。

■日本で約1万1000台強の販売は凄い?

知れば知るほど謎だらけ!! 「EVの黒船」テスラという会社
テスラは日本での販売台数を非公表としているが、国交省が公開した「テスラ車の改善対策届」の資料に台数が明記されていた。その数1万1425台!これはモデルSを初納車した2014年から今年1月までのもので、日本での総販売台数に匹敵するのは確実。恐るべし、テスラ!

 テスラは販売台数を公式に発表していないから、ボクもその数字を今回初めて知ったけど、率直に言って驚異的だ。

 そもそも、クルマをオンラインで定額販売すること自体が、とりわけ日本では驚異的なのに、それが累計1万台を超えているなんてビックリ。

 やはり、テスラにはアーリーアダプターを引きつける絶大な魅力があるんだねぇ。

■スペック未公表なのになぜ買うのか?

 日本で販売しているモデルS、モデルX、モデル3のすべてでモーターの最高出力、最大トルクは非公表となっているが、テスラを買う人は、クルマというハードウェアを買ってるんじゃなくて、それが実現するサービスを買ってるってことかな。

 充電時間〇分で□km走れて、擬似自動運転や独自のスーパーチャージャー充電網などを使うことができる。ユーザーはそれに対して、対価を払ってる感覚ですかね。

■クルマ界に衝撃を与えた技術、装備は何?

15分で最大275km相当分充電することができるスーパーチャージャー(急速充電設備)
15分で最大275km相当分充電することができるスーパーチャージャー(急速充電設備)

 テスラ車でダントツ素晴らしいのはスーパーチャージャー(15分で最大275km相当分充電することができる)充電網の使い勝手。

 高出力なのはもちろん、自動的にユーザーを認証して課金されるシステムなど、ソフトウェアの出来も本当に素晴らしい。

 悔しいけど、現状の日本のイーモビリティパワーのサービスではまったく太刀打ちできません。

(ここまでのTEXT/鈴木直也)

■日本で買えるテスラ車、どーなの?

 日本で買えるテスラ車は3種類で、すべてEVだ。馴染みがない人も多いので、その特性をチェックする。

 テスラモデルSの受注が始まった2013年頃は、こんなに大容量の電池を搭載した電気自動車は存在しなかったし、強烈な加速感もエキサイティングそのもの。

 新し物好きのハートを捉える、刺激的な魅力に富んでいた。

タブレット型のモニターもテスラが先鞭をつけた
タブレット型のモニターもテスラが先鞭をつけた

 さらに、モデルSのもうひとつの特徴であるオートパイロット機能。これがハイテク好きのアーリーアダプター層を熱狂的に引き付けたと思う。

 この「擬似」自動運転機能を乱用したユーザーの事故はアメリカなどでも問題になりつつあったが、限界をわきまえて使っていれば高性能ACCとして極めて便利。

 “脱法ドラッグ”的な危うさはあるものの、規制に縛られた既存のメーカーではできないクルマを造る会社というポジティブなイメージで捉える人が多かったのだ。

 かくして、テスラは電気自動車のスターとしてアッという間に認知された。その後、モデルX、モデル3がラインナップに追加され、大幅値下げでリーフe+並みの価格としたモデル3のヒットが注目されたのは記憶に新しい。

 ただ、その後の資源価格の上昇などで1年で約120万円も値上げするなど、これまた「既存のメーカーではできないこと」をやってくるところもテスラらしい。

 今後もEV市場の暴れん坊として目が離せない存在と言えるでしょうね。


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