2022年2月、韓国ヒョンデ自動車が、12年ぶりに日本市場へ復活を果たした。販売店は持たず、オンライン販売を行い、電気自動車「アイオニック5(IONIQ5)」、燃料電池自動車「ネクソ(NEXO)」の2車種のみとなる。
SNS上で話題になっている「アイオニック5(IONIQ5)」と、ヒョンデ日本市場におけるビジネス戦略を解説。ヒョンデ、そしてアイオニック5は日本で成功するのか? それとも?
文/御堀直嗣、写真/Hyundai、奥隅圭之
【画像ギャラリー】韓国ヒョンデが日本に投入したEVの「アイオニック5」とFCVの「ネクソ」を写真でチェック!!(27枚)画像ギャラリー12年ぶりにカムバック!! 「ヒョンデ」のビジネス展開はネットのみ!?
2022年2月に、韓国の大手自動車メーカーであるヒョンデ(現代)が、12年ぶりに日本市場に再上陸し、再挑戦すると発表した。そのとき、勝算はいかにと疑問を抱いたのは正直なところだ。だが、取材を進め、試乗をしていくうちに、未来への可能性を見るようになった。
2月の記者会見で、張在勲(チャン・ジェフン)ヒョンデ・モーター・カンパニー社長兼CEOは、「日本は再挑戦すべき地域」と語り、理由として脱二酸化炭素の意識が高まったこと、自分に合った人生設計をする多様性が進んでいることを挙げた。そして、韓国の「迷途知返」ということわざ(一度道を誤ったあとに正しい道に戻って改める)を使い、今回「正しい道に戻って改める」と述べたのである。
日本市場に際しては、販売店網を持たずネット上で完結する販売/取り扱い車種は電気自動車(EV=IONIQ5)と燃料電池車(FCV=NEXO)に絞る/所有だけでなく共同利用(カーシェアリング)の提供の3つを掲げた。
しかしその説明だけでは、まだ釈然としないものが残った。さらに取材を進めると、EVとFCV、すなわちモーター駆動車両しか導入しないことが起点であることがより明らかになった。
米国「テスラ」の存在が日本市場での成功のカギとなるか
米国のテスラを見れば納得できるのだが、EVは、壊れにくく、日常的な点検整備において、オイル交換がなく、ブレーキパッドの減りも少ないなど、走行上エンジン車で不可欠な整備項目が減る。これによって、テスラは米国において出張による整備や修理を提供している。
工具や部品を車載したパネルトラックを用意し、所有者のところへ行って作業を行うのだ。路上での故障にもこの手法で対処する。そこには、広大なアメリカ大陸という地理的条件もあるだろう。
新たな保守点検の仕方ができるのも、油脂や液体といった交換や継ぎ足しの必要な機構がなかったり限られたりするため、工具や部品を整えた整備工場でなくても済むからだ。
また、最新の仕様をオンラインで追加設定できることが、テスラ以降、他の自動車メーカーでも進められているが、ことにEVであればプログラムの更新などによってさまざまな機能を最新仕様に進化させることが可能になり、それはすなわち、故障などの症状もメーカー側で把握できることを意味する。
所有者がまだ気付かない不具合の兆候も、先にメーカー側で察知し、メール等で案内し、出張整備で対応することにより、不具合で困る前に処置することさえ不可能ではなくなるのである。
従来、販売店網に併設された整備工場に車両を持ち込むことで点検や整備、あるいは修理をしていたが、顧客の車庫などでそれらの対処ができれば、販売店網という投資が不要になる。販売台数が伸びるに従い、出張サービスなどの対応を増やせば済むことになる。
先に投資が必要なのではなく、販売動向に応じた投資を考えればよい。これは、事業者にとって不安材料を減らしながら、顧客への浸透をはかれる、一挙両得の事業展開となる。
ヒョンデも、遠隔での診断機能に加え、出張での整備と並行して、特約工場での整備も行えるように展開をはじめている。日本市場へ再上陸する決断ができたのも、EVならではということだ。FCVも品揃えはあるが、主力はEVであるようだ。
それなら、テスラという先達が実績を残しているので、その手法が大きな参考になっているはずだ。そして再上陸成功の可能性も生まれる。
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