■価格や燃費でも勝負できるようになったHEV
2022年1月13日に正式発売となったトヨタ ノア&ヴォクシーについて店頭で話を聞くと、「先代比でガソリン車とHEVの価格差が狭くなっております」とセールスマンがアピールしてくる。
例えば、先代ヴォクシーのあるグレードをサンプルにすると、ガソリン車よりHEVのほうが約50万円高かった。しかし、新型ヴォクシーで同じように計算すると、HEVはガソリン車に比べ35万円高に抑えられていた。
先代ではデビュー当初はHEVの人気が高かった。だがHEVが約50万円高だっただけでなく、実用燃費面でガソリン車がHEVと遜色がなかった(際立ってHEVは燃費がよくなかった)ということもあり、その後はガソリン車の需要が増えてきた。
それでも、そもそもHEVのほうが生産比率が高かったこともあり、HEVのほうが納車が早くなるといったこともあったと聞いている。
「それ以前(先代ノア&ヴォクシーより前)の5ナンバークラスのミニバンは2L直4エンジンを搭載するのが一般的であり、実用燃費では“km/L”で一桁台というのが当たり前でした。
先代ノアのガソリン車の2WDで一般的なグレードのJC08モード燃費のカタログ数値は16.0km/Lであり、実用燃費でもだいたいこのレベル、つまり二けたの燃費数値は出していたそうです。
このクラスを乗り継いできたユーザーから見ればそれだけでも大きな燃費改善ともいえるので、『HEVと目立った差もないしガソリンでいいか』ということになっていたそうです」(事情通)。
新型ノア&ヴォクシーのハイブリッドユニットは大幅刷新が行われ、燃費性能も大幅に改善されているといわれている。ガソリン車との価格差が縮まっていることもあり、新型ではHEVの販売比率が大きく高まっていきそうである。
現状納期遅延でも、あくまで予定レベルとなるがHEVがガソリン車より数カ月納期が遅くなる程度なので、納期を意識してガソリン車を選ぶ必要もないといえよう(ただし現状の社会情勢をみると、今後はHEVのほうが納期の混乱傾向が目立つのではないかともいわれている)。
■各社で目立つ「HEV推し」
このような傾向はノア&ヴォクシーだけでなく、ライバル各車でも同様の様子がうかがえる。
ホンダ ステップワゴンでは、正式発売前に販売現場を訪れると、販売比率はHEVが多いとの話が聞けたし、日産セレナでは「セレナといえばe-POWER」とセールストークを展開するほど、まるでガソリンエンジン仕様がないかのように、e-POWERに特化している様子がうかがえた。
もちろん、今回はミニバンクラスをサンプルとして紹介しているが、ほかのクラスでも傾向は同じ。
極端な例ともなるが、トヨタ カローラクロスでは、どちらがより需要があるかという話以外(生産体制や部品の供給体制など)も当然影響しているが、納期でみるとガソリン車が2023年2月以降であるのに対し、HEVが2023年11月以降となっていたり、HEVのほうが納期はかかる車種が目立っている。
さらにHEVの需要を押し上げようとする動きもある。残価設定ローンにおける設定残価率で同一車種でもガソリン車とHEVで差をつけようとする動きが目立ってきている(当然HEVのほうが設定残価率は高い)。
これは、政府が2050年までのカーボンニュートラル社会の実現を発表し、2030年代半ばまでにガソリン車の販売禁止を進めようとする動きが影響している。
「政府がクルマだけを見ても、電動車普及へ舵を切っており、消費者の間でも電動車というものが俄然注目されています。
そもそも国民性として“お上のお達し”というものの浸透力は早く、そして強いものがあり、いまは混乱している中古車市場ですが中長期的に見れば、中古車でも電動車のほうがより流通スピードは加速していくとの判断によるもののようです」(事情通)。
今後新車購入を検討する時は、「政府も言っているしなあ」とHEV(あるいはPHEV[プラグインハイブリッド車]やBEV[バッテリー電気自動車]、FCEV[燃料電池車])の購入を前提に商談を進めるという流れがはさらに目立ってくるだろう。
下取り査定額も中古車としてのニーズがさらに高まれば、相場自体の底上げにもなっていくだろう。
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