王者ヤリス越えで販売首位! ルーミーが今なおバカ売れする必然と意外な弱点

買い得な小型車のスーパーハイトワゴン「ルーミー」の魅力とは?

スライドドアの採用で乗り降りしやすく、様々なシーンに対応できるシートアレンジを備えたルーミーの室内
スライドドアの採用で乗り降りしやすく、様々なシーンに対応できるシートアレンジを備えたルーミーの室内

■スライドドアのクルマしか選ばないユーザーが急増中

 ルーミーは後席側のドアをスライド式にした。これもN-BOXやスペーシアと同様の特徴で、開閉時にドアパネルが外側へ張り出さないから、狭い駐車場での乗降性も優れている。

 そしてスライドドアは、以前のセダンと同様、クルマの定番スタイルとして定着した。特に比較的若いユーザーは「スライドドアは付いていて当たり前」と考えるようになっている。

 この背景にはミニバンの普及がある。ミニバンは初代ステップワゴンが登場した1996年頃から売れ行きを急増させ、国内販売の主力カテゴリーになった。そのために1990年以降に生まれた世代には、幼い頃から背の高いスライドドアを備えるミニバンに親しんだ人も多い。そうなると2列シート車でも、背の高いスライドドアを備えたボディを選ぶ傾向が強まる。

 しかも1990年頃に生まれた人達は、今は30代の前半だから子育て世代だ。ルーミーは後席を後端までスライドさせると足元空間が大幅に広がり、子供を後席のチャイルドシートに座らせる作業もしやすい。

 また後席を前側にスライドさせると、車内後端の荷室が広がり、親子3~4名で乗車してベビーカーや子供用の小さな自転車も積める。幼い頃に親しんだ思い出と、実用性の両面で、ルーミーは比較的若いユーザーが選びやすいクルマになった。

■高齢のドライバーも運転がしやすく乗り降りもしやすい

 若年層とは対称的に高齢者から見ても、ルーミーは魅力的だ。全長が3700mm(標準ボディ)に収まる5ナンバーサイズのボディは、最小回転半径も4.6mだから、混雑した街中でも運転しやすい。水平基調のボディは視界が優れ、車両の周囲に潜む障害物も発見しやすい。

 着座位置も適度だから、乗降時に腰の上下移動量が少なく、ピラー(柱)の角度を立ててドアの開口部が広いから、頭を下げたり腰を落として乗り降りする必要もない。さまざまな世代のユーザーが使いやすく共感を得ている。

■トヨタの店舗数は日産やホンダの2倍以上でシェアも50%

 ルーミーが高い人気を得ている背景には、販売体制も影響を与えた。まずトヨタの国内販売網は2020年5月に変更を受け、全店で全車を購入可能になった。これに伴って、ルーミーの姉妹車になるタンクが2020年9月のマイナーチェンジで廃止され、需要がルーミーに集中したから登録台数も一層増えた。

 そしてトヨタは店舗数も多い。全国に約4600店舗を展開しており、日産の約2100店舗、ホンダの約2200店舗と比べると販売網は2倍以上だ。

 しかも2022年1~4月には、国内で新車として売られるクルマの38%を軽自動車が占めた。日産でも国内における軽自動車比率は37%と高く、ホンダはN-BOXの好調によって軽自動車が56%を占める。

 その結果、国内で売られる小型/普通車については、50%がレクサスを含むトヨタ車だ。つまり日産やホンダが軽自動車に力を入れて、小型/普通車の販売力が下がったことも、ルーミーの売れ行きには追い風となった。

■ルーミーはほかの車種に比べて納期が短い

 ルーミーの好調には、昨今の納期遅延も影響を与えている。販売店は以下のように説明する。「ヤリスとヤリスクロスの納期は、今では約6カ月に遅延して、登録台数も下がった。その点でルーミーの納期は、2~3カ月に収まるので、ほかの車種に比べると短い部類に入る」。

 ルーミーは納期が短く効率良く納車できるから、登録台数の下落も少ない。2022年4月のルーミーの登録台数は、2021年4月と比べて9%のマイナスに留まった。そのいっぽうでヤリスシリーズは、前年の4月に比べて売れ行きを50%落とした。この影響で、ヤリスシリーズは、車名別小型/普通車販売ランキングの1位をルーミーに明け渡すことになった。

 しかし今後の動向は分からない。販売店では「2022年5月の時点で、ルーミーは受注が停止した。一部改良を受けるためで、受注の再開は、7月中旬から8月になる」という。販売店によると「ルーミーは人気車だから、在庫を一応は持っている」というが、時間が経過すれば底を突く。そうなるとルーミーの登録台数も下がる。

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